魔王の腹心だけど、実は王国のスパイです。

シロタカズキ

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夜翼の決戦

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夜の帳が降りた森の中。
勇者一行は進軍を続けていた。

「……何か、おかしい。」

盗賊リリアが呟く。

「確かに。妙に静かすぎるな。」

勇者ジークが冷静に言った。

「へえ……さすが勇者殿。なかなか鋭いじゃないか。」

不意に、森の奥から声が響いた。

一行が振り向いたその瞬間――
銀白の髪を持つ男が、黒衣を翻しながら姿を現した。

「誰だ!」

ガイルが剣を抜き、即座に構える。

「おっと、俺は敵じゃない。むしろ、あんたたちを助けに来たんだがな。」

ルシアン・ヴァルグリム。

彼はフードをゆっくり下ろし、
紅い瞳を勇者たちに向けた。

「名乗る気はないのか?」

ジークが神剣エクレシアを手に、警戒する。

ルシアンはわずかに笑い、肩をすくめた。

「……ルシアン・ヴァルグリム。王国から、お前らを援護すように命令を受けている。」

「何?」

「いいかよく聞け。お前たちの行動は、すでに魔王軍に知られている。」

ルシアンが静かに告げる。

「この森の闇を見てみろ。お前たちの足音、息遣い、会話……すべて監視されている。」

ルシアンは冷たく笑い、夜空を見上げる。

「見てるだろ? そろそろ姿を現したらどうだ、ヴァルツァー。」

――ザザザザッ……!!

突如、闇の中から無数の黒い影が舞い上がった。

ダークバットの群れ。

無音のまま、夜空を埋め尽くすように蠢いている。

その中心から、
漆黒の翼を広げた男の影がゆっくりと降り立った。

「……ルシアン。まさかとは思ったが……お前が本当に裏切るとはな。」

ヴァルツァー・アークヴァルド。

魔王軍の偵察部隊「夜翼団」を統べる指揮官。

彼の鋭い黄金の瞳が、暗闇の中で光る。

「……ずいぶんと大胆な真似をしてくれたな。」

ヴァルツァーの声は静かだったが、その奥には殺意が滲んでいた。

「お前は魔王様の忠実な腹心だったはずだ。それが今は……勇者どもとつるむとは。」

ルシアンは薄く笑い、肩をすくめた。

「お前ほどの諜報官なら、俺が『どちらの味方か』ぐらい、とうに気づいていただろう?」

「……」

ヴァルツァーの眼がわずかに細められる。

「確かにな。お前のことなど最初から嫌いだったさ。」

ヴァルツァーが腕を広げると、
ダークバットの群れが不気味な鳴き声を響かせ、一斉に飛び立った。

勇者たちを囲むように、無数の影が蠢く。

「……囲まれたか。」

ガイルが剣を構えながら舌打ちする。

「どうやら話し合いの余地はなさそうだな。」

ルシアンはフードを翻し、短剣を抜いた。

「夜の囁き(ナイト・ウィスパー)」

ヴァルツァーの放つ低音の音波が空気を震わせ、勇者たちの思考を狂わせる。

「っ……頭が……」

エドワードが額を押さえ、膝をつく。

「精神干渉魔法ね……!!」

フィオナが神聖魔法で防御を試みるが、
すでに影の包囲網が完成していた。

「怯むな、勇者ども!共に戦え!」

ルシアンが叫び、闇の中に飛び込む。

「お前たち全員、ここで死ね。」

ヴァルツァーが冷たく囁き、ダークバットたちが一斉に襲いかかる。
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