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統率者なき夜
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轟音と共に崩れ落ちた給水塔の下――
そこにあったのは、ぐしゃりと潰れた鋼鉄の棍棒と、潰れた肉塊。
もはや《鋼喰いの統率者》ゴルド・ナハシュの姿はなく、残されたのは沈黙だけだった。
「……やった、のか」
ジークが息を吐き、神剣を杖代わりにして膝をつく。
その隣で、ルシアンが銀の髪を揺らしながら一言だけ呟く。
「……終わったのは“頭”だけだ」
次の瞬間――
「ギャアアアァァ!!」
「ゴルド様が! ゴルド様がァァ!!」
村の各地に散っていたダークゴブリンたちが、狂乱したように吠え始めた。
群れの支配者を失った今、彼らは理性をなくし、殺戮の本能に支配されていく。
「クソッ、数が減ったとはいえ、まだこんなに……!」
ガイル・ストラウスが歯噛みし、双剣を構え直す。
その背に、フィオナとエドワード、そして傷を負ったジークが立ち並んだ。
「この村は――これ以上、好きにはさせないッ!」
◆
「フィオナ、後衛を頼む!」
「了解、《聖域の加護(セイクリッド・ウォール)》展開!」
フィオナの聖印が光り、前線を守る結界が張られる。
次の瞬間、突撃してきたダークゴブリンが弾かれ、地面を転げ回った。
「っらああああっ!!」
そこへ、ガイルが飛び込み、双剣が旋風のように踊る。
鋼の爪を弾き、黒い皮膚を斬り裂き、怒りに狂う敵の首を次々と跳ね飛ばしていく。
「一人で十体は無茶だよ、ガイルッ!」
リリアが影から飛び出し、ゴブリンの背後に短剣を突き立てる。
鋭い悲鳴を上げ、敵が崩れ落ちた。
◆
エドワードは詠唱を開始していた。
「《魔力連結式:四重結印陣(クワッド・シール)》!」
大地に描かれた陣が爆ぜ、複数のゴブリンが足元を拘束される。
「今だ、ガイル!」
「任せとけッ!」
ガイルが跳躍し、封じられたゴブリンの群れに一閃を加える。
双剣が闇を裂き、敵が断末魔と共に地に伏した。
「残り……三体!」
「やるぞ――!」
◆
フィオナの術が再び輝き、《聖なる鎖》が最後のゴブリンたちの手足を拘束する。
その隙に、リリアが踊るように背後から飛び込み、喉元に鋭く刃を滑らせた。
「二体……あと一体!」
その最後の一体は、狂気に満ちた目で吠え、フィオナに飛びかかる。
「きゃ――!」
その瞬間――
「させるかよッ!!」
ジークが身を挺して割り込み、神剣で敵を地面に叩き伏せた。
――静寂。
吹き抜ける風が、血と鉄の匂いを運ぶ。
◆
夜明けが近づいていた。
満月の光が静かに村を照らし、戦火に包まれていた《エルダレスト》が、ようやく静寂を取り戻す。
「……終わった、のか……?」
ガイルが汗を拭い、膝をついた。
「ええ。……私たち、守りきったわ」
フィオナの声が震えていたが、その眼差しは誇りに満ちていた。
リリアが短剣を収め、夜空を見上げる。
「……この村の人たちが、ちゃんと帰ってこれるようにしなきゃね」
エドワードは静かに頷きながら、魔力探知の術式を維持していた。
「残存の魔力反応はない。……これで、本当に掃討完了だ」
そして。
静かに背を向けるルシアンの姿に、ジークは小さく問いかけた。
「ルシアン。……助かった」
「……礼を言うのは、まだ早いぞ。次の敵は、こんなものじゃ済まん」
銀の影は、夜の闇へと消えていく。
そこにあったのは、ぐしゃりと潰れた鋼鉄の棍棒と、潰れた肉塊。
もはや《鋼喰いの統率者》ゴルド・ナハシュの姿はなく、残されたのは沈黙だけだった。
「……やった、のか」
ジークが息を吐き、神剣を杖代わりにして膝をつく。
その隣で、ルシアンが銀の髪を揺らしながら一言だけ呟く。
「……終わったのは“頭”だけだ」
次の瞬間――
「ギャアアアァァ!!」
「ゴルド様が! ゴルド様がァァ!!」
村の各地に散っていたダークゴブリンたちが、狂乱したように吠え始めた。
群れの支配者を失った今、彼らは理性をなくし、殺戮の本能に支配されていく。
「クソッ、数が減ったとはいえ、まだこんなに……!」
ガイル・ストラウスが歯噛みし、双剣を構え直す。
その背に、フィオナとエドワード、そして傷を負ったジークが立ち並んだ。
「この村は――これ以上、好きにはさせないッ!」
◆
「フィオナ、後衛を頼む!」
「了解、《聖域の加護(セイクリッド・ウォール)》展開!」
フィオナの聖印が光り、前線を守る結界が張られる。
次の瞬間、突撃してきたダークゴブリンが弾かれ、地面を転げ回った。
「っらああああっ!!」
そこへ、ガイルが飛び込み、双剣が旋風のように踊る。
鋼の爪を弾き、黒い皮膚を斬り裂き、怒りに狂う敵の首を次々と跳ね飛ばしていく。
「一人で十体は無茶だよ、ガイルッ!」
リリアが影から飛び出し、ゴブリンの背後に短剣を突き立てる。
鋭い悲鳴を上げ、敵が崩れ落ちた。
◆
エドワードは詠唱を開始していた。
「《魔力連結式:四重結印陣(クワッド・シール)》!」
大地に描かれた陣が爆ぜ、複数のゴブリンが足元を拘束される。
「今だ、ガイル!」
「任せとけッ!」
ガイルが跳躍し、封じられたゴブリンの群れに一閃を加える。
双剣が闇を裂き、敵が断末魔と共に地に伏した。
「残り……三体!」
「やるぞ――!」
◆
フィオナの術が再び輝き、《聖なる鎖》が最後のゴブリンたちの手足を拘束する。
その隙に、リリアが踊るように背後から飛び込み、喉元に鋭く刃を滑らせた。
「二体……あと一体!」
その最後の一体は、狂気に満ちた目で吠え、フィオナに飛びかかる。
「きゃ――!」
その瞬間――
「させるかよッ!!」
ジークが身を挺して割り込み、神剣で敵を地面に叩き伏せた。
――静寂。
吹き抜ける風が、血と鉄の匂いを運ぶ。
◆
夜明けが近づいていた。
満月の光が静かに村を照らし、戦火に包まれていた《エルダレスト》が、ようやく静寂を取り戻す。
「……終わった、のか……?」
ガイルが汗を拭い、膝をついた。
「ええ。……私たち、守りきったわ」
フィオナの声が震えていたが、その眼差しは誇りに満ちていた。
リリアが短剣を収め、夜空を見上げる。
「……この村の人たちが、ちゃんと帰ってこれるようにしなきゃね」
エドワードは静かに頷きながら、魔力探知の術式を維持していた。
「残存の魔力反応はない。……これで、本当に掃討完了だ」
そして。
静かに背を向けるルシアンの姿に、ジークは小さく問いかけた。
「ルシアン。……助かった」
「……礼を言うのは、まだ早いぞ。次の敵は、こんなものじゃ済まん」
銀の影は、夜の闇へと消えていく。
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