Cross Navi Re:〜運命の交差〜

noah太郎

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第三章 交差する物語

1-2 学べ恋心

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「よぉ、やっと来たか!」


春樹たちが研究所の一室に着くと、白髪眼鏡の男性が声をかけてきた。


「遅くなってすみません。」


春樹はそう言って、持っていた紙袋を机の上に置く。


「シーポッケの缶詰が中々見つからなくて。気づいたら、街の外れの商店まで行ってましたよ。」


春樹は紙袋の中から、缶詰を一つ取り出すと、白髪眼鏡の男性に放り投げる。


「ぐはははは!サンキューサンキュー!やはり、徹夜明けにはこれだよこれ!」


白髪の男性は、缶詰をキャッチしてそう言うと、そのまま奥へと消えていった。


「…相変わらずですね。」


横にいたカレンは、少し呆れた様にぼそりと呟き、春樹はそれを聞いて、くすりと笑う。


「あれでも、この国一番の研究者だからね。」


カレンはそれを聞いて、ため息をついた。
彼のことでカレンがため息をつくのは、これが初めてではない。なぜなら、彼と彼女は親戚だから。

それも、叔父と姪である。
だからこそのため息なのだ。


「まぁまぁ。カレンはそう感じるだろうけど、研究している時の叔父さんは、かっこいいと思うよ。」

「そうかもしれないですけど、ハルキは家にいる時の叔父を知らないからそんなこと言えるんです…だらしなさの化身なのですから。あの人は!」


カレンはそう言うと、口をプクッと膨らませて、腕を組んでそっぽを向いた。


「ハハハ…。でもあの人がいなかったら、国の発展もなかったんだし、すごい人だと思うよ。あの人は…。」


春樹のその言葉に、カレンは再びため息をつく。

ミズガルにおいて文明の発展を爆発的に加速させた技術を、ベンソン氏が開発した。
それは魔回路と呼ばれ、今やミズガル国内で動く全てのオトマに組み込まれており、オトマは人々の生活に欠かせない技術なのだ。

そして、ベンソン氏は、この魔回路を開発した研究者として、国から英雄章を受章している。

しかし、研究者としての活動には、莫大な資金が必要となるのは言うまでもない。一時のベンソン氏は、資金もなく研究もままならない貧乏研究者であった。

しかし、魔回路の価値を見出し、資金面でカバーし、研究の一助となったのが、カレンの父であるアルバートであった。

ベンソンの兄であるアルバートが、資金面で彼を援助し、ベンソンは研究を成功させた。この兄弟の成功譚は、国中では有名な話だった。


「あの人はそろそろ、身を固めてちゃんとすべきなんです。」


カレンは憤りを隠さずに、そう話す。
そんな彼女に、春樹は笑いながら声をかけた。

「カレンはベンソンさんの事が心配なんだね!」

「ちっ、違っ…!」


顔を赤くして、否定しようとするカレンに対して、春樹は笑いながら話を続ける。


「まぁまぁ、そう言わず。ベンソンさんもいろいろ考えてるんだと思うよ。あれでいて繊細なところあるしね。」

「そうだといいんですけど…。それよりです!」


カレンは少し不満げにこぼしたが、すぐに切り替えて春樹に問いかける。


「ハルキは今日、お休みのはず!何で研究所に来てるんですか?!」

「え?だって家にいてもやることないし…」

「そうではなくって!もう!」


再びプクッと頬を膨らませて、カレンは腕を組む。明らかに怒っている様子のカレンに、春樹は疑問を浮かべている。


「どうしたんだよ。何をそんなに怒って…」

「怒ります!普通は!」


春樹の言葉を遮り、ビシッと指をさしてカレンは春樹へと物申す。両手を上げて、春樹は降参のポーズをとり、カレンにその理由を問いかける。

周りにいた研究員たちも、立ち止まって2人の行く末をニヤニヤと見守って?いる。


「ハハハッ…、どうして怒っているか教えてもらえますか…?」

「本当に覚えてないんですね…。」


カレンの目に涙が浮かび始める。春樹はそれに動揺し、焦り始める。


「えっと…!とりあえず、ごめんなさい!俺、なんか約束してたっけ????」

「…もういいです。グスッ」


どうにかカレンを泣かすまいとしている春樹に向かって、様子を見ていたベンソンが、離れたところから声をかける。


「がははははッ。カレン!ハルキはそういう奴だぞ!研究以外には興味ない奴だからな!」


それを聞いた瞬間、涙目ながらにキッと鋭い視線をベンソンへ投げかけ、カレンは声を荒げる。


「叔父さんが言える立場でないでしょう!黙っていてください!」


痛いところを突かれ、目が点になったベンソンは、スゥッと別部屋へ消えていった。
そんなベンソンを見送った春樹は、気を取り直し、カレンとした約束を思い出そうと試みる。


(まずいなぁ。何の約束したんだっけ…)
(全然思い出せないや…)
(カレン、めっちゃ怒ってるなぁ…)


春樹が頭を下げて努力していると、カレンが大きくため息を吐き出して、口を開いた。


「今日はお父様の誕生日プレゼントを選ぶのに、付き合ってくれる約束でした…。」

「あっ…。」


春樹はそれを聞いて、全てを思い出す。


(そうだった!!アルバートさんのプレゼントを一緒に買いに行こうって、この前カレンに言われてたんだっけ!)


恐る恐る顔を上げる春樹。
目の前には、気丈な表情を保ちながらも、今にも泣き出しそうな顔をしているカレンが立っている。


「カレン!ごめん!すっかり忘れてました!今からでも遅くないのなら!」


春樹は両手を合わせて、必死の謝罪を試みる。そんな春樹に対して、カレンは涙目のまま、小さく呟く。


「約束の時間になっても家には来ないし…」


下を向いて、丈が膝上ほどのスカートを両手で握り、カレンは肩を震わせている。


ずっと家で待っていてもこないから、研究所に来てみたら、お使いに行ったと聞かされ…」


カレンを中心に、周りにあるものがカタカタと音を発し始めた。
春樹は今まで感じたことがないほど、背筋に冷たいものが伝うのを感じる。


「商店街を探してもどこにもいなくて…」


いつの間にか周りにいた研究員たちも、少し離れた位置にまで移動して、怯えたように2人を見ている。春樹はカレンから白いオーラの様なものが広がっているのを感じとる。


「やっと見つけたと思えば、約束は忘れていて…」


異変に気付いて戻ってきたベンソンが、大声で叫ぶ。


「お前らぁぁぁ!早く逃げろぉぉ!」


すでに台風の様に風が吹き荒れている室内。ベンソンの声を聞いた研究員たちは、一目散に逃げ出すが、一緒に逃げようとする春樹にベンソンが言い放つ。


「ハルキィィィ!お前はだめだぁぁぁ!」

「なっ!?なんでだよぉぉ!」

「元はと言えば、お前が約束をすっぽかしたのが原因じゃねぇかぁ!責任とれよぉ!」


ベンソンはそう言って、手をあげてサムズアップすると、最後の研究員と共に隠れてしまった。


「ベンソンさっ!嘘だろぉ!カッ、カレン!本当にごめんって!この通りだ!謝る!謝るから!」


すでにカレンは自分の世界に入ってしまい、春樹の声は聞こえていない。ボソボソと何かを呟いている。


「カッ、カレンってこんな…こんな力を隠してたの…痛っ!」


飛んできたフラスコが春樹の頭を直撃する。


(これは…非常にまずいのでは…)


一瞬、やはり逃げようという思いが、頭をよぎるが、カレンのことを見て春樹は考え直す。


(いや…だめだよな!もう逃げないって決めたんだし!)


ちょっと意味は違う気もするが、春樹はそう気を引き締め直して、カレンに向き直る。


そして…





「説明を願おうか。2人とも。」


研究所の隣にあるカレンの父アルバートの事務所。デスクにはパイプを加えたオールバックの紳士が座っている。

デスクの前には、春樹とカレンが立っているが、カレンは俯き、春樹は傷だらけの顔をアルバートに向けている。


「すみません…」
「ごめんなさい…」


2人の言葉に、アルバートは大きくため息を吐き出す。
すると、部屋の外から大きな笑い声が聞こえて来る。


「がははははは!入るぜ、兄貴!」


バンッと大きな音を立てて、ベンソンが入ってきた。


「なんだ、ベンソン。今は取り込み中だぞ。」


アルバートはそう告げるが、ベンソンは春樹たちの横に立って、アルバートへと言い放った。


「研究所の事は安心していいぜ!もう全部修復は終わっちまったぁ!研究にも支障は全くない!」

「しかしなぁ…」


まだ納得できないといった様子のアルバートを、遮る様にベンソンが続ける。


「元貧乏研究者を舐めるなよ!それに、こうやってハルキの時間を奪う事の方が、この国にとっても損だと思うがな!」

「…ふ。お前にしてはごもっともな意見だな。わかった。ベンソンと研究員たちに免じて、不問としよう。」


その言葉を聞いて、ベンソンは春樹とカレンの背中をポンッと叩く。2人はベンソンの方を向くと、彼はガハハハっと笑っている。

後には、ベンソンの大きな笑い声が響き渡るのであった。
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