#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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汚れ仕事

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深夜、東雲司の私的な指示により、九条響は人目につかない倉庫の一角にいた。目の前には、血だまりの中に横たわる桐島蓮の亡骸。

九条の感情は、怒りよりも先に、焦燥と計算に支配されていた。彼は東雲のネットワークの末端として動く「情報収集者」であり、肉体的な暴力や汚れ仕事とは無縁のはずだった。桐島という優秀な人材が破壊されたこと、そしてその死体処理という最も汚く、危険な作業を自分がさせられている事実に、静かな怒りが込み上げる。

「...東雲さんは、こういうのを全部俺にやらせるのかよ。クソが」

九条は、震える手で桐島の身体に触れ、指示された通りに処置を始める。彼は、このリスクがやがて自分に降りかかるという不安に苛まれた。

遺体を移動させようとした瞬間、ポケットから滑り落ちたのは、桐島の愛用していた最新モデルのスマートフォンだった。

九条は一瞬の逡巡もなくそれを拾い上げる。

顔認証でロックが解除される。九条は深呼吸し、まるで株式のチャートを確認するかのように、桐島のLINE履歴を開いた。

そこに広がるのは、九条が想定していた組関係のやり取りではない、久我晴人との、奇妙な会話の記録だった。

「篠崎に狙われている」という桐島からのメッセージ。

「玲奈のアパートに避難している」という晴人の返信。

そして、藤堂玲奈と晴人が「同棲」していることを示す生活感のあるやりとりの応酬。

九条の脳内で、桐島が死ぬ直前に何を企んでいたのか、全てがつながる。桐島は、東雲の事業をテコに篠崎を出し抜こうとしていた。

九条はスマートフォンを握りしめた。このまま東雲と関わっていては、次にいつ自分が殺されるかわかったものではない。とはいえ、今さら抜けることも許されない。
であれば⋯。
九条に妙案が浮かんだ。

九条は即座に、桐島と晴人の友人である中野翔に連絡を取る。

「今すぐ話がある。桐島蓮が…死んだ。そして、久我晴人が今、最も危険な状況にある。」

中野から、美咲や篠崎、そして藤堂玲奈を巡るこれまでの経緯を聞き、九条の顔色が変わる。

「くそ。桐島の野郎、最悪の置き土産しやがったな。」

九条は、自らの命を守るために、中野翔を連れ、久我晴人が潜む藤堂玲奈のアパートへと急いだのだった。
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