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ネコ軍団

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第4章 深い森に迷う二人の姉

第255話 緑色の狼

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 激しい音が森に響いた。太い青い光線がグレンの横から上空へと飛んで行った。光線の威力で木の枝が折れて地面へと落ちていく。
 振り上げた大剣を下すグレン、剣先が地面に付いて音を立てる。

「ふぅ…… なんだ……」

 右手を見つめ二度ほど開いたり閉じたりを繰り返すグレンだった。光線の衝撃は強くて獣化ビーストモードを使用した彼の手をしびれさせたようだ。

「何のつもりだ…… お前……」

 視線を上に向けるグレンだった。彼の瞳に一人の青年の姿が映っている。
 男は緑色の瞳を持ちやや細長く冷たい目をして、短い銀髪に長く高い鼻で小さな口を持つ端正な顔立ちをしていた。彼は鎧の上に黒の長いコートを着て背中に長いサーベルを背負っていた。青年の胸元には青い目をした蛇が巻き付いた十字架の首飾りがぶら下がっている。青い目の蛇は十字架の頂点に頭を向け正面を向いている。

「我がブルーインパクトを…… クソ!!!」

 悔しそうにグレンを睨みつける青年だった。グレンは右腕を上げ肩に大剣をかつぎ青年に口を開く。

「お前は何者だ?」
「黙れ!!! 聖地を穢すな!!!!!! 堕落者ども!!!!!!」

 青年はグレンの言葉をかき消すように怒鳴りつけて来た。

「はぁ!? ノウレッジに聖地なんかねえよ。そもそも壊したのはお前のせいだろうが」

 心底あきれた表情をするグレンを青年は眉間にシワを寄せ、右手が背中のサーベルへと伸びた。

「黙れ!! ここはオフィーリアよりグルファーブル猊下に献上された聖地である!!!」

 怒鳴りながら青年はグレンの元へと飛んで来た。彼は途中でサーベルを抜いた。細長く湾曲した刀身が一メートルはあろうかという銀色のサーベルを両手に持って構え、青年はグレンとの距離を詰めた。
 青年はグレンの横から彼の首を目掛けてサーベルで斬りつけようとする。空気を切り裂きながらサーベルがグレンへと向かって鋭く伸びて来た。涼しい顔でグレンは向かって来るサーベルに視線を向けた。グレンの赤い光が強くなり纏ったオーラの先が狼の毛のように細かくなりなびいていた。

「よっと」

 体を左にひねりながらグレンは大剣をサーベルの軌道へと持って行った。大きな音が響きグレンの大剣が青年のサーベルを簡単に弾いた。
 大剣に押され両手をあげた姿勢になって青年は後ずさりする。グレンは素早く大剣を引いて剣先を彼の胸元へと向けた。グレンは右手に力を込め腕を突き出そうとした。

「ぐぅ!!!! なっ!?」

 青年は表情をきつくして片手でグレンに向かってサーベルを振り下ろした。
 サーベルに気づいたグレンは大剣を引いたまま左手をサーベルの軌道へと持っていった。力のないサーベルが上から下に落ちて来てグレンは簡単につかんだ。

「残念だったな」
「クソ!」
「終わりだよ!!!!」
 
 右腕を開くようにして後ろへと持って行く。グレンは青年のサーベルをつかんだまま横から彼の横っ腹に大剣を叩きつけようとした。

「はっ!?!?!?」

 グレンの視界に青い光が見えた。即座に攻撃を止めグレンは左手に掴んだ青年のサーベルをはなし体をのけぞらせる。グレンの目の前を青い二つの光線が通り過ぎていった。青年が首から下げた蛇の青い目から光線が発射されたのだ。

「チッ!!」

 視線を下に下げたグレンに青年がサーベルを構えるの姿が見えた。

「クッ!」

 体をのけぞらすために踏ん張っていた左足でグレンは地面を蹴った。グレンの体が背後へと飛んで行く。直後にサーベルが振り下ろされた。
 グレンは後ろに飛んで青年から距離を取った。体を二メートルほど浮かせ体勢を戻したグレンは肩に大剣をかつぎ、悔しそうに青年を見下ろし睨むのだった。

「ふん。口先だけじゃねえみたいだな…… でも…… あの石……」
 
 口を尖らせ負け惜しみのようにつぶやきながら、男の胸にぶら下がる首飾りを見つめるグレンだった。そこへ……

「グレン君! 加勢します」
「おう! クレア義姉ちゃん! 助かるぜ」

 上空からクレアが飛んで来てグレンに声をかけた。クレアは大剣を構え男の背後へ回り込む。グレンとクレアは地上へと下りて青年を挟んだ。
 男は背後に回ったクレアに顔を向けるとすぐに前を向いた。グレンを見上げた青年は顔をしかめる。

「女に助けてもらうとは…… 情けない奴だ」
「えっ…… えっ!?」
「どっどうした!? クレア義姉ちゃん?」

 青年の顔を見たクレアは激しく動揺していた。グレンは動揺するクレアに声をかけた。クレアは青年の背中に口を開く。

「ウォルフ兄さ…… あっあなたウォルフですよね? クレアです。グリーンパール村で一緒だった!」
「むぅ…… クレアか……」

 クレアは自分の胸に左手を置き青年に話しかけている。青年は背後に体を向けクレアを見て顔をしかめた。彼の名前はウォルフという。

「生きてたんですね…… よかった。こんなところで何をしているんですか?」
「この聖地の守護をしている。貴様らこそ何をしているんだ!」
「私達は仕事ですよ。あなたと同じですかね?」
「同じだと?」

 クレアの問いかけに不機嫌そうに答えるウォルフだった。クレアは大剣を構えたまま彼が胸から下げている首飾りを見た。

「蛇十字…… 福音派になったんですね」
「そうだ。真理に出会うまでの私は無駄な時を過ごしていた……」

 胸の首飾りに手を当て話すウォルフをクレアはどこか寂し気に見つめていた。彼女は大剣を下し構えを解いた。

「私達は仕事でそこの魔物を追って来ただけです。あなたと戦うつもりはありません。引いてもらえませんか?」
「ねっ義姉ちゃん!?」

 クレアは左手でドリアーノキラーズマンティスを指し提案をする。ウォルフは眉間にシワを寄せクレアにジッと見て口を開く。

「残念だが堕落者の言うことに耳を傾ける気はない…… と言いたいところだが」

 青年ははにかんで笑ってクレアを懐かしそうな表情を浮かべた。直後に彼はゆっくりとサーベルを背中にしまう。

「同郷のよしみだ。ここは退くとしよう」

 両手を広げクレアに頭を下げるウォルフだった。クレアも大剣を背中にしまって笑顔をウォルフに向けた。

「ありがとう。ウォルフ…… グレン君も武器を下してください」
 
 ウォルフに頭を下げクレアはグレンにも、武器をしまうように指示をした。グレンは構えを解いて大剣を肩にかついだ。

「クレア! 今回はお前に免じて引いてやる! 今後の無断侵入は許さんぞ」
「なっ!?」

 ウォルフはクレアに向かって叫ぶと飛び上がった。そのまま彼はガエロの怒りの断崖へと向かって飛び去って行った。

「何が聖地だよ…… くだらねえ」

 飛び去るウォルフに向かってつぶやいたグレンだった。彼は体を元に戻し月樹大剣ムーンフォレストからフェアリーアンバーを外して剣をさやにおさめた。
 グレンは飛び去ったウォルフを見つめているクレアの元へとやってきた。近づくのグレンの気配に気づいたクレアは振り向いて彼に優しく微笑んだ。
 二人の元にクロースもやって来た。クロースはウォルフが飛び去った方角へ顔を向けすぐにクレアに声をかけた。

「あの人…… ウォルフさんですの? 確かに似ていますけど…… 雰囲気が……」
「えぇ。変わりましたね。でも間違いないですよ」

 クレアはクロースに向かってうなずいた。二人の会話を聞いていたグレンが口を開く。

「あいつ…… クレア義姉ちゃんの知り合いのなのか?」

 振り向いてクレアはグレンを見た。彼女はやや答えにくそうにゆっくりと話す。

「はい…… 彼はウォルフ…… 私の幼馴染で魔王討伐に旅立った時の仲間の一人です……」
「えぇ!?」

 ウォルフはクレアと同じ村の出身の幼馴染だった。グレンは彼女の答えに驚き声をあげるのだった。
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