魔王の腹心だけど、実は王国のスパイです。

シロタカズキ

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取引の街、バルグレイヴ

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乾いた風が砂塵を巻き上げる――
アルヴェント王国南部、辺境の交易都市《バルグレイヴ》。

かつては商人たちの笑い声が響く繁栄の地だったが、今や戦の影が街を覆っていた。
街道の入り口では、王国兵が無骨な槍を掲げ、行き交う者たちを睨みつける。

「…ここが、バルグレイヴか」
ジーク・ヴァルトハイムは神剣の柄に手を添えながら呟いた。
勇者としての威厳は保っていたが、その瞳にはかすかな警戒が滲む。

「まったく…空気が淀んでやがる」
ガイル・ストラウスが鼻を鳴らす。
「商人も傭兵も、いけすかない奴らばかりだぜ」

「気をつけて。敵は、この町にも潜んでいるはずよ」
フィオナ・エヴァンスが柔らかく微笑みながらも、祈るように胸元の聖印を握る。
その指先には、微かな震えがあった。

エドワード・クライヴは周囲の建物を冷静に観察していた。
「魔力の残滓があるな。……この町、何者かの結界の影響下にある」

「それより――」
リリア・アーベルが小声で囁く。
「ここ、裏通りに入った途端、目が合う奴ばっかりだよ。尾行、三人。あたしが始末しようか?」

ジークは首を振った。
「まだいい。俺たちの動きを見せておくのも策だ。……ここで情報を得る」

一行はゆっくりと街の中心部へと歩を進める。
砂漠の入口に位置するバルグレイヴは、陽光に焼かれた石畳の街。
その陰では、目を光らせる者たちが蠢いていた。



商人ギルド長《ライナー・ドレクス》の屋敷。

「ほう…あんたらが、例の“勇者様”か」
分厚い指輪をはめた男が、酒を片手に嗤う。
「ウチの街で魔王軍の情報だぁ? 高くつくぜ」

ジークは無言で金貨の袋を投げた。
だが、ライナーは肩を竦める。
「通貨の価値なんざ、すぐに変わる。……戦の裏じゃ“命”で払うのが常識ってな」

「どういう意味だ?」
ガイルが不穏に声を低める。

ライナーはニヤリと笑った。
「バルグレイヴで魔王軍の密偵が動いてる。そいつらを一掃してくれりゃ――“本物”の情報をくれてやるさ」



一方、裏路地――
リリアは密かに《情報屋セラ・イーグレット》と接触していた。

「あなたたち、本当に魔王軍の情報が欲しいの?」
セラは艶やかな笑みを浮かべる。
「だったら……“魔族の幹部に通じる道”を知りたくない?」

「……値段は?」とリリア。

「あなたの“秘密”を一つ。どう?悪くない取引でしょう?」

リリアは目を細める。
「……あんた、あたしの何を知ってるの?」

「さあね」
セラは首を傾げ、赤い唇をつり上げた。
「でも――この町じゃ、誰もが何かを隠して生きてる。あなただって、そうでしょう?」
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