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第2章 借金返済こそが魔王討伐への近道
二十一話 緊急クエスト『亡者の行進』
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広場にある程度の人数が集合すると、ギルド嬢からの説明が入る。
「今回は冒険者の皆様にお集まりいただきありがとうございます。時間もありませんので、早速ですが緊急クエストの概要についてお話しさせて頂きます。皆様に討伐していただくのは、アンデッドという種族の魔物…………通称『デズ』が対象となっています。例年通りであれば『デズ』の総大将である『ペムス』を倒せば、進行を食い止めることが出来るはずです…………しかし、気になる点といたしましては『デズ』の他にも新種のアンデッドが紛れ込んでいるらしいので、くれぐれも気を引き締めて臨むようにしてください。では、健闘を祈ります」
ギルド嬢の説明が終わると、冒険者が一同に走り出した。
荒ぶる男どもの群れをかいくぐりながら、なんとか踏みつぶされないように端っこの方に逃げることに成功した。
「はぁはぁ。魔物と戦う前に死ぬところだった…………」
「さすが、年に一回のイベントなだけあるわね。いつもは優しい顔している酒屋のおじさんも人が変わったみたいに怖いわ」
「それだけ、皆さんゴルドが欲しいんですね」
「『始まりの街』にいる人は貧乏人が多いからね。ゴルドが底を尽きて、放浪する人も珍しくないんだよ」
「なんだか、世知辛い世の中だな…………」
異世界に来ているはずなのに、俺のいた世界とさほど変わらないのはなぜなんだろうか。
「うっしゃ! やってやるぜ」
「今年こそは『アンデッドマスター』の称号を手に入れてやるっ!」
血の気の多い冒険者が一斉に声を挙げて、士気を高めていた。
緊急クエストは『デズ』を一体討伐するごとに、1万ゴルド。
大将の『ペムス』を討伐できれば、100万ゴルドも手に入る。
借金まみれの俺たち以外にも、ゴルドに困っている冒険者は数え切れないほどいるので、本気になるのも当然のことだ。
「さーて、どうやって戦いましょうかね…………」
「ハルトくんはレベルも低いし『デズ』を討伐できるかも怪しいところだけど…………」
「えっ。初心者にも優しいイベントとかじゃないの?」
「毎年、数百人は教会送りになっているからそんなに甘いクエストではないよ? 推奨レベルは30~40くらいだったかな…………」
現在、俺のレベルは8。
無謀にもほどがあるレベル不足に、思わずため息をついた。
「…………ならお前たちだけで頑張ってくれ…………夕飯の支度をしとくから、暗くなる前には帰って来いよ?」
「私、晩御飯はカレーがいいですっ!」
「私のには、いっぱいお肉を入れておいてね? 人参とか玉ねぎは溶けるくらい煮込むのよ?」
一端の転生者として、こんな屈辱はない。
仲間の為に炊事をしてお留守番の冒険者が今までにいただろうか。
軽く下唇を嚙みしめながら、涙をぐっとこらえる。
「いやいや、帰っちゃだめだよね? 僕たちと一緒に戦うべきだよ。出来る限りのサポートはしてあげるからさ…………」
「でも、俺はレベルが足りないし、武器も『ダガーナイフ』しかない…………」
ちなみに『ダガーナイフ』は誰でも使いやすいをモットーに作られた万能の短剣。
初心者特化ゾーンに置かれていたので、買ってみたはいいが、ゴブリン相手にまるで歯が立たなかったので、腰に差し込んであるだけのアクセサリーみたいになっていた。
「大丈夫よ。どんな武器を使っても、ハルトに使いこなせる武器の方が少ないんだからっ! 戦いは私たちに任せて、そこら辺の木陰で休んでなさい」
「俺のことを励ましたいのか、貶したいのか、そんなことはどうでもいい…………俺に出来ることがあったら言ってくれ。一応はお前らのリーダーなんだし…………こういう時こそ、頼ってほしい」
「「「…………」」」
珍しく良いこと言ったみたいな、ポカンとするのはやめてくれ。
かっこつけた自分が恥ずかしくなる。
だんだんと熱くなる顔を両手で隠して、地面に座り込む。
「…………それでは、お言葉に甘えて…………」
そう言って、ブラウスは俺にスキルを使った。
「…………おいブラウス。俺に、何をした?」
「アンデッドを私たちが行く前に狩り尽くされては意味がないですからね。戦えないなら他の方法を考えるまで…………また、お願いしますね?」
それは、ゴブリン討伐の時と同じユニークスキル。
効果は至ってシンプルな囮役製造スキル。
「まてまて。あのスキルはランダムにしか使えないはずじゃ…………」
「実はですね…………マチモチを大量に討伐した際に、ユニークスキルの効果が変更されまして、ランダムではなく、自分で選んで使えるようになったんです」
「…………ってことは?」
「ここから見える数で言うと…………ざっと、五十体ほどは襲ってくるかな?」
「私も心苦しいですが、ハルトさんがどうしてもお役に立ちたいと申していたので」
「安心しなさい? 私の支援魔法で足腰が軽くなるスキルがあったはずよ」
「魔法ポイントが無くなるくらい、存分にぶっかけてくれ…………」
まともな戦いをせずに、逃げてばっかりの戦闘スタイル。
拝啓、学校にいる同級生ども。
悪魔も嫌気が差すほどの、青空の下で、アンデッドから死に物狂いで逃げています。
捕まったら即退場。
どんなゲームよりもハラハラさせられながら、走り続ける。
「こんちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………っ!」
俺が必死に逃げている姿を遠目で馬鹿笑いしているイルカを見逃さない。
…………今度、ぶどう酒に下剤を入れてやる。
「今回は冒険者の皆様にお集まりいただきありがとうございます。時間もありませんので、早速ですが緊急クエストの概要についてお話しさせて頂きます。皆様に討伐していただくのは、アンデッドという種族の魔物…………通称『デズ』が対象となっています。例年通りであれば『デズ』の総大将である『ペムス』を倒せば、進行を食い止めることが出来るはずです…………しかし、気になる点といたしましては『デズ』の他にも新種のアンデッドが紛れ込んでいるらしいので、くれぐれも気を引き締めて臨むようにしてください。では、健闘を祈ります」
ギルド嬢の説明が終わると、冒険者が一同に走り出した。
荒ぶる男どもの群れをかいくぐりながら、なんとか踏みつぶされないように端っこの方に逃げることに成功した。
「はぁはぁ。魔物と戦う前に死ぬところだった…………」
「さすが、年に一回のイベントなだけあるわね。いつもは優しい顔している酒屋のおじさんも人が変わったみたいに怖いわ」
「それだけ、皆さんゴルドが欲しいんですね」
「『始まりの街』にいる人は貧乏人が多いからね。ゴルドが底を尽きて、放浪する人も珍しくないんだよ」
「なんだか、世知辛い世の中だな…………」
異世界に来ているはずなのに、俺のいた世界とさほど変わらないのはなぜなんだろうか。
「うっしゃ! やってやるぜ」
「今年こそは『アンデッドマスター』の称号を手に入れてやるっ!」
血の気の多い冒険者が一斉に声を挙げて、士気を高めていた。
緊急クエストは『デズ』を一体討伐するごとに、1万ゴルド。
大将の『ペムス』を討伐できれば、100万ゴルドも手に入る。
借金まみれの俺たち以外にも、ゴルドに困っている冒険者は数え切れないほどいるので、本気になるのも当然のことだ。
「さーて、どうやって戦いましょうかね…………」
「ハルトくんはレベルも低いし『デズ』を討伐できるかも怪しいところだけど…………」
「えっ。初心者にも優しいイベントとかじゃないの?」
「毎年、数百人は教会送りになっているからそんなに甘いクエストではないよ? 推奨レベルは30~40くらいだったかな…………」
現在、俺のレベルは8。
無謀にもほどがあるレベル不足に、思わずため息をついた。
「…………ならお前たちだけで頑張ってくれ…………夕飯の支度をしとくから、暗くなる前には帰って来いよ?」
「私、晩御飯はカレーがいいですっ!」
「私のには、いっぱいお肉を入れておいてね? 人参とか玉ねぎは溶けるくらい煮込むのよ?」
一端の転生者として、こんな屈辱はない。
仲間の為に炊事をしてお留守番の冒険者が今までにいただろうか。
軽く下唇を嚙みしめながら、涙をぐっとこらえる。
「いやいや、帰っちゃだめだよね? 僕たちと一緒に戦うべきだよ。出来る限りのサポートはしてあげるからさ…………」
「でも、俺はレベルが足りないし、武器も『ダガーナイフ』しかない…………」
ちなみに『ダガーナイフ』は誰でも使いやすいをモットーに作られた万能の短剣。
初心者特化ゾーンに置かれていたので、買ってみたはいいが、ゴブリン相手にまるで歯が立たなかったので、腰に差し込んであるだけのアクセサリーみたいになっていた。
「大丈夫よ。どんな武器を使っても、ハルトに使いこなせる武器の方が少ないんだからっ! 戦いは私たちに任せて、そこら辺の木陰で休んでなさい」
「俺のことを励ましたいのか、貶したいのか、そんなことはどうでもいい…………俺に出来ることがあったら言ってくれ。一応はお前らのリーダーなんだし…………こういう時こそ、頼ってほしい」
「「「…………」」」
珍しく良いこと言ったみたいな、ポカンとするのはやめてくれ。
かっこつけた自分が恥ずかしくなる。
だんだんと熱くなる顔を両手で隠して、地面に座り込む。
「…………それでは、お言葉に甘えて…………」
そう言って、ブラウスは俺にスキルを使った。
「…………おいブラウス。俺に、何をした?」
「アンデッドを私たちが行く前に狩り尽くされては意味がないですからね。戦えないなら他の方法を考えるまで…………また、お願いしますね?」
それは、ゴブリン討伐の時と同じユニークスキル。
効果は至ってシンプルな囮役製造スキル。
「まてまて。あのスキルはランダムにしか使えないはずじゃ…………」
「実はですね…………マチモチを大量に討伐した際に、ユニークスキルの効果が変更されまして、ランダムではなく、自分で選んで使えるようになったんです」
「…………ってことは?」
「ここから見える数で言うと…………ざっと、五十体ほどは襲ってくるかな?」
「私も心苦しいですが、ハルトさんがどうしてもお役に立ちたいと申していたので」
「安心しなさい? 私の支援魔法で足腰が軽くなるスキルがあったはずよ」
「魔法ポイントが無くなるくらい、存分にぶっかけてくれ…………」
まともな戦いをせずに、逃げてばっかりの戦闘スタイル。
拝啓、学校にいる同級生ども。
悪魔も嫌気が差すほどの、青空の下で、アンデッドから死に物狂いで逃げています。
捕まったら即退場。
どんなゲームよりもハラハラさせられながら、走り続ける。
「こんちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………っ!」
俺が必死に逃げている姿を遠目で馬鹿笑いしているイルカを見逃さない。
…………今度、ぶどう酒に下剤を入れてやる。
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