ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

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第三章 ランク戦開催

34話 アルコールミッション①

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タカハの街には大きな市場がある。
天ノ神(あまのかみ)市場と呼ばれ、タカハの商業の中心部となる場所であり、各都市からくる商人たちはここで多くの取引を行っている。

もちろん他国の商人も来ていて、各国の特産物はタカハからジパン国内へと出回るのである。


「相変わらず賑わっているよなぁ。」


タケルはあたりを見回しながらそうこぼした。
多くの出店が軒を連ね、たくさんの人が物の売買を行う市場の中央通りをミコトと二人で歩いている。


「この前にも一度来たけどすごい賑わいだよねぇ、ここは。」

「そうだね。ジパンに流通するものの半分がここで取引されてるからね。」

「まさにジパンの台所だね。」


タケルもその言葉に笑顔でうなずいた。


「それで、今日の目的の場所は?」

「この先にある酒屋なんだけど…ほら、見えてきた、あれだ。」


タケルが指差す方に目を向けるミコト。
その視線の先には、普通の酒屋が見えた。


「あれが例の酒屋さん?」

「そう。ユニークモンスターである『八岐大蛇』を呼び起こすには特別なアイテムが必要なんだ。それがあの店で売ってるわけさ。」

「ふ~ん。じゃあ買ったら終わり…というわけでもないんだよね?」


ミコトの言葉にタケルはうなずく。


「イベントアイテムだからね。入手するのにいくつか条件がいるんだ。」

「条件…でもタケルくんは一度手に入れてるんだよね?なら今回も簡単なんじゃない?」

「それが…そうもいかないんだよ。」


タケルは少し面倒くさそうにため息をついた。


「アイテム名は『八塩折酒(やしおりのさけ)』て言ってね、特殊な製法で作られるお酒なんだ。作るのが難しくて入手難易度がかなり高いのさ…」

「『八塩折酒』かぁ…まさに八岐大蛇伝説になぞらえてるって感じだね。でも、そんなレアなアイテムをよく手に入れられたね。」


ミコトの言葉に今度は頭をかいて居心地悪そうにするタケル。


「言いにくいんだけど…その時はちょこっとばっかし、くすねたんだ…ハハハ…」

「ふ~ん。タケルくんて、意外と腹黒いところあるよね。」


笑っているミコトにタケルは少し驚きつつ、不思議に思い問いかける。


「…その反応は予想してなかったな。もう少しこう『それはだめだよ!』とか、怒られると思ってたけど…」

「…私が?」


うなずくタケルにミコトは苦笑いを浮かべた。


「前の私ならそうだったかもしれないよ…でも、この世界ではそんなこと言ってられないもん。」

「…」


うつむくミコトに対してタケルは言葉が出てこない。
しかし、ミコトは話を続ける。


「死にたくない。そのためには戦わないと…強くならないといけない。イノチくんたちといて、ずっとそれを思い知らされてるよ。」

「そうかい…」


ミコトがうつむいたまま立ち止まる。
タケルもそれに合わせて足を止める。

タケルはミコトを見ていてふと思った。
彼女は今、本当の意味で強くなろうとしているのだと。

この世界は怖い。
常に死と隣り合わせだから。

自分は人を殺すことができる。
人も自分を殺すことができる。

だが…

本当に怖いのは、ほとんどのプレイヤーたちがその事実を知らないということ。

ここがゲームだと思い込んでいることが怖いのだとタケルは考えている。

ゲームの中ではPK(プレイヤーキル)なんて言葉があるくらい"命"の重さが軽くなる。

ゲームだから殺したって生き返る。
いや、ゲームだから相手は死なないと思っていること。

それが間違いだということに、誰も気づいていないことが恐ろしいのだ。


「でもね…」


タケルは視線を彼女へ向ける。
ミコトは持っている杖をギュッと握ると、顔を上げて笑顔を見せた。


「イノチくんといると安心できるんだ。あの人は強い人…たぶん、彼は自分の弱さをちゃんと理解しているんだと思う。それを見てると頑張ろうと思える自分がいる。何が正しいのかなんてまだわからないけど…選択を迫られた時に自分が正しいと思えることを選べるようにするんだって…そう思える自分がいるんだよ。」

(イノチくん…君も隅に置けない男だな、まったく。)


その顔を見たタケルは小さく笑った。


「大丈夫さ!ミコトなら正しい選択ができると思うよ。」

「うん!そうできるように頑張るね!」

「よし!気を取り直したところで店に急ごうか。」

「そうだね。あまり時間もないわけだし…ところでさ、今回もちょこっとだけ拝借するのはだめなのかな?」


その言葉にタケルは驚きつつ苦笑いした。


「ミコト…君、考え方がイノチくんに似てきたんじゃない?」

「そっ…そうかな!それができるなら効率的かなって…」


顔を赤らめて笑うミコトに対して、タケルも笑いながら答える。


「確かにそれができれば良いんだけど、今回はそうもいかないんだ。」

「そうなんだね…ちなみに理由を聞いてもいい?」

「もちろん!理由は二つ…一つ目は量の問題だね。」

「量…?」

「そう、量さ。前回は1合分だけ拝借したんだけど…それでも一応、奴は現れた。あとで調べたけど、一滴でも供えたら奴は現れるらしいんだ。」

「そうなの?なら量なんて少しでもいいじゃ…」


タケルは首を横に振る。


「ミコトは八岐大蛇伝説を知ってるんだよね?そのお酒の話を思い出してみてよ。」

「あの話?え~と、あれは確か…『8回醸造したお酒を8つの門を設けてそこに供えさせた』…そっか、大蛇を酔わせるためにたくさんの量が必要ってこと?」

「ほぼ正解かな。『八岐大蛇』イベントの発生条件は『ハ塩折酒』を北にある村の祠に供えること。一滴でも供えたら必ず現れる。だけど、奴は供えた酒の量によって姿を現す時間の長さを変えるんだ。多ければ多いほど永く現れる…」

「倒すための時間を確保するために、たくさんの『八塩折酒』が必要ってことなんだね。」

「うん…だけど、それだけじゃない。」


タケルが突然真面目な表情を浮かべたことに驚くミコト。
しかし、タケルは気にすることなく話を続ける。


「今回は攻略も目的にしている…奴を倒すんだ。そのためにも大量の『八塩折酒』が必要ってこと。理由はさっきミコトが話してくれたでしょ?」

「…酔わせる?」

「そうさ!奴は一定量を超える酒を口にすると、完全なスタン状態になる。これは誰にも知られていない攻略方法なんだ…」


ミコトには、タケルが浮かべる笑みが悪巧みを考える時のイノチの顔に見えて仕方なかった。

気づけば二人は酒屋の前まで来ており、タケルは暖簾をくぐると、障子に大きく『酒』と書かれた引き戸を開いた。


「親父!いるかい!!」


元気よく楽しげに張り上げたタケルの声に、店の奥から「あいよぉ」と太い声が聞こえてきた。

そして、小さな暖簾をくぐり、奥から一人の男が顔を出した。

ミコトはその顔を見て驚いた。
それはある人の顔にそっくりだったから。


「アッ…アキンド…さ…ん?」


ミコトの言葉を聞くと、男はニンマリと笑うのであった。
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