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第二章 始まる争い
23話 悪戯な笑み
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「まさか『超上級ダンジョン』へ挑むなんて…でもまぁ、彼らのランクならなんとかなるか。スキルも強化してあげたんだし…」
ウンエイはモニターを見ながら、紅茶を嗜んでいた。
徹夜で作業した甲斐あって、男に指示されたとおりに『開発』と『分析』の性能は底上げ済みで、仕事は一段落している。
「これでランク上げも間に合うでしょ…」
美しくニヤリと笑うその目元にはクマができていて、表情は少し疲れているようだった。
小さくため息をつくと、再び紅茶の入ったカップを口に運んだ。
「はぁ…癒されるわぁ。」
鼻から通り抜ける甘い香りが、疲れた頭と体、そして心を洗い流してくれるようだ。
カップをデスクに置くと、モニターに目を向ける。
そこにはイノチたちが『アソカ・ルデラ山』の山腹を抜け、『超上級ダンジョン』の入口に到着したところが映し出されている。
「…ランク戦まであと少し…頼むわよ、イ・ノ・チ・くん…」
そう言って、今度は皿にあるクッキーを手に取り、口への頬張った瞬間だった。
「美味しそうなクッキーだね!」
「…っ!!?」
突然、声をかけられて、むせるウンエイ。
「アハハハハ…ごめんごめん!大丈夫かい?」
「ゴホッ…ゴホッ…あっ…あなた様は…なぜここに…」
咳き込みながら振り返ると、背の低い少年が立っていた。
いや…少年とも少女ともとれる中性的な顔立ち。
金髪の髪の毛がとても美しく、まつ毛の長い大きなブラウンの瞳が特徴的だ。
「驚かせてごめんね~。じいさん、帰ってきてたんだってね~?どこ行ったか知らない?」
「…いぇ…私もどちらへ行ったか存じておりません。気まぐれな方ですから…」
「そっかぁ~!ったく…自分で呼んだくせになぁ。ボケたかな?じいさんも!」
「呼んだかのぉ?」
「おっ?」
「…っ!?」
少年が両手を頭の後ろに回して、チェッと舌打ちした瞬間、突如として背後に筋肉質な上半身の持ち主が現れたのだ。
ウンエイはまたもや言葉を失った。
その男は腰に巻いた白い布を揺らし、白ひげをなでながら少年に話しかける。
「…で、誰が認知症のクソジジィじゃて?」
「ん~あれ?僕、そこまで言ったっけ?」
その問いかけに、ウンエイは無言で何度も首を横に振る。
しかし、白ひげの男はヌゥッと手を伸ばすと、少年の頭を掴んで軽々と持ち上げた。
しかし、少年も特に微動だにする事なく、頭を掴まれたまま話を続けている。
「自分が呼んだくせに、どこにいるか分からないのがいけないんだろ?」
「まぁそうじゃが…お主も相変わらず口が悪いのぉ。」
二人は笑顔で話しているが、言い表せない不穏な空気が漂っている。
「あっ…あっ…あの…ゼ…」
ウンエイがどうしていいかわからずに男に声をかけようとした瞬間、白ひげの男がウンエイの口を指でさえぎった。
「…っ?」
「だめじゃろう…わしのことは『Z』と呼べと言っとるのに。」
「もっ…申し訳ございません。」
「なんだよ…その『Z』って。」
「コードネームっちゅう奴じゃ。」
「…なんだか面白そうなことやってるみたいだねぇ~」
少年がニンマリと悪戯な笑みを浮かべる。
それを見た男もまた、口元でニヤリと笑みをこぼした。
「お主も協力な『プレイヤー』を所持しとるみたいじゃの。」
「あぁ、あいつね。だって一度クリアしてる奴だもん。…ていうかさ、もしかして、じいさんの『プレイヤー』って…」
少年がそこまでいうと、男は自分の口の前で人差し指を立てる。
「とりあえず、わしの部屋に行かんか?」
「フフフ…いいよ。聞こうじゃないか!」
二人はそう話し、再び互いにニヤリと笑うと、モニタールームから出て行ってしまう。
ウンエイはそれを見送ると、ヘナヘナと座り込んだ。
「…部屋の場所…変えようかしら…」
画面ではイノチが『黄金石』に飛びついていた。
◆
時間はフレデリカたちが『ウィングヘッド』と会敵する少し前にさかのぼる。
イノチたちは、未だに『ウィングヘッド』との鬼ごっこを続けていた。いや、鬼ごっこというよりも"隠れ鬼"をしていると言った方が正確だろう。
なにせ、振り切って隠れては見つかりまた逃げる、を繰り返しているからだ。
「くそぉぉぉっ!!なんでこうもついてないんだ!!」
イノチは走りながらそうこぼした。
その後ろからは地響きとともに、咆哮が聞こえてくる。
「イノチ…魔法がくるぞ。」
「またかよ!ハァハァ…『ハンドコントローラー』!!」
走りながら、右手に発動した『ハンドコントローラー』で壁に触れ、コードの解析と『書換(かきかえ)』を行う。
エンターを押せば、イノチの後ろの方では壁や天井、地面が隆起して『ウィングヘッド』の進路を塞いでいく。
しかし…
轟音とともにその障壁は砕け散り、吹き飛ばされた石つぶてたちがイノチに襲いかかってくる。
「痛ででででで!!!」
「次の角を曲がったら穴掘って隠れぃ…」
「あぁ…!俺もそう…ハァハァ…思ってたところだ!!」
床を鳴らして角を曲がりきると、『ハンドコントローラー』を発動して壁に穴を開ける。
そして、そのままその中に入り込むと、穴の入口を閉じて姿を隠したのだ。
『ウィングヘッド』が角を曲がってくる。
しかし、通路にイノチの姿はない。
不自然さを感じているのか、小さく咆哮を上げ、そのまま進んでいく『ウィングヘッド』。
(ウォタ…声出すなよ…)
(誰にものを言っとる…お主こそ…)
息を潜め、『ウィングヘッド』が通り過ぎるのを待つ二人。
地響きが壁一つ隔てた目の前をゆっくり通り過ぎていく。
(おい…ウォタ…ひげが…鼻に…)
(仕方なかろう!なんで…こんなに狭くしたんだ!身動きが…とれん…)
(…動かすなよ…鼻にあたって…へっ…へっ…)
(イノチ…!我慢せい…バレるぞ…!)
(そっ…そんなこと言っても…へっ…へっ…へっ…)
「へっくしゅい!!」
「バカものぉぉぉ!!」
大きなくしゃみの後に、ウォタの悲痛の叫びと響き渡るのであった。
ウンエイはモニターを見ながら、紅茶を嗜んでいた。
徹夜で作業した甲斐あって、男に指示されたとおりに『開発』と『分析』の性能は底上げ済みで、仕事は一段落している。
「これでランク上げも間に合うでしょ…」
美しくニヤリと笑うその目元にはクマができていて、表情は少し疲れているようだった。
小さくため息をつくと、再び紅茶の入ったカップを口に運んだ。
「はぁ…癒されるわぁ。」
鼻から通り抜ける甘い香りが、疲れた頭と体、そして心を洗い流してくれるようだ。
カップをデスクに置くと、モニターに目を向ける。
そこにはイノチたちが『アソカ・ルデラ山』の山腹を抜け、『超上級ダンジョン』の入口に到着したところが映し出されている。
「…ランク戦まであと少し…頼むわよ、イ・ノ・チ・くん…」
そう言って、今度は皿にあるクッキーを手に取り、口への頬張った瞬間だった。
「美味しそうなクッキーだね!」
「…っ!!?」
突然、声をかけられて、むせるウンエイ。
「アハハハハ…ごめんごめん!大丈夫かい?」
「ゴホッ…ゴホッ…あっ…あなた様は…なぜここに…」
咳き込みながら振り返ると、背の低い少年が立っていた。
いや…少年とも少女ともとれる中性的な顔立ち。
金髪の髪の毛がとても美しく、まつ毛の長い大きなブラウンの瞳が特徴的だ。
「驚かせてごめんね~。じいさん、帰ってきてたんだってね~?どこ行ったか知らない?」
「…いぇ…私もどちらへ行ったか存じておりません。気まぐれな方ですから…」
「そっかぁ~!ったく…自分で呼んだくせになぁ。ボケたかな?じいさんも!」
「呼んだかのぉ?」
「おっ?」
「…っ!?」
少年が両手を頭の後ろに回して、チェッと舌打ちした瞬間、突如として背後に筋肉質な上半身の持ち主が現れたのだ。
ウンエイはまたもや言葉を失った。
その男は腰に巻いた白い布を揺らし、白ひげをなでながら少年に話しかける。
「…で、誰が認知症のクソジジィじゃて?」
「ん~あれ?僕、そこまで言ったっけ?」
その問いかけに、ウンエイは無言で何度も首を横に振る。
しかし、白ひげの男はヌゥッと手を伸ばすと、少年の頭を掴んで軽々と持ち上げた。
しかし、少年も特に微動だにする事なく、頭を掴まれたまま話を続けている。
「自分が呼んだくせに、どこにいるか分からないのがいけないんだろ?」
「まぁそうじゃが…お主も相変わらず口が悪いのぉ。」
二人は笑顔で話しているが、言い表せない不穏な空気が漂っている。
「あっ…あっ…あの…ゼ…」
ウンエイがどうしていいかわからずに男に声をかけようとした瞬間、白ひげの男がウンエイの口を指でさえぎった。
「…っ?」
「だめじゃろう…わしのことは『Z』と呼べと言っとるのに。」
「もっ…申し訳ございません。」
「なんだよ…その『Z』って。」
「コードネームっちゅう奴じゃ。」
「…なんだか面白そうなことやってるみたいだねぇ~」
少年がニンマリと悪戯な笑みを浮かべる。
それを見た男もまた、口元でニヤリと笑みをこぼした。
「お主も協力な『プレイヤー』を所持しとるみたいじゃの。」
「あぁ、あいつね。だって一度クリアしてる奴だもん。…ていうかさ、もしかして、じいさんの『プレイヤー』って…」
少年がそこまでいうと、男は自分の口の前で人差し指を立てる。
「とりあえず、わしの部屋に行かんか?」
「フフフ…いいよ。聞こうじゃないか!」
二人はそう話し、再び互いにニヤリと笑うと、モニタールームから出て行ってしまう。
ウンエイはそれを見送ると、ヘナヘナと座り込んだ。
「…部屋の場所…変えようかしら…」
画面ではイノチが『黄金石』に飛びついていた。
◆
時間はフレデリカたちが『ウィングヘッド』と会敵する少し前にさかのぼる。
イノチたちは、未だに『ウィングヘッド』との鬼ごっこを続けていた。いや、鬼ごっこというよりも"隠れ鬼"をしていると言った方が正確だろう。
なにせ、振り切って隠れては見つかりまた逃げる、を繰り返しているからだ。
「くそぉぉぉっ!!なんでこうもついてないんだ!!」
イノチは走りながらそうこぼした。
その後ろからは地響きとともに、咆哮が聞こえてくる。
「イノチ…魔法がくるぞ。」
「またかよ!ハァハァ…『ハンドコントローラー』!!」
走りながら、右手に発動した『ハンドコントローラー』で壁に触れ、コードの解析と『書換(かきかえ)』を行う。
エンターを押せば、イノチの後ろの方では壁や天井、地面が隆起して『ウィングヘッド』の進路を塞いでいく。
しかし…
轟音とともにその障壁は砕け散り、吹き飛ばされた石つぶてたちがイノチに襲いかかってくる。
「痛ででででで!!!」
「次の角を曲がったら穴掘って隠れぃ…」
「あぁ…!俺もそう…ハァハァ…思ってたところだ!!」
床を鳴らして角を曲がりきると、『ハンドコントローラー』を発動して壁に穴を開ける。
そして、そのままその中に入り込むと、穴の入口を閉じて姿を隠したのだ。
『ウィングヘッド』が角を曲がってくる。
しかし、通路にイノチの姿はない。
不自然さを感じているのか、小さく咆哮を上げ、そのまま進んでいく『ウィングヘッド』。
(ウォタ…声出すなよ…)
(誰にものを言っとる…お主こそ…)
息を潜め、『ウィングヘッド』が通り過ぎるのを待つ二人。
地響きが壁一つ隔てた目の前をゆっくり通り過ぎていく。
(おい…ウォタ…ひげが…鼻に…)
(仕方なかろう!なんで…こんなに狭くしたんだ!身動きが…とれん…)
(…動かすなよ…鼻にあたって…へっ…へっ…)
(イノチ…!我慢せい…バレるぞ…!)
(そっ…そんなこと言っても…へっ…へっ…へっ…)
「へっくしゅい!!」
「バカものぉぉぉ!!」
大きなくしゃみの後に、ウォタの悲痛の叫びと響き渡るのであった。
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