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第二章 始まる争い
39話 盾っこ 僕っこ ドジっ子
しおりを挟む「黒球か…レアリティは何なんだろうなぁ。」
イノチは『Result(結果)』の画面を見ながら、そうつぶやいた。
結局、ガチャの結果は白球が8つ、金球が1つ、そして、黒球が1つだ。
「そういえば、フレデリカの時は吹き飛ばされて何色か見てないんだよなぁ…黒は今まで見たことないけど、虹球『SR』より下ということは考えにくいし、期待はできるか…」
イノチはそう言いながら、淹れてきたコーヒーカップを口へと運ぶ。酸味が口の中に広がり、心地よい香りが鼻を抜けていく。
コーヒーを飲みながらタップすると、画面は暗転し、『NOW LOADING』の表示が現れた。
「黒は『UR』か…はたまたその上か…」
ニヤニヤしながら結果を待つイノチは、コーヒーカップをテーブルに置く。
そして、画面が再び明るくなると、獲得した順にそれぞれの結果が姿を現し始めた。
「ポーション、強化薬、気つけ薬…これはダンジョンで俺が飲んだやつだな…で、ポーション、ポーション、Mポーション…」
先に白球が全て開かれていく。
8つの白球では消費系アイテムと、『魔導の杖(N)』と『ガントレット(N)』の装備2つを引き当てた。
残りは金球と黒球。
「よし…まずは金…え?黒からなの?なんで…?」
規則性が良くわからず首を傾げるイノチをよそに、画面には黒球が大きく現れ、まばゆい光とともにその結果が開かれていく。
「まっ…まぁいいけど。さて、頼むぞぉ~『盾士』こい!」
そう両手を合わせて祈るイノチの前で、金色に輝く光とともに目の前に現れたのは、人間一人をすっぽりと覆えるほどの大きな盾だった。
「これ…タワーシールド…か?レアリティは……って、うそだろ!!!?」
その盾の上に表示されているレアリティを見て、イノチは驚愕する。
「『SUR』…スーパーウルトラレア…マジか…」
今まで引いた中で、1番高いレアリティであった。
しかし、歓喜に打ち震えるも、重要な事実に気づいたイノチは表情を暗くした。
「だけど、誰が使うんだよ…これ。俺だってこんな重そうなやつ持てないし…ってか、そもそも『盾士(ガードナー)』専用武器って書いてあるじゃん…」
イノチは大きなため息とともに頭を抱えた。
終わった…
なんの成果もだせなかった…いや、成果はあったと考えあるべきか。
"誰も使えない"高レアリティ武器がでたのだから。
しかし、みんなへの言い訳が思い浮かばない。
高レアリティが出たということだけでは、おそらく言い訳にはならないだろうから。
フレデリカあたりに一蹴されて終わりだ。
「前回の爆死を引きずってるな…これは…運が俺から離れていってる…くそぉ…」
自分の膝を叩くイノチ。
安易に『黄金石』全部を使ってしまったことを、よほど後悔しているのだろう。
その手は小さく震えている。
「もっとよく考えてガチャを引けばよかった…いくら回しても高レアリティが出ないなんてことは、よくあるって知ってたのに…異世界のガチャだからって調子に乗りすぎたんだ…」
防御に徹してくれる仲間を手に入れて連携できれば、自分も戦いに参加できる。
ガチャを回した理由は、自分のためだけではない。
自分もみんなの力になりたい一心で、『盾士』の獲得を考えたのだ。
この『ハンドコントローラー』を使って、みんなのサポートだけでなく、敵に必殺の一撃をお見舞いできると考えていたのに…
「まさか、いない職業の専用武器が最高レアリティで排出されるなんてよぉ…たしかにソシャゲじゃ、よくあることだけど…なにもこんな時に…」
打ちひしがれるイノチは、ガチャの結果の確認が途中だったことに気づいて、画面へと目を向けた。
「…まだ金が残っていたっけ。とりあえず結果だけでも確認しようかな…」
弱々しく画面をタップするイノチ。
しかし、画面はなんの反応も示さない。
「あれ?金の結果は…?」
不思議に思ってよくよく画面を確認すると、金の結果はすでに出ていることに気がつく。
「まっ…まさか、落ち込んでる間に終わっちゃった…?」
金の結果には、黒いシルエットが表示されている。
その形状からは何を獲得したのかはわからないため、イノチは詳細ボタンに触れようと、手を伸ばしたその時であった。
「うわぁぁぁぁ!この剣かっこいい♪こっちは盾だ!!キラキラしてるなぁ♪」
「なっ…!?だっ…誰だ!?」
突然、後ろから聞こえた甲高い声に驚いたイノチは、とっさに立ち上がって『ハンドコントローラー』を発動し、相手にそれを向ける。
「あ"あ"っ!!ごめんなさい!驚かしちゃったですかね!」
声の主はそんなイノチに気づいて、焦りながら頭を大きく下げた。軽装の鎧がガチャガチャと鳴り、背負っていた大きめの盾がガチャンッとずり落ちて床に当たる。
「わわわっ!!」
その反動で頭から一回転して、目の前に仰向けに転がった人物に対して、イノチは恐る恐る声をかけた。
「大…丈夫…か?」
「うぅ…痛ててて。ありがとうございます。大丈夫です…が…」
「が…?」
「こうなると盾が重すぎて自分では立ち上がらないんですよぉ~起こしてくれませんかぁ?」
まるでひっくり返ったカナブンのように、両手両足をジタバタさせる彼を見て、イノチは思う。
(かっ…可愛いな…)
「もぉぉぉ!早くお願いしますよぉぉぉ!!」
「はっ!…ごめん!」
そう催促され、イノチは我にかえると手を差し出した。
「ありがとうございます♪よいしょっと…」
その手は小さく、まるで子供のようだった。
起き上がっても、イノチの胸あたりまでしかない背丈。
それでいて、背中には大きな盾を背負っているためか、余計に小さく見えてしまう。
顔立ちは美少年とも美少女とも言えるほど、中性的で整っており、とても可愛らしい。
そして、何より特徴的なのは、銀色の短髪と翡翠色に輝くきれいな瞳である。
その目をパチクリさせてながら、自分を眺めるイノチを見ると、彼は恥ずかしそうにモジモジと自己紹介を始めたのだ。
「あっ…あの…僕はアレックス=アンダーソンって言います。BOSS…ぼっ…僕の顔に…何か…ついてますか?」
「…ん?…いっ…いや!別にそういうわけじゃないんだ!」
(やばいやばい…見惚れてた。BL属性なんて俺にはないはずなのに!…たぶん。)
頬を染め、うるうるとさせる瞳に見惚れていたイノチは、ハッとして頭を振る。
「おっ…俺のことをBOSSって呼ぶってことは、君はもしかして、ガチャから出てきた新しい仲間ってこと?」
「はい!そうです♪職業は『盾士』で、得意なポジションは超前衛です!!攻撃はまったくできませんが、精一杯がんばりますので、よろしくお願いします♪」
その愛くるしい笑顔に心を奪われそうになるイノチだが、なんとか堪えることに成功する。
(なっ…なんて破壊力だ!まるで…心が洗われるような…純粋無垢そのものじゃないか!)
そんなイノチの様子を見て、ニコリとしながら首を傾げるアレックス。
「BOSS~?大丈夫ですか?」
「あ…あぁ、問題ないよ!それより、俺はイノチって言うんだ!これからよろしくな!」
「はい♪よろしくです…っうわぁ!!!」
イノチの言葉に対して、礼儀正しく頭を下げたアレックスは、再び背中に背負った盾の重みで一回転して仰向けに倒れ込んだ。
「アレックスって…もしかして意外とおっちょこちょいなのか…?」
「うわぁぁぁん!ごめんなさい、BOSSぅぅ!」
・
翌日。
目の前のテーブルが、バンッと叩かれる。
「さて、BOSS。洗いざらい全部を説明してもらいましょうか。」
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