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ネコ軍団

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第3章 灼熱の砂海を渡る一輪の花

第137話 華麗な人

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 屋台の前で睨み合うミナリーとロックが率いる四人の帝国軍兵士達。ティラミスが両手をテーブルについて立ち上がった。彼女は右手を前に出して叫ぶ。

「やめてください!」

 ティラミスの声が広場に響く。ミナリーは視線を彼女に向けすぐに戻した。ロックは振り向いて優しく穏やかにティラミスに返事をする。

「子供は黙ってなさい。怪我しますよ!」
「なっ!? こっ子供!? ムキーーーーーーーーーー!!!」

 子供と言われたのが悔しかったのか、ティラミスは顔を真っ赤にして怒りだした。彼女はロックに腕を伸ばし彼を指して口を開く。

「私はこの町の冒険者ギルドのギルドマスターのティラミスです。あなたこそここで引かないとレリウス司祭様に報告しますよ!」

 眉間にシワを寄せ怒りながら、ティラミスはロックを指さして行政官レリウスの名前を告げた。レリウスはサンドロックの行政官でありガルバルディア帝国の出身者である。

「ふっ…… 好きにすれば良いですよ」

 ロックはティラミスに視線を向け、彼女を鼻で笑い眼鏡の中心を左手の中指で押して直した。
 レリウスの名前を出せば帝国の人間は退くと思っていたティラミスの思惑は外れ、彼女は驚いた顔をする。

「なっ!? あなた帝国の人ですよね? レリウス司祭様は帝国の貴族で……」
「だから? 勝手にすればいいですよ。私達には関係のないことです」
「関係ない? サンドロックの町で暴れるのは許しません!」
「どうすると言うのです」
 
 視線を横に向けロック、近くにいた四人がティラミス達に体を向けようとした。彼らの動きと見ていたミナリーはニヤリと笑った。

「隙あり!!!」

 ミナリーが叫んでベルを鳴らしだした。心地よいベルの音色が広場に響くと建物や地面に落ちていた砂が浮かび上がりロック達へ飛んで行く。

「うわ!? クックソ!」
「きゃあ!」
「たっ隊長!?」

 無数の砂がロックの手足や顔にぶつかり、必死に振り払うが砂は振り払っても振り払ってもまとわりついていくる。

「さすが砂海だねぇ。綺麗に掃除されてると思ってもそこら中に砂がある!」
 
 必死に砂を振り払うロック達を見て、ミナリーはベルを鳴らし続けながら満足そうにうなずいた。彼女の特殊能力は砂彫刻家サンドアーティスト、砂を自在に操る彼女の能力にグレートワインダー砂海ほど適して場所はないのだ。

「姐さん! 準備は出来てるでがんすよ!」
「おう! じゃあ逃げるよ! お姉ちゃんたち! 食事の代金は後で取りに行くからよろしくな!」

 カウンターの奥でベルナルドがエミリアを右肩に座らせミナリーを呼んだ。彼女はベルナルドに答えるとティラミス達に声をかけ走り出す。ミナリーはひょいっと屋台を乗り越えベルナルドの左肩に座った。

「とりゃーでがんす!」

 二人を両肩に乗せ飛び上がったベルナルドは、あっという間に広場を囲む建物の屋根に飛び乗った。彼はそのまま屋根を走って逃げる。ベルナルドは二人を肩に乗せ屋根から屋根へと軽々と飛び移っていく。三人の姿はすぐに消えて見えなくなった。

「待て! みなさん。追いかけますよ」

 ロックはミナリー達を追いかけるように指示をだした。呆然とするティラミスの横で、すっとアーラが立ち上がり彼女に続いてタミーも立ち上がった。

「お待ちなさい!!!」

 厳しい表情でアーラが叫んでロックを止める。ロックは面倒そうに顔をしかめ振り向く。

「今度はギルドのどなたでしょうか?」

 首をかしげてアーラに向かって問いかけるロックだった。アーラはすっと右腕をあた、彼女のシスター服の袖から細長く角ばった金属の棒が飛び出した。彼女は棒の根元を掴むと棒は鉄扇でパッと開くと金属の刃が扇の先に光る。アーラは鉄扇をロックへと向かって投げた。投げられた扇は回転しながらロックへと向かっていく。

「おっと! 気性の荒いレディですね」

 ロックは飛び上がった。彼の足元をかすめ回転しながらアーラの鉄扇は飛んで行った。飛び上がったロックは魔法でさらに高く飛び、近くの家の屋根のヘリに手をかけ下を見つめている。鉄扇はブーメランのようにアーラの手元へと戻って来た。

「街中での暴行行為は開拓法違反です。また軍服で威圧する行為も開拓委託協定に違反します。アーリア教会冒険者ギルドの権限であなた達をサンドロックから排除します」

 左腕を前だしアーラはロックを指して淡々と告げると彼は鼻で大きく息をして叫ぶ。

「ふん。あなたたち! お相手をしてあげなさい。私は彼らを追います」
「お待ちなさい!!」

 腕を曲げ体を上げて屋根へと飛び乗ったロックはそのままミナリー達を追いかけていく。タミーが止まるように叫ぶが彼は止まるはずもなく屋根の上を駆けて消えて行った。

「うるせえ! 俺達がお前らの相手だ」

 四人の帝国兵が剣を抜いて構えた。アーラは静かに首を横に振った。

「タミー様…… 一気にいきますよ。ティラミス様は隠れててください」
「はっはい!」

 ティラミスは返事をするとしゃがんでテーブルの下に潜り込んだ。タミーは拳を握って構えアーラは左手を伸ばしもう一つ鉄扇を出して両手に持った。

「やっちまえ!!!」

 剣を抜いた四人の帝国軍人がタミーとアーラに斬りかかる。タミーは地面を蹴ってかけだした。アーラの目が紫色に光り出し手首を動かし扇を静かに上下に動かした。

「なっなんだこれ……」
「うっうそでしょ!?」
「あっあぁ……」
「化け物……」

 アーラの目が紫に光ると彼女の背中から左右に長い四本の足を生えた。足は先端は尖った太く短い爪があり長く一本は五メートル近くある蜘蛛の足だ。彼女は一番下側に足だけ立ち上から四人を見つめていた。
 四人は変貌したアーラに驚き立ち止まって目を見開き呆然としていた。

「ふふふ。これがわたくしの特殊能力女郎蜘蛛スパイダーウーマンですの。では……」

 にっこりと微笑んだアーラ、背中の足が四本左右から四人へと迫って来た。アーラの足は前に立つ男女二人の横から挟んで持ちあがる。

「ごきげんよう…… ふう!」

 アーラは口を尖らせ優しく前に向かって息を吹きかける。アーラの尖らせた口からたくさんの糸が出て来た。

「ふふふ……」

 ほほ笑みながらアーラは出て来た糸を扇で仰いだ。仰がれた糸はまるで意思をもつかのようにして持ち上げれ二人の足へ伸びて行き絡みつく。アーラの足は器用に二人を回転させて糸を巻き付けていく。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「きゃああああああああああああああああ!!!!」

 悲鳴を上げながら二人は首まで糸を巻き付けられ地面へと投げ捨てられた。呆然とその光景を残った二人が見つめていると目の前に人影が……

「よそ見をしている場合ですか!?」
「しまっ……」

 残った帝国軍人の二人の前に現れた人影はタミーだった。彼女は二人の前で腰を落とし拳を引いた。

「はっ!!!!」
「うげ!」
「おりゃ!!!」
「ぐは!!」

 一人の腹を殴ったタミーは体を横に向き、膝でもう一人の腹を蹴り上げた。二人は声をあげ腹を押さえてうずくまった。

「やりました! 二人ともすごいです!」

 テーブルの下からティラミスが飛び出して来た。アーラは彼女に微笑むと小さく首を横に振った。

「まだですわ…… わたくしはあの殿方を追いかけます。タミーさんはそこの二人を拘束してください」
「はっ!」
「気をつけてくださいね」

 ニコッとほほ笑んだアーラは飛び上がり、背中の足で建物の壁に張り付くとロックを追いかけていった。ティラミスは歩いて揺れる足の生えたアーラの背中に手を振るのだった。
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