デスゲーム教室の金の亡者

月田優

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差別

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 食堂での一件の後、オレたちは教室へと戻ってきた。

「九条くん。さっきはなんであんなことしたの?」

「あんなこと?」

「上級生たちに席を譲ったでしょ。あの言い分は明らかに横暴だったよ。あの人たちに渡す必要はなかったと思うな」

「なんであんなことをしたのか知りたいのか?」

「そうだね。気になるよ」

「そんなの決まってる。無駄だからだ」

「…………どういうこと?」

「あいつらの言い分は横暴だったとオレも思う。けどな、ああいう連中は口で言っても分からないんだよ。結局、口論になって時間も労力も消費するだけ。だったら、適当に合わせて席を譲ればいい」

 オレの話を聞いた白銀は唖然としている。
 白銀は性格的に曲がったことが嫌いで、自分が納得したことしかしないタイプのように思える。
 間違ったことは間違っているとしっかり発言する。
 それは長所でもあり、短所でもある。
 時には妥協する必要があることを白銀は知らない。
 面倒ごとは避けるに限る。

「……なるほど。九条くんの考え方はよく分かったよ。その考え方について私は何も言うつもりはないよ。生き方は人それぞれだからね」

 納得はできないまでも理解はしてくれたようで、一定の反応の示す白銀。

「悪いな。オレに合わせてもらって」

「別にいいよ。あそこで私が話しても分かってもらえなかっただろうから」

 一応オレの顔を立てて引き下がってくれた白銀。

「でもね、私は納得してないことだけは覚えておいてね。口で言ってもわからないとしても、口で言わなきゃわからないんだよ」

 それが正しい考え方だとオレも思う。
 だが、オレは正しいか正しくないかで物事を判断していない。
 例え間違っていても、それが最善ならば、その手段をとるだけだ。

「わかった。覚えておく」

 白銀の考え方も一つの正解。
 価値観、考え方は人の数だけ存在する。
 白銀の思考が少しだけわかった気がした。

「それと、九条くんに一つだけ訊いてもいい?」

 いつになく真剣な面持ちでこちらを見つめる。

「何だ」


「九条くんはーーー大切なものを失ったこと、ある?」


 はっきりしない抽象的な質問だが、言いたいことはわかる気がする。
 オレという人間を形成するに至ったきっかけ。
 これまでの会話の内容や流れを考えれば、想像に難くない。

「ある」

 オレは短くそう答えた。
 それを聞いた白銀は納得した表情を浮かべる。

「そっか。教えてくれてありがとう」

 白銀はそれ以上深く詮索してくることはなかった。

「九条くんとは長い付き合いになりそうだよ」

「オレもそう思ったところだ」

 白銀とはこれから長い付き合いになりそうだ。
 オレは何故だかそんな予感がしていた。
 昼休み終了のチャイムが鳴り、午後の授業が始まった。
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