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第1章
変わらない
しおりを挟む「もちろん隠れて付き合ってたんだけど、誰かにそれ撮られてばらまかれた」
「じゃあレイプなんかじゃないじゃん...!」
「その動画が問題になったとき、教師が生徒に手出したんだとまずいから、ムリヤリやられたって言い訳したらしい。それで俺は退学ってわけ」
「そんな......」
「ひでぇな...」
佐々井も佐倉も顔をしかめるから、つい苦笑いする。
「俺、その人のこと結構好きだったから、その人が先生辞めさせられたり責められたりするほうが辛かったかも。ちゃんと先生続けられてるみたいだし、良かったよ」
「それでお前捨てられたのかよ。この女は自分の身守るためにタクのこと裏切ったんだろ。なんで良かったなんて言えるんだよ」
「それはちょっとした罰かなぁって」
怪訝そうな顔をする二人の方を見て、自嘲気味に笑う。
「先生との関係隠すために、来るもの拒まずで気持ちもないのに付き合ったりしてた。それなりに彼女たちのこと傷つけてたと思う。だから、他人の向けてくれる好意を利用した罰」
「............」
「ね?だから疑いなよって言ったんだ。俺、わりとクズだったでしょ」
「それは違うよっ...」
「佐々井......?」
「タクはその先生のことほんとに好きだったんでしょ?なんとしても守りたかったんでしょ?だからその人との関係の責任全部背負ったんでしょ?それって......それって、俺らの知ってるバカみたいに真っ直ぐなタクのまんまじゃん!」
「......まぁタクらしいっちゃタクらしいな」
自分の耳が信じられなくて、しばらくなにも言えずに固まってしまった。ようやく絞り出した声は微かに震える。
「二人とも、ほんと......変なの」
軽蔑されて、見捨てられるかもしれないなんて杞憂だったってことか...
父親が勝手に権力振りかざして入学させられた高校だったが、来て良かったかもしれないと思う。
こいつら、大事にしなきゃなぁ
「...ありがと。ちょっとだけ感動した」
「...ちょっとかよ」
ウソ。めちゃくちゃ感謝してる。
「お菓子一年分くらい感謝してくれてもいーよ」
「太るよ」
「ひどっ...」
空気が一気に柔らかくなったことに安堵する。こんなに居心地のいい居場所をくれる人はきっと他にはいないだろう。
「それで、この動画どうするよ」
佐倉が携帯の画面を指でトントンと叩く。
「消すことはできると思うけど、どうせコピー出回るだろうな」
それに消したとして、理久がそれで終わりにしてくれるとは思えない。
あれ、でも俺最近真生先輩に会ってない......
そう思った途端に、動画よりも真生のことが気になり出した。
「とりあえず動画は放っておくよ。周りの反応もそのうち収まるだろうし」
「今はそれしかない、か...」
佐倉が悔しそうに唇を噛む。大丈夫だから、と笑ってみせたが、頭のなかはすでに真生のことでいっぱいだった。
真生先輩、放課後なにしてんだろ...
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