#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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浄化

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深夜3時。篠崎は黒い薄手のグローブを嵌め、七瀬湊が住むアパートの前に立っていた。周囲は静寂。彼は、組の人間を一切連れてきていない。これは個人的な「掃除」であり、他者の介入は不要だった。

湊の部屋は最上階の角。篠崎は冷静に、スーツの内ポケットからピッキング用の道具を取り出した。彼の指先は繊細で、カチリ、カチリと錠を弄る音は、耳を澄まさなければ聞こえない。

数秒後、古いドアの鍵が「カチリ」と、驚くほど静かに開いた。

部屋の中は、湊の性格を表すように整理整頓されていた。湊はソファの上で、ブランケットをかけて浅く眠っている。

篠崎は音を立てずに近づき、彼女が目を覚ますよりも早く、ソファの後ろからその華奢な首筋に手を回した。

「ッ――!」

湊の目が大きく見開かれる。理性的な彼女の顔に、初めて純粋な恐怖が浮かんだ。しかし、声は出ない。篠崎の掌が、彼女の気道を完璧に塞いでいる。

「いい子にしてろよ。」

篠崎の声は耳元で囁かれる。まるで愛撫のような冷酷な優しさだった。彼は慣れた手つきで、持ってきたロープで湊の両手と両足を素早く縛り上げた。

湊は抵抗をやめた。篠崎の圧倒的な暴力と、その背後にある力の構造を、彼女の知性が一瞬で理解したからだ。

篠崎は、湊の顔を覗き込む。

「君は、「さきまる」とかいう配信者を守る、聡明な女性だったな。…だが、俺を通報したのはまずかったな。」

「…私…は、ただ、友達を…」湊は途切れ途切れに答えた。

「友情か。最も価値のない言葉だ。」

篠崎はテーブルの上に古い金属製の携行缶を置いた。湊の瞳が、その携行缶から発せられる冷たい光を反射する。

彼は携行缶の蓋を開けた。鼻をつく刺激的な臭いが、部屋全体に広がる。

「お前は俺を『汚した』。だから、浄化が必要だ」

篠崎は、静かに携行缶を傾ける。冷たい液体が、床のラグ、積み上げられた書籍、そして湊の体へと、ゆっくりと染み込んでいく。湊は声にならない叫びを上げた。

「これが、俺に手を出した代償だ。早乙女に、お前の最期が伝わるようにしてやる」

篠崎は湊の目を見つめ、ポケットからメンソールのタバコとライターを取り出した。彼は落ち着いた手つきでタバコに火をつけ、深く吸い込む。

「さよならだ、七瀬湊。君の『正義』も、この夜の闇で燃え尽きる」

最後の煙を吐き出すと、彼はタバコを、そっと、液体が染み込んだ布地の近くに置いた。

篠崎は振り返ることなく、静かに部屋を出た。彼の背後で、一瞬の爆ぜるような音の後、静かに炎が立ち昇り始めた。それは、七瀬湊が信じた『秩序』が、裏社会の『支配』によって破壊される、恐ろしい浄化の炎だった。
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