#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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密室の天秤

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都心の夜景を一望する超高層ビルの最上階。不動産グループ「山本エステート」会長室という表の顔を持つその部屋で、山本剛は静かに揺れる琥珀色の液体を眺めていた。
デスクの上に置かれた、一切の装飾を排した暗号化電話が震える。表示された名前はない。だが、山本はその発信元を熟知していた。

 ゆっくりと受話器を耳に当てる。

『……山本さん、あんたんとこの篠崎、やり過ぎたよ』

低く、どこか焦燥の混じった声は、警視庁組織犯罪対策部四課の村瀬警部だ。電話越しでも、彼が額の汗を拭いながら、高級腕時計を気にする姿が目に浮かぶ。

『うちの部下が散々殺された。現場は文字通りの地獄絵図だ。これじゃあ、俺がどれだけ証拠を握り潰そうとしても限界がある。なんとかしてくれんか?』

山本の表情は動かない。温度のない目が、窓に映る自分の姿を捉えている。

『でないと、あんたとの友情も……いや、この「貸し借り」も、これで終いだぜ。』

村瀬の言葉は、懇願に近い脅しだった。山本にとって村瀬は、法の網を潜り抜けるための便利な「門番」に過ぎない。その門番が、自身の保身のために悲鳴を上げている。

山本は静かに、だが重みのある声で応えた。

「――そうだな。あいつは少し、自分の役割を勘違いしたようだ」

山本の脳裏に、かつて自分が拾い上げた若頭・篠崎亮介の顔が浮かぶ。人を壊すことに関しては天才的だが、時としてその破壊衝動は親の制御を越える。

「迷惑をかけた。村瀬さん、君の面子は必ず立てよう」

『……助かるよ。具体的にどうするつもりだ?』

「心配はいらない。組織の規律を乱す不純物は、ウチのやり方で始末させるわ。それが最も効率的だ」
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