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破章の壱 How to Stop Worrying and Start Living
26ターン目/変わったのはオマエらだ
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「ハッカイ!?」
かつての旧友の登場に、無意識にグリフィンは叫んでいた。
【解放戦線】一同、戦慄。
まさかこんな早期に大将自らが前線に出陣するなど、誰が予想しただろうか。
否。そうではない。
【解放戦線】の古参構成員は皆、知っている。
眼前のハッカイも、
まだ見ぬ飛鳥もまた、
果敢に前に出ていく勇猛な戦士たちだった。
狂奔。猪突猛進。
ガンガン行こうぜ!
【勇者パーティー】とは、そういう命知らずの集まりだった。
彼等は、いつだって攻撃特化。
脳筋プレイヤーであり、今回の行動は必然だ。
しかし、【解放戦線】は未だ信じたくなかったのだ。
かつての仲間が。
かつての同志が。
自分たちの旗印であるエルザ姫を抹殺しに来る現実を、受け入れたくなかったのだ。
「よォ、久しぶりやな。
まさかグリフィンまでノコノコと出張ってくるとは。なんや、静かに暮らしたかったんちゃうんかいな?」
黒装束を纏ったハッカイは馴れ馴れしくも、憤りを混じえた様子でかつての旧友へ語りかける。
「ハッカイ、なぜこんなことをする!?」
グリフィンもまた、憤怒していた。
「 【解放戦線】には連合軍時代の仲間たちもいるじゃないか!!? なぜ彼等にこんな非道なことができるんだ!!!」
「阿保。決まっとるやないか」
呆れた様子でハッカイは応える。
「――――それが仕事やからや」
そのあまりにも偽りのない冷徹な言葉にグリフィンは躊躇し、言葉を失ってしまう。
「そんな理由で………。キミは、何がキミをそこまで変えてしまったんだッ………!?」
「ド阿保。わいが変わったんやない。変わったんわ、世界と時代やろがい」
ハッカイは私見を述べる。
「魔王城の最終決戦。連合軍の敗北を期に世界は変わってしまったんや。異世界転生者/ブラックCEOが巻き起こした“人類文明の大変革”はそれまでに培われた旧文明の価値観をブッ壊し、文明を豊かにした」
「しかし、その影では虐げられている民たちが大勢居ます」
エルザ姫は反論する。
「資金力で決定される極端な階級社会。魔解炉送りをはじめとする非人道的な政策。株式会社ダークネスにより展開される徹底された監視社会と、強制解決による弾圧。これらを到底看過することはできません」
「そりゃ、努力が足りへんからちゃうん?」
そんな彼女の言葉を、ハッカイは一蹴する。
「今の社会は報酬制度を採用してんねん。
成果主義。結果論。
生まれや出自は関係あらへん。
やりようによっていくらでも成り上がれる時代や。あんたら王族や貴族がデカい顔して肩ァ切ってた時代とは違う。
そりゃ、努力が足りへんからやろ?」
「誰しもが同じように努力できるわけではありません。
だからこそ、すべての方々が人として最低限の生活を送れるように計らうのが政治の務め。
基本的人権の尊重。人間は皆、生まれながらにして平等なのですから」
「それを不平等っちゅーんや。なんで努力もできん能無しのために、努力してる連中がリカバリーせないかんねん。もう正直者が馬鹿を見る時代は終わったんや」
ハッカイは、明らかな苛立ちを募らせる。
「あんたのことは率直に尊敬しとるし、人としても普通に好感を持ってる。
いろいろと世話になった思うてるし、わいも鬼やない。それなりの人情を持ち合わせとるつまりや。
だが、人は神やない。
すべての人を救おうなんて物理的に不可能や。誰かの幸福は誰かの不幸。それがほんまの平等や。わいはその不幸を自分の身内に降りかからんようこれまで闘ってきた。
そして、これからも―――――」
その眼光に、研ぎ澄まされた鋭利な覚悟が灯る。
「あんたは綺麗事が過ぎる。それは利己的やで。
人には時代に適した生き方っちゅーのがある。それが出来ひんのやったら不当な扱いを受けてもしょうがないやろ?
ましてや、【解放戦線】はテロリスト。変わったんはわいやあらへん。
世界と時代。そして、それに適合出来んかったあんたらや。姫はん」
「ハッカイ………」
グリフィンはやりきれない思いで、再度友の名を呼ぶ。
矢面に立たされたエルザ姫も。
彼女に仕える【解放戦線】たちもまた、悲痛な面持ちを浮かべていた。
「そーゆーワケや。悪いな」
ふと、ハッカイは眉尻を下げる。
罪悪感と懺悔の色が確かに混在した慈悲深げな苦笑。
「………恨んでくれてかまわん。往生してくれ」
かつての旧友の登場に、無意識にグリフィンは叫んでいた。
【解放戦線】一同、戦慄。
まさかこんな早期に大将自らが前線に出陣するなど、誰が予想しただろうか。
否。そうではない。
【解放戦線】の古参構成員は皆、知っている。
眼前のハッカイも、
まだ見ぬ飛鳥もまた、
果敢に前に出ていく勇猛な戦士たちだった。
狂奔。猪突猛進。
ガンガン行こうぜ!
【勇者パーティー】とは、そういう命知らずの集まりだった。
彼等は、いつだって攻撃特化。
脳筋プレイヤーであり、今回の行動は必然だ。
しかし、【解放戦線】は未だ信じたくなかったのだ。
かつての仲間が。
かつての同志が。
自分たちの旗印であるエルザ姫を抹殺しに来る現実を、受け入れたくなかったのだ。
「よォ、久しぶりやな。
まさかグリフィンまでノコノコと出張ってくるとは。なんや、静かに暮らしたかったんちゃうんかいな?」
黒装束を纏ったハッカイは馴れ馴れしくも、憤りを混じえた様子でかつての旧友へ語りかける。
「ハッカイ、なぜこんなことをする!?」
グリフィンもまた、憤怒していた。
「 【解放戦線】には連合軍時代の仲間たちもいるじゃないか!!? なぜ彼等にこんな非道なことができるんだ!!!」
「阿保。決まっとるやないか」
呆れた様子でハッカイは応える。
「――――それが仕事やからや」
そのあまりにも偽りのない冷徹な言葉にグリフィンは躊躇し、言葉を失ってしまう。
「そんな理由で………。キミは、何がキミをそこまで変えてしまったんだッ………!?」
「ド阿保。わいが変わったんやない。変わったんわ、世界と時代やろがい」
ハッカイは私見を述べる。
「魔王城の最終決戦。連合軍の敗北を期に世界は変わってしまったんや。異世界転生者/ブラックCEOが巻き起こした“人類文明の大変革”はそれまでに培われた旧文明の価値観をブッ壊し、文明を豊かにした」
「しかし、その影では虐げられている民たちが大勢居ます」
エルザ姫は反論する。
「資金力で決定される極端な階級社会。魔解炉送りをはじめとする非人道的な政策。株式会社ダークネスにより展開される徹底された監視社会と、強制解決による弾圧。これらを到底看過することはできません」
「そりゃ、努力が足りへんからちゃうん?」
そんな彼女の言葉を、ハッカイは一蹴する。
「今の社会は報酬制度を採用してんねん。
成果主義。結果論。
生まれや出自は関係あらへん。
やりようによっていくらでも成り上がれる時代や。あんたら王族や貴族がデカい顔して肩ァ切ってた時代とは違う。
そりゃ、努力が足りへんからやろ?」
「誰しもが同じように努力できるわけではありません。
だからこそ、すべての方々が人として最低限の生活を送れるように計らうのが政治の務め。
基本的人権の尊重。人間は皆、生まれながらにして平等なのですから」
「それを不平等っちゅーんや。なんで努力もできん能無しのために、努力してる連中がリカバリーせないかんねん。もう正直者が馬鹿を見る時代は終わったんや」
ハッカイは、明らかな苛立ちを募らせる。
「あんたのことは率直に尊敬しとるし、人としても普通に好感を持ってる。
いろいろと世話になった思うてるし、わいも鬼やない。それなりの人情を持ち合わせとるつまりや。
だが、人は神やない。
すべての人を救おうなんて物理的に不可能や。誰かの幸福は誰かの不幸。それがほんまの平等や。わいはその不幸を自分の身内に降りかからんようこれまで闘ってきた。
そして、これからも―――――」
その眼光に、研ぎ澄まされた鋭利な覚悟が灯る。
「あんたは綺麗事が過ぎる。それは利己的やで。
人には時代に適した生き方っちゅーのがある。それが出来ひんのやったら不当な扱いを受けてもしょうがないやろ?
ましてや、【解放戦線】はテロリスト。変わったんはわいやあらへん。
世界と時代。そして、それに適合出来んかったあんたらや。姫はん」
「ハッカイ………」
グリフィンはやりきれない思いで、再度友の名を呼ぶ。
矢面に立たされたエルザ姫も。
彼女に仕える【解放戦線】たちもまた、悲痛な面持ちを浮かべていた。
「そーゆーワケや。悪いな」
ふと、ハッカイは眉尻を下げる。
罪悪感と懺悔の色が確かに混在した慈悲深げな苦笑。
「………恨んでくれてかまわん。往生してくれ」
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