#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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血の粛清

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神崎の死体が転がるラウンジで、御子柴律は冷静に、しかし鋭い口調で問いかけた。
「五箇さん。……今日はどういったご用件で? 」

五箇宗一は、懐から出した銀のライターで煙草に火をつけた。紫煙が死臭の漂う部屋に広がる。
「親父に……篠崎を殺せと言われてな」

その一言に、御子柴の指先がわずかに震えた。
「篠崎さんを、ですか」
「ああ。あいつはやりすぎた。看板に泥を塗った報いだ。……あいつを誘い出すために、その女を借りるぜ」

五箇は、傍らで震える水城美咲を、顎でしゃくって示した。
「なるほど。いつもの港に誘い出す……人質として使うわけですね」
「さすが、察しがいいじゃねぇか」

五箇が美咲の腕を掴もうとした、その時だった。
御子柴律の表情から、常にまとっていた無機質な仮面が剥がれ落ちた。

「……させるわけないでしょう」

その声は、震えていた。恐怖ではなく、抑えきれない激情に。
「美咲さんは、私が預かった大切な女性だ。親父さんの命令だろうが何だろうが、勝手はさせない!」

御子柴は懐から小型の拳銃を引き抜き、五箇の眉間に向けた。
超合理主義者、データの信奉者。そんな彼が、「非効率」な感情のために、組の審判者に銃を向けた。

五箇は、煙草をくゆらせたまま、哀れむような目で御子柴を見た。
「女に情が湧いたか。……残念だ、御子柴」

刹那、ラウンジを取り囲んでいた五箇の部下たちの銃口が一斉に火を噴いた。

肉を穿つ鈍い音が重なり、御子柴の白いデザイナーズスーツが瞬く間に赤く染まっていく。彼は言葉にならない声を漏らし、膝から崩れ落ちた。

五箇は、事切れた御子柴には目もくれず、壁際で固まっている藤堂玲奈に冷徹な視線を向けた。

「お前は……黙っておけるな?」

玲奈は、喉が鳴るほど激しく唾を飲み込み、人形のように何度も頷いた。その瞳は、恐怖で限界まで見開かれている。

「いい子だ」

五箇は短く吐き捨てると、抵抗する気力すら失った美咲の腕を強引に掴み、部下たちを連れて夜の闇へと消えていった。

静まり返ったラウンジに残された玲奈は、震える手でスマートフォンを取り出した。画面のロックを解除する指が、自分の頬についた返り血で滑る。

「……晴人、くん」

彼女がダイヤルしたのは、久我晴人の番号だった。
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