ヘタレ魔女と殺戮の乙女

ミヤギリク

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邂逅 ② ~覚醒~

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「ここは…?どこ…?」
マーヤが目覚めたら、まるで不思議な国のアリスのトランプの世界を彷彿とさせるメルヘンな世界が、目の前に広がっていた。ふと、梟に目をやろうとすると、その梟は何処にも姿はなかったのだ。マーヤは、血眼になり辺りを探し回ったがいないー。
   マーヤは諦め元来た道に戻った。ここは、深々とした森の中だ。太く大きな大樹が辺りを優しく包み込んでいる。川の流れや小鳥の鳴き声が優しく木霊した。ファンタジーの世界さながらの巨大な木々の隙間から、太陽の光が差し込んでいる。
    すると、そこにはさっきまで手元にあった母の手紙と本が落ちていた。それを拾うと、マーヤの頭の中に何かひんやりとしたゾクゾクした物が沸き立ってきたのだ。
「は、母の…母の手がかりになるかも知れない…」
マーヤは本と手紙を手に取ると、手紙を熟読した。
『アリエル・シャルル・バルド…』


「こんな所で、何してるの?遅刻しちゃうよ。」
ふと後ろを振り向くと、茂みの向こうで黒いローブを着た、自分と同年代位の少女が木陰に立っていた。
   マーヤはビクッとし、少女の方を向いた。少女はトンガリ帽子を被り、まるで魔女のようであった。
「…あ、ええと…私は…」
マーヤが言葉に詰まっていると、再び背後から少女と同じ格好の少女の集団がぞろぞろやって来た。
「アリアン…何なんですか?全く貴女って言う人は、いつも協調性がないから…ただでさえ、遅れているのに…」
集団を引き連れた、恰幅の良い中年女性は溜め息混じりに声を漏らした。
「先生、ごめんなさい…」
アリアンは深々と頭を下げると、先生の元に駆け寄った。
    
    
    マーヤの心臓の鼓動が太鼓に叩かれたかのように強くなっていった。
   マーヤは、同性が…特に集団が兎に角苦手である。
その理由は、マーヤの特殊な脳の造りから来る生い立ちによるものだろう。
    彼女は、幼稚園の頃から空気が読めず孤立し、またわざとじゃないのにやらかすことが多くあった。その為、バカにされる事や変な目で見られる事が現在現在進行形で続いているのだ。
    どう頑張ろうにも周りの様に出来なく、周囲からの好奇な視線や変な物でも見るかのような視線に耐えられなく、こうしてマーヤは自己肯定感がなくなっていき消極的になっていったのだった。
   その為、普通の人が普通に構築してきた幸せな人間関係や対人能力を、まともに経験する事が出来ずにいたのだった。
  そして、何処行っても殆どの人から相手にされる事はなく、マーヤ自身は寂しいと感じながらも1人でいる事に安堵を覚えるのだった。
   その為、いざ話すと実践経験が乏しく頭の回転が悪い為、気の利いた事を話せない…また、他人の話に興味関心を寄せる事が難しく、自分の話ばかりになってしまう…頭が混乱し、相手を楽しませる事や気遣う事が出来なくなる…自分と話している人は、ストレスなんじゃないのか…?という自己肯定感の低さが、ここにあるのであった。
   仲良くしたい人と話す勇気が出ない、いざ話すと緊張して声がつっかえた感じになり、明るくコミニュケーションを楽しむ事が難しい。そして、好きな人や憧れの人が他の人と楽しそうに話しているのを見ると、心が締め付けられるような感覚を覚えるのだ。
    こうしていくうちに益々卑屈になり、マーヤは1人に安堵し心に分厚いバリケードを張り巡らさせました。
    周りはマーヤの事を異邦人か宇宙人として見ている事だろう。でも、どう頑張ろうとしても、勇気が出ず声が異物で詰まったかのような感覚になるのだ。自分と話す人は楽しくないだろうし、寧ろストレスになるのでは…?と、マイナスな感情で1杯になった。
    そして、誰かと仲良くしたい友達欲しいと言う気持ちを抑えながら生活していたのだった。

  
「こっちおいで…」
アリアンは、マーヤに手招きをした。
「いや…私は…」
マーヤがたじろいでいると、先生はアリアンをきつく睨みつけた。
「アリアン…何を寝ぼけた事を言っているのですか?そこに誰もいませんよ。」
「…え…?そんな…」
アリアンは困った様な顔をした。
「…あ、ごめんなさい…私、ここの世界の住人じゃないの…」
さっきまで固まっていたマーヤは、ボソボソ声を出すと早歩きでその場を去った。
    ここで、マーヤは確信した。自分は違う世界からやって来たのだ…と…
    マーヤは歩きながら考え混んだ。これからこの世界で、自分は一体どうやっていけばいいのか…?このままずっとこの世界から抜け出せなかったら、どうしよう…?と…まるで、狼の群れの中に子うさぎが飛び込んだかのような感じである。
「ごめんなさい…この辺りに、杖、見なかった…?」
向かいの木の陰なら、アリアンが姿を表した。
「え…?杖…?」
マーヤは、声が裏返った。
「うん、リコーダー位のサイズで…檜で出来た頑丈な木の棒なんだけど…」
アリアンは早口だった。余程大切な物なのだろうー。
「あ、そんな物は何処にも見なかったけど…」
「ああっ、どうしよう…私、いつもだ…ホントにおっちょこちょいで…」
アリアンは途方に暮れた、、


   すると、突然強い竜巻の様な風が2人を襲いかかった。2人は近くの大樹にしがみついた。その風の渦は徐々に大きくなっていき、辺りの木々がザワザワ揺れた。

「待っていたぞ!リリベル・アリー」
風の渦の中から、深々と黒いフードを被った灰眼の女が姿を表した。
「灰色の眼…」
アリアンは、酷く怯えていた。フードの女は右手の杖を構え、マーヤを睨みつけた。
「ま、待って…私は、この世界の住人じゃないの…」
しかし、フードの女はマーヤのその言葉を無視すると、杖を振るった。
「お黙り!とうとう、この日を待っていたんだよ!あんたと対峙するこの時をなー!」
フードの女は興奮していた。
「ねえ…うちらに勝ち目はないよ。早く逃げよう…」
アリアンはぶるぶる震え木陰から様子を伺っていた。
「ふん、逃がさないよ。」
フードの女は鼻で笑い、杖を振るった。すると、風の渦が再び威力を増し、マーヤ目掛けて襲いかかった。風の渦は大樹ごと包み込んだ。すると、大樹はスライスされたかのように分裂し散乱した。
「マーヤ、とりあえず茂みの方に…」
アリアンがマーヤの服を引っ張った。
    その時だったー。本と手紙が風の渦に吹き飛ばされた。
「待って…あれを、取りに行かないと…」
「駄目だよ!戻って!危ないから…」
しかし、マーヤはアリアンの声を無視すると、本と手紙を取りに、地べたに這いつくばりながらフードの女の方へ向かった。
「バカか…?お前は…」
フードの女は溜め息つくと、また風の威力を強めた。
    そしてマーヤは吹っ飛び、その拍子に分厚い眼鏡がカランと落ちた。そして、転倒した。すると、頭が酷くズキズキ痛んだ。

ーその時だった。


   マーヤは無言でじっと前方を向いた。
彼女の眼光は鋭く灰色に変色した。そして、マーヤの周囲を桜色の炎と風が渦を巻きながら取り囲んだ。
そして、マーヤは前方をクルクル見渡した。そして、ゆっくり歩き落ちていた杖を手に取った。そして、フードの魔女目掛けて突き刺しブツブツ早口で複雑な呪文を唱えた。
「…あ…あたしの杖…」
アリアンは、辛うじて声は出せても何も出来ないでいた。
   すると、マーヤの足元が大きくぐらつき周りににょきにょきと樹木が大蛇の姿を象り出現したのだ。その樹木は、全然10メートル程もある。
「来たな!リリベル・アリー」
フードの魔女はニンマリ片方の口角をあげると、杖を携え呪文を唱える。
「茨のロザリア、この女の全身を痛めつけておやり!」
フードの女は、杖に命令した。すると、彼女の足元が小刻みに揺れ、棘が無数にあるつるが出現した。大きさはマーヤの蛇と同じぐらいである。そして、この巨大なつるは青磁色の炎に包まれながら灰眼の魔女の手の動きに合わせ、マーヤに襲いかかる。マーヤもつかさず手を振るう。
    木の大蛇と茨は、互いに喧嘩しながら激しく衝突した。衝突する度に地響きがなりぐらつき、そしてビルが爆発したかのような威力を放った。竜巻のような強い突風が辺り一面を覆いつくし、アリアンは瞳孔を小刻みに揺らしガクガク震えていた。
   そしてマーヤは、再びブツブツ複雑な呪文を唱えた。すると、樹木は茨をガツガツけたたましく音を鳴らしながら押していき、茨ごとフードの魔女をぐるぐる取り囲んだ。
すると、桜色の光が辺り一面を覆いつくしー、フードの女の甲高い悲鳴が響き渡った。
そこから先の記憶はないー。









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