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序章 Let's talk about justice

10ターン目/魔王城と最終決戦

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 魔王軍七武将/魔剣公ヴァシレウス撃破により勢い付いた連合軍は、その後も勇者パーティーを前衛に次々と他の魔王軍七武将を打ち破っていく。

 嵐戦空中要塞/天空貴族ガルガダ
 環境異常生命体/蠢く森ウォールモート
 道楽漫遊都市/道化王バル=マスケ
 氷獄冥界墓跡/殺戮女神ネヒュテュス
 暗黒海底船城/星の落とし児シャークダノア

 勇者タローたちは、各支配領域ダンジョン仕掛けギミックに応じた戦術を展開し、人間界の総力を注ぎこんで強敵たちを各個撃破。

 ついには、魔王軍の本拠地である“魔王城”の座標をも突き止め、連合軍たちは最後の侵攻作戦を展開する。
 対して、防衛を固める魔王軍の精鋭たち。
 そして、勇者パーティーの行く手を阻むのは、魔王軍七武将がひとり。

 最後の生き残りにして、
 最初の相対者/醜悪なるアグリー。

「げひゃひゃひゃ、待っていたぜ!勇者タロー」
 アグリーは、以前とは違い全身が真っ白なカラーリング。なんでも自身の肉体に様々な改造を施したのだという。
「これが俺様、醜悪なるアグリーの真骨頂!」
 彼は魔力を総動員させ、その力を解放する。

 肉体が肥大化し、変容する。
 それは、嵌合体・・・

 つまりは、混沌獣キメラだ。

 アグリーはまるで枝や根が幾重にも絡まる大樹のように。
 否、それはまるで出鱈目に繋ぎ合わせた森や街のような無作為さで、様々な魔物の特徴を表出させる。
 それは最早、原形を留めることもなく、まさに醜悪なる怪物として、無定形のまま、勇者パーティーに立ち塞がる。

「決着をつけるぞ!人間共!!」
 老若男女の混声が、彼等の耳を嬲りつける。

 ◆◆◆

 醜悪なるアグリーは、その混沌とした肉体から無尽蔵に魔物を産み出していく。
 その魔物たちもまた、混沌獣キメラであり、創造主たるアグリーと同程度には醜悪な見た目を弄していた。

 タローたちは、押し寄せるこの醜き魔物の軍勢を迎撃する。

「くっ、キリがない…………っ!」
 飛鳥は忌々しそうに吐露する。

 千軍万馬。いくら斬り伏せても斬り伏せても一向に軍勢は増え続け、その根源であるアグリーに辿り着けそうな気配をまるで感じられない。
 混沌獣キメラたちは、さながら“肉の壁”。
 その防衛力は破格であり、勇者パーティーをはじめ、連合軍所属の冒険者や騎士などの精鋭たちの力を持ってしても、それを突破するのは困難を究めていた。
 
「勇者たちに援護を!」
 リアルタイムで全体の戦況を、魔法使いたちが構築したモニターで確認していたエルザ姫が号令を出す。
 決して他の戦場も容易な戦況ではなかった。
 しかし、勇者パーティーたちがぶつかっている“醜悪なるアグリー”を突破できなければ、これ以上の進軍は不可能だ。

 王手。魔王の元まであと一歩。
 ここで勝たなければ、人類に未来はない。
 連合軍は勝負に出た。

「応援が来たで!」
 ハッカイの感嘆と共に、瞬く間にに遠距離支援攻撃が勇者パーティーたちを援護する。
 それらは醜き魔物たちを一掃し、続いて近接戦闘型の兵士たちが後詰めに参入する。

「総員。ここは一点集中突破で行きましょう」
 グリフィンがありったけの攻撃魔法を“肉の壁”にぶつけながら勇者パーティーに告げる。

 タロー。飛鳥。グリフィン。ハッカイ。
 そしてホグワーツ。

 彼等は一点に集まり、そしてそれぞれの必殺技を繰り出す。

「すべての生命いのちに祝福を!我等は汝の愛しき子にして汝の盾!全生命息吹テトラグラマトン!!」
 ▼医療魔術師グリフィンは 呪文を唱えた!
 刹那、連合軍兵士たちは皆一斉に全回復が施される。


 ▼勇者パーティーは 必殺技を繰り出した!
色即是空しきそくぜくう天壤無窮剣てんじょうむきゅうけん!」
「両儀四象八卦・黄帝龍ファンディーロン!」
全属性混彩合一魔砲セフィロトブラスト!」
超勇者形態ちょうゆうしゃモード!―――神撃鳥ゴッドフェニックス!」

 四つの必殺技は、魔物の群れを一気に吹き飛ばす。
 爆砕。穿たれた道程は、わずかな一路を切り開いた。

「行くぞ!」
 勇者タローたちは一斉に走り出した。

 かくして、アグリー本体に辿り着いた勇者パーティーは力の限り好き勝手に暴れまくり、総攻撃フルボッコ
 蘇生と増殖を際限なく繰り返す“醜悪なるアグリー”だったが、勇者タローが核となる部分を発見し、これを破壊することでアグリーの自壊が急速にはじまった。

「ば、馬鹿な!すべての魔物の力を手に入れたこの俺様が…………馬鹿なァァァア!!!?」

 醜悪なるアグリー、撃破。
 これにより、すべての魔王軍七武将が連合軍の手により討伐された。
 この吉報は瞬く間に、魔王城で戦闘を行うすべての連合軍兵士に伝播し、彼等の士気を大いに沸かせることとなる。

「これであとは魔王だけだ………!」
 誰しもが、そう思っていた。
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