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第1話 いきなり追放って…どうなの?
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―拝啓父さん、母さん。
あなた達の息子、俺こと葉山与人《はやまよひと》は今異世界にいます。
ですのでこれは脳内の手紙なので届くはず無いのですが語らせてください。
何でもこの異世界は『ルーンベル』というらしいのですがそこには魔王がいるらしいのです。
困った『ルーンベル』の王国の一つである『グリムガル』の王様は何をとち狂ったか俺を含めた2-Bの生徒全てを勇者として『ルーンベル』に召喚しました。
情け容赦なく王様は慌てふためくクラス全員に武器を突きつけるように兵士たちに命じました。
そして勇者として戦う事を命令した王様は無理やり全員の承諾を得ると一人一人に『スキル』を与える儀式を執り行いました。
『スキル』というのはこの『ルーンベル』の一番偉い神がランダムに力を与えるというもの。
次々に剣聖だのアークウィザードだのゲームで出てくるような名前の『スキル』がクラスメイトに配られていきます。
そしてついに俺の番になり『スキル』が与えられると場が騒然となりました。
王様たちもクラスメイトもザワザワしています。
その理由は俺に与えられた『スキル』が意味不明な物であったからでしょう。
その『スキル』の名は…『ぎじんか』。
…いや何だろうね『ぎじんか』って。
何で漢字じゃなくて平仮名なんだよ。
そもそも擬人化でどうやって戦うんだよ。
そんな考えが頭の中で巡るなか王様は俺を追放するように命じました。
戦いに役に立たないような奴はお払い箱のようです。
ですが先に『スキル』を得たクラスメイトが手を挙げました。
助けてくれるのかと思ったらそのクラスメイトは俺を自らの『スキル』の実験体にしたいとの事でした。
その考えに次々にクラスメイト達は同調していきます。
そうでした俺は学校ではボッチでした。
皆も王様と同じ考えで役に立たない奴は要らない模様です。
何人かが反対し押しとどめようとしてくれますが数には勝てません。
そして『スキル』アークウィザードの魔法にて何処か遠くに飛ばされてしまいました。
その後のクラスメイトの様子は分かりませんが恐らくお城で過ごしているのでしょう。
え?俺?
俺は今…。
ウオォォォォォォォン!!
バカみたいにデカい狼と命がけの追いかけっこをしています☆。
落とされた場所がちょうど狼の真上だった事により空中から落ちて死亡は無かったけれどもっと惨い死因を与えそうな存在を怒らせてしまいました。
なので脳内の父さん、母さん。
息子は先にあの世に逝ってしまうかも知れません。
もう既に足はヨタヨタでいつ足が止まっても可笑しくありません。
ですがそこに一筋の光明が差しました。
狼が通れないような洞窟の入り口を見つけたのです。
人が通るのもギリギリでしたが何とか入り狼の猛追を振り切りました。
ようやく一息付けた事に安堵していると俺の荒い息の他に何やら寝息のようなものが聞こえます。
そこで初めて周りを見渡そうとして顔を上げるとそこには先ほどの狼より一回りデカい翼を持ったトカゲ。
いわゆるドラゴンがそこに眠っていました。
地球の父さん、母さん。
そして地球と『ルーンベル』の神様たち。
…俺、何か悪い事しましたか?
与人は鼓動が早まって来るのを感じる。
それは走って来たからでは無く目の前にドラゴンというファンタジーの象徴のような存在が居るからである。
だが鼓動が早まっているのは喜びからではない。
むしろその逆、喰われるかもしれないという恐怖からであった。
だが与人は諦めない。
反対側に道のようなものが確認できた与人はその道に全てを懸ける。
問題は音をしないように反対側に回らないといけないと言う事である。
時間をかけてとにかく音を立てないようにしながら少しずつ移動していく与人。
途中何度もドラゴンの吐く息で吹き飛ばされそうになりながらもあと少しという所まで近づいた。
(行ける!)
そう思った事が悪かったのであろうか?
不注意で石を蹴ってしまう。
その石は洞窟内ということもあり大きな音を立てて転がっていく。
そうなるとこれから起こる事は与人にも簡単に想像が出来た。
…出来てしまった。
ドラゴンの爬虫類らしい目が大きく開かれる。
グォォォォォォォォ!!
そして翼を大きく広げ咆哮を洞窟内に響き渡らす。
(あ、俺死んだ。)
その威容は与人に逃げるのを諦めさせるのに十分な要因だった。
洞窟の冷たいがペタンと座り込んだ与人に伝わっていく。
ドラゴンはしばらく周りを見回していたが座り込んでいる与人を見つけると近寄って来る。
その振動を感じながら与人は走馬灯のように元の世界の事を考えてある結論に達する。
「あ~あ。もっと好きな事しとけばよかった。」
与人はどちらかと言えば好きな事を後回しにする方であった。
今、命の危機を目の前に与人から出てくるのは後悔ばかり。
彼女を作っておけば良かった。
美味しい物をもっと食べたかったなどなど。
ドラゴンの顔が与人の目の前にズイと現れ表情を覗き込んでいる。
「…せめて楽に殺してくれよな。」
そう言って与人はドラゴンに触れる。
―そしてようやく与人の『スキル』の効果が表れる。
与人の手に触れたドラゴンは突如光に包まれる。
そして藻掻き苦しむように暴れつつその体が徐々に小さくなっていく。
「は?…はぁ!?」
何より混乱していたのはドラゴンよりも与人であったろう。
与人が混乱し続けるなかついにドラゴンは人間サイズになってようやくその光が収まっていくするとそこには。
「…フン、随分変わった『スキル』を持っているな。小僧。」
絶世の美女がいた。
大きな翼と尾や爪、鱗が見え隠れしてるところからその美女が先ほどのドラゴンである事は与人にも分かった。
髪は鱗と同じ赤をしておりその長いストレートな髪がたなびく様は美しいの一言であった。
高身長でモデルの雰囲気が出てるが女性として出るとこは出て引っ込む所は引っ込んでると正に芸術のようなスタイルであった。
それに見惚れる与人であるが女性となったドラゴンがコツコツと自分の方へ歩いて来ると恐怖を覚える。
サイズが小さくなったとはいえ強靭な爪は健在で引き裂かれたら一溜まりもないだろう。
再び死ぬことへの恐怖が襲い震えが止まらなくなる与人にドラゴンは不思議そうに声を掛ける。
「なんだ、何故震える小僧。」
「何故って…そんな姿にした俺を引き裂いたり喰ったりするのでは?」
与人には理屈は分からなかったが自分の影響でドラゴンがこうなったのは分かった。
だったら自分を生かす訳が無いと与人は考えていた。
「ハァ…自分の『スキル』の効果も分からずに使ったか。そのような小僧にこんな姿にされるとは。」
ドラゴンは頭を抱えながらそう言うと与人に向かって膝を曲げ手を合わせる。
それはまるで何かのテレビで見た臣下の礼のようだと与人は思った。
「しぶしぶだが契約は契約。これよりこの命お前に授けよう…主。」
「…はい?」
こうして与人の初めての仲間であるドラゴンの向かい入れの言葉は何とも情けないものであった。
「え~と、つまり俺の『ぎじんか』っていう『スキル』はモンスターなんかを人間に、それも若い女性の姿に変えてそのうえ主従契約を強制的に結ぶ…と?」
「ああ、私が感じ取った断片的な『スキル』の情報だ。間違いないと思うぞ。」
与人とドラゴンはお互いに向き合いながら情報の整理をしていた。
ドラゴンいや、彼女が淡々と説明するのに対し与人は申し訳なさそうにしていた。
「それは…何と言うか…済みませんでした。」
「何故謝る?」
深々と土下座する与人に不思議そうに質問するドラゴン。
「だって無理やり主従契約なんて…。」
「…小僧。お前異世界から来たな。」
「ど、どうしてそれを!」
「…単純だ。この世界の人間は我々モンスターと呼ばれる者にそんな感情を持たない。」
「え?」
「奴らはモンスターを討伐対象、あるいは家畜や闘技場で戦わせるための奴隷と一緒としか見ていない。寧ろ小僧の扱いは軽い方だ。」
「…。」
与人がワールドギャップに驚く中ドラゴンは興味深そうに与人の顔を覗き込む。
「ところで小僧、お前の世界の事を話せ。この世界に何故来たのか、もな。」
「ど、どうして?」
整ったドラゴンの顔が近くにある為ドギマギしてしまう与人。
そんな与人に笑みを浮かべながらドラゴンはこう答えるのだった。
「主の事を知りたいと思うのは不思議な事じゃないだろ。」
「フン、『グリムガル』は何百年経っても成長しない国だな。三百年前と同じ事をする。」
与人の世界の事を聞いていた時はご機嫌なドラゴンであったが与人がこちらの世界に来た経緯を話すと急に不機嫌になる。
「三百年って…その『グリムガル』ってそんなに古くからあるんですか?」
「そうだ、少なくとも千年前には存在していた『ルーンベル』において最も歴史がある頭の固い奴らの国だ。」
「頭の固いって…まあそんな感じだったけど。」
トップである王があれだけ偏屈そうなら国民全体もそんな感じなのかも知れない与人も同意する。
「…それで?これからどうするんだ小僧。」
「どうするって…何を?」
与人が質問を返すとドラゴンは呆れたようにため息を吐く。
「どうするって小僧。一生ここで暮らすつもりか?」
「あ…。」
言われてみればというような顔をする与人にドラゴンは指を二本突きつける。
「小僧が選択しやすいように二択にしてやる。一つは『グリムガル』に戻り魔王を倒す道。もう一つはそんな事を忘れ自由に生きるかだ。」
「…自由。」
「そうだ自由だ。」
「…それなら決まっている。」
元より無理やり召喚された身である。
あの国王や国に命を懸けるなんて気は全くない。
それにさっきのまで湧いていた後悔の念を晴らす絶好の機会である。
「ドラゴンさん。」
「ん?」
「俺は自由に生きたい。生きて俺は生きてるんだって実感したい。…だから力を貸してください。」
そう言って与人はドラゴンに手を差し出す。
「…元より私に選択肢は無い。だがドラゴンである私に敬意を払った事は誉めてやろう。」
差し出されたその手をドラゴンはしっかりと握る。
硬く握手するお互いの顔は笑みが浮かんでいた。
「さて、小僧まずやる事は…。」
「そうだな…。ドラゴンさんの名前って何て言うの?」
「ん?」
「いや、何時までもドラゴンさんて呼ぶのはどうかと思ったんだけど。」
「…人間とは違う。一々個体に名は付けない。」
「けど…今は人間の姿だよね。」
「む。」
一本とったという顔をする与人を睨みながらドラゴンはぶっきらぼうに答える。
「どうでもいい。小僧が勝手に付けろ。」
「え!…え~と。」
ペットを飼った事が無い与人にとっては初めての名をつけるという作業に頭を悩ます。
色々な名前が浮かんでは消えていきいつか見た図鑑でのドラゴンの名が思い出される。
「…リント。」
「は?」
「いやだからリントって名前はどうかなって思ったんだけど…ダメ?」
「小僧その言葉の意味を知って…いや知る訳ないな。」
「え、何か意味あるの?」
「古い竜族に伝わる言葉がな…小僧は知らなくていい。」
「いやどうせなら教えて欲しい…。」
「知らなくていい。」
ドラゴンことリントに何故が顔を赤くしながら睨まれつつ強く言われてしまった為何も言えなくなる与人。
するとリントはコホンと咳払いをして立ち上がる。
「さて主?自由に生きたいと言ったが最終的にはどうするつもりだ?」
「…楽園を。」
与人は立ち上がりながら自分の欲望をさらけ出す。
「ん?」
「楽園を作りたい。誰もが自由で笑顔でいられるそんな楽園を。あと我が儘言うならハーレムとか作ってみたい。」
「クク…後半の方が本音じゃないのか?だが欲望丸出しの方が好みだよ小僧。」
そう言って与人の頭を乱暴に撫でるリント。
「…これからよろしくリント。」
「ああ、よろしくしてやるよ主。」
―これから続く長い戦いと旅の始まりはここに始まったのである。
あなた達の息子、俺こと葉山与人《はやまよひと》は今異世界にいます。
ですのでこれは脳内の手紙なので届くはず無いのですが語らせてください。
何でもこの異世界は『ルーンベル』というらしいのですがそこには魔王がいるらしいのです。
困った『ルーンベル』の王国の一つである『グリムガル』の王様は何をとち狂ったか俺を含めた2-Bの生徒全てを勇者として『ルーンベル』に召喚しました。
情け容赦なく王様は慌てふためくクラス全員に武器を突きつけるように兵士たちに命じました。
そして勇者として戦う事を命令した王様は無理やり全員の承諾を得ると一人一人に『スキル』を与える儀式を執り行いました。
『スキル』というのはこの『ルーンベル』の一番偉い神がランダムに力を与えるというもの。
次々に剣聖だのアークウィザードだのゲームで出てくるような名前の『スキル』がクラスメイトに配られていきます。
そしてついに俺の番になり『スキル』が与えられると場が騒然となりました。
王様たちもクラスメイトもザワザワしています。
その理由は俺に与えられた『スキル』が意味不明な物であったからでしょう。
その『スキル』の名は…『ぎじんか』。
…いや何だろうね『ぎじんか』って。
何で漢字じゃなくて平仮名なんだよ。
そもそも擬人化でどうやって戦うんだよ。
そんな考えが頭の中で巡るなか王様は俺を追放するように命じました。
戦いに役に立たないような奴はお払い箱のようです。
ですが先に『スキル』を得たクラスメイトが手を挙げました。
助けてくれるのかと思ったらそのクラスメイトは俺を自らの『スキル』の実験体にしたいとの事でした。
その考えに次々にクラスメイト達は同調していきます。
そうでした俺は学校ではボッチでした。
皆も王様と同じ考えで役に立たない奴は要らない模様です。
何人かが反対し押しとどめようとしてくれますが数には勝てません。
そして『スキル』アークウィザードの魔法にて何処か遠くに飛ばされてしまいました。
その後のクラスメイトの様子は分かりませんが恐らくお城で過ごしているのでしょう。
え?俺?
俺は今…。
ウオォォォォォォォン!!
バカみたいにデカい狼と命がけの追いかけっこをしています☆。
落とされた場所がちょうど狼の真上だった事により空中から落ちて死亡は無かったけれどもっと惨い死因を与えそうな存在を怒らせてしまいました。
なので脳内の父さん、母さん。
息子は先にあの世に逝ってしまうかも知れません。
もう既に足はヨタヨタでいつ足が止まっても可笑しくありません。
ですがそこに一筋の光明が差しました。
狼が通れないような洞窟の入り口を見つけたのです。
人が通るのもギリギリでしたが何とか入り狼の猛追を振り切りました。
ようやく一息付けた事に安堵していると俺の荒い息の他に何やら寝息のようなものが聞こえます。
そこで初めて周りを見渡そうとして顔を上げるとそこには先ほどの狼より一回りデカい翼を持ったトカゲ。
いわゆるドラゴンがそこに眠っていました。
地球の父さん、母さん。
そして地球と『ルーンベル』の神様たち。
…俺、何か悪い事しましたか?
与人は鼓動が早まって来るのを感じる。
それは走って来たからでは無く目の前にドラゴンというファンタジーの象徴のような存在が居るからである。
だが鼓動が早まっているのは喜びからではない。
むしろその逆、喰われるかもしれないという恐怖からであった。
だが与人は諦めない。
反対側に道のようなものが確認できた与人はその道に全てを懸ける。
問題は音をしないように反対側に回らないといけないと言う事である。
時間をかけてとにかく音を立てないようにしながら少しずつ移動していく与人。
途中何度もドラゴンの吐く息で吹き飛ばされそうになりながらもあと少しという所まで近づいた。
(行ける!)
そう思った事が悪かったのであろうか?
不注意で石を蹴ってしまう。
その石は洞窟内ということもあり大きな音を立てて転がっていく。
そうなるとこれから起こる事は与人にも簡単に想像が出来た。
…出来てしまった。
ドラゴンの爬虫類らしい目が大きく開かれる。
グォォォォォォォォ!!
そして翼を大きく広げ咆哮を洞窟内に響き渡らす。
(あ、俺死んだ。)
その威容は与人に逃げるのを諦めさせるのに十分な要因だった。
洞窟の冷たいがペタンと座り込んだ与人に伝わっていく。
ドラゴンはしばらく周りを見回していたが座り込んでいる与人を見つけると近寄って来る。
その振動を感じながら与人は走馬灯のように元の世界の事を考えてある結論に達する。
「あ~あ。もっと好きな事しとけばよかった。」
与人はどちらかと言えば好きな事を後回しにする方であった。
今、命の危機を目の前に与人から出てくるのは後悔ばかり。
彼女を作っておけば良かった。
美味しい物をもっと食べたかったなどなど。
ドラゴンの顔が与人の目の前にズイと現れ表情を覗き込んでいる。
「…せめて楽に殺してくれよな。」
そう言って与人はドラゴンに触れる。
―そしてようやく与人の『スキル』の効果が表れる。
与人の手に触れたドラゴンは突如光に包まれる。
そして藻掻き苦しむように暴れつつその体が徐々に小さくなっていく。
「は?…はぁ!?」
何より混乱していたのはドラゴンよりも与人であったろう。
与人が混乱し続けるなかついにドラゴンは人間サイズになってようやくその光が収まっていくするとそこには。
「…フン、随分変わった『スキル』を持っているな。小僧。」
絶世の美女がいた。
大きな翼と尾や爪、鱗が見え隠れしてるところからその美女が先ほどのドラゴンである事は与人にも分かった。
髪は鱗と同じ赤をしておりその長いストレートな髪がたなびく様は美しいの一言であった。
高身長でモデルの雰囲気が出てるが女性として出るとこは出て引っ込む所は引っ込んでると正に芸術のようなスタイルであった。
それに見惚れる与人であるが女性となったドラゴンがコツコツと自分の方へ歩いて来ると恐怖を覚える。
サイズが小さくなったとはいえ強靭な爪は健在で引き裂かれたら一溜まりもないだろう。
再び死ぬことへの恐怖が襲い震えが止まらなくなる与人にドラゴンは不思議そうに声を掛ける。
「なんだ、何故震える小僧。」
「何故って…そんな姿にした俺を引き裂いたり喰ったりするのでは?」
与人には理屈は分からなかったが自分の影響でドラゴンがこうなったのは分かった。
だったら自分を生かす訳が無いと与人は考えていた。
「ハァ…自分の『スキル』の効果も分からずに使ったか。そのような小僧にこんな姿にされるとは。」
ドラゴンは頭を抱えながらそう言うと与人に向かって膝を曲げ手を合わせる。
それはまるで何かのテレビで見た臣下の礼のようだと与人は思った。
「しぶしぶだが契約は契約。これよりこの命お前に授けよう…主。」
「…はい?」
こうして与人の初めての仲間であるドラゴンの向かい入れの言葉は何とも情けないものであった。
「え~と、つまり俺の『ぎじんか』っていう『スキル』はモンスターなんかを人間に、それも若い女性の姿に変えてそのうえ主従契約を強制的に結ぶ…と?」
「ああ、私が感じ取った断片的な『スキル』の情報だ。間違いないと思うぞ。」
与人とドラゴンはお互いに向き合いながら情報の整理をしていた。
ドラゴンいや、彼女が淡々と説明するのに対し与人は申し訳なさそうにしていた。
「それは…何と言うか…済みませんでした。」
「何故謝る?」
深々と土下座する与人に不思議そうに質問するドラゴン。
「だって無理やり主従契約なんて…。」
「…小僧。お前異世界から来たな。」
「ど、どうしてそれを!」
「…単純だ。この世界の人間は我々モンスターと呼ばれる者にそんな感情を持たない。」
「え?」
「奴らはモンスターを討伐対象、あるいは家畜や闘技場で戦わせるための奴隷と一緒としか見ていない。寧ろ小僧の扱いは軽い方だ。」
「…。」
与人がワールドギャップに驚く中ドラゴンは興味深そうに与人の顔を覗き込む。
「ところで小僧、お前の世界の事を話せ。この世界に何故来たのか、もな。」
「ど、どうして?」
整ったドラゴンの顔が近くにある為ドギマギしてしまう与人。
そんな与人に笑みを浮かべながらドラゴンはこう答えるのだった。
「主の事を知りたいと思うのは不思議な事じゃないだろ。」
「フン、『グリムガル』は何百年経っても成長しない国だな。三百年前と同じ事をする。」
与人の世界の事を聞いていた時はご機嫌なドラゴンであったが与人がこちらの世界に来た経緯を話すと急に不機嫌になる。
「三百年って…その『グリムガル』ってそんなに古くからあるんですか?」
「そうだ、少なくとも千年前には存在していた『ルーンベル』において最も歴史がある頭の固い奴らの国だ。」
「頭の固いって…まあそんな感じだったけど。」
トップである王があれだけ偏屈そうなら国民全体もそんな感じなのかも知れない与人も同意する。
「…それで?これからどうするんだ小僧。」
「どうするって…何を?」
与人が質問を返すとドラゴンは呆れたようにため息を吐く。
「どうするって小僧。一生ここで暮らすつもりか?」
「あ…。」
言われてみればというような顔をする与人にドラゴンは指を二本突きつける。
「小僧が選択しやすいように二択にしてやる。一つは『グリムガル』に戻り魔王を倒す道。もう一つはそんな事を忘れ自由に生きるかだ。」
「…自由。」
「そうだ自由だ。」
「…それなら決まっている。」
元より無理やり召喚された身である。
あの国王や国に命を懸けるなんて気は全くない。
それにさっきのまで湧いていた後悔の念を晴らす絶好の機会である。
「ドラゴンさん。」
「ん?」
「俺は自由に生きたい。生きて俺は生きてるんだって実感したい。…だから力を貸してください。」
そう言って与人はドラゴンに手を差し出す。
「…元より私に選択肢は無い。だがドラゴンである私に敬意を払った事は誉めてやろう。」
差し出されたその手をドラゴンはしっかりと握る。
硬く握手するお互いの顔は笑みが浮かんでいた。
「さて、小僧まずやる事は…。」
「そうだな…。ドラゴンさんの名前って何て言うの?」
「ん?」
「いや、何時までもドラゴンさんて呼ぶのはどうかと思ったんだけど。」
「…人間とは違う。一々個体に名は付けない。」
「けど…今は人間の姿だよね。」
「む。」
一本とったという顔をする与人を睨みながらドラゴンはぶっきらぼうに答える。
「どうでもいい。小僧が勝手に付けろ。」
「え!…え~と。」
ペットを飼った事が無い与人にとっては初めての名をつけるという作業に頭を悩ます。
色々な名前が浮かんでは消えていきいつか見た図鑑でのドラゴンの名が思い出される。
「…リント。」
「は?」
「いやだからリントって名前はどうかなって思ったんだけど…ダメ?」
「小僧その言葉の意味を知って…いや知る訳ないな。」
「え、何か意味あるの?」
「古い竜族に伝わる言葉がな…小僧は知らなくていい。」
「いやどうせなら教えて欲しい…。」
「知らなくていい。」
ドラゴンことリントに何故が顔を赤くしながら睨まれつつ強く言われてしまった為何も言えなくなる与人。
するとリントはコホンと咳払いをして立ち上がる。
「さて主?自由に生きたいと言ったが最終的にはどうするつもりだ?」
「…楽園を。」
与人は立ち上がりながら自分の欲望をさらけ出す。
「ん?」
「楽園を作りたい。誰もが自由で笑顔でいられるそんな楽園を。あと我が儘言うならハーレムとか作ってみたい。」
「クク…後半の方が本音じゃないのか?だが欲望丸出しの方が好みだよ小僧。」
そう言って与人の頭を乱暴に撫でるリント。
「…これからよろしくリント。」
「ああ、よろしくしてやるよ主。」
―これから続く長い戦いと旅の始まりはここに始まったのである。
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