51 / 179
変わった歯磨き粉の話
しおりを挟む
先日、テレビを観ていた時のことです。画面には、山の中で自給自足をしている家族が映し出されていました。
その一家は、自作の歯磨き粉を用いて歯を磨いていたのです。それも、チューブから出るアレではありません。本物の粉なんですよね。材質は何かわかりませんが、自宅にて栽培した植物や塩などで作ったようでした。
その映像を見ているうち、私は知人の持っていたものを思い出しました。
その知人の名は、スミスとでもしておきましょう。
スミスは、かつて罪を犯し刑務所に入っていました。やがて出所してきましたが、その時に様々なものを持っていました。刑務所で使っていたものです。
その中のひとつが、粉末の歯磨き粉でした。確かビニール製の袋の中に粉が入っていて、ビニール袋は飾り気のない紙の箱に入っていた……ものを見せられた記憶があります。
「こ、これで歯を磨くの?」
思わず聞くと、スミスは頷きました。
「ああ。最初のうちは、それで歯を磨いてた」
答えた後、刑務所の事情について語り出したのです。
言うまでもないことですが、刑務所は罪を犯した者を収容する施設です。罪を犯すような者がどんな人種であるかというと、大半は金が欲しくて法を破ってしまった人間です。
それゆえ、中には金が全くない者もいます。塀の中では「ゼロ銭」と呼ばれたりする人種らしいです。しかし受刑者といえども、人間として最低限の生活を営ませなくてはなりません。
そこで、金のない人に支給されるのが、粉末の歯磨き粉と「チリ紙」と呼ばれるティッシュペーパーです。
この粉末の歯磨き粉ですが、見た目は灰色でクレンザーのようでした。こんなものを歯につけるのか、と思うと、ちょっとヤな気分がしましたね。
さらに、チリ紙も見せてもらいました。こちらは、キッチンペーパーみたいな材質でした。月々の枚数に限度はあるものの、一応はただで支給されるそうです。ちなみに、刑務所ではティッシュといわずチリ紙と呼ばされるとか。
スミスは、最初のうちは歯磨き粉もチリ紙も、支給される物……いわゆる「官物」を使っていました。刑務所の中では、当然ながら収入がありません。家族に迷惑をかけたくないため、なるべく金を使わないように生活しよう……と、心がけていたそうです。
しかし、官物の歯磨き粉もチリ紙も、あまりにも使い心地が悪いため、仕方なく金を出して市販の物を買い使うようになりました。刑務所に入っていた間は、ずっと市販の物を使っていたそうです。
やがて仮出所が決まった時、スミスはわざわざ官物の歯磨き粉とチリ紙を支給してもらったとか。シャバの人間に、その二つを見せるためだそうです。
個人的には、なぜこんなものを支給するのか、ちょっと理解できないですね。今時、むしろ粉末の歯磨き粉を支給する方が、かえってコストがかかる気がします。まあ、ひょっとすると、これも刑罰のひとつなのかもしれませんが。
その一家は、自作の歯磨き粉を用いて歯を磨いていたのです。それも、チューブから出るアレではありません。本物の粉なんですよね。材質は何かわかりませんが、自宅にて栽培した植物や塩などで作ったようでした。
その映像を見ているうち、私は知人の持っていたものを思い出しました。
その知人の名は、スミスとでもしておきましょう。
スミスは、かつて罪を犯し刑務所に入っていました。やがて出所してきましたが、その時に様々なものを持っていました。刑務所で使っていたものです。
その中のひとつが、粉末の歯磨き粉でした。確かビニール製の袋の中に粉が入っていて、ビニール袋は飾り気のない紙の箱に入っていた……ものを見せられた記憶があります。
「こ、これで歯を磨くの?」
思わず聞くと、スミスは頷きました。
「ああ。最初のうちは、それで歯を磨いてた」
答えた後、刑務所の事情について語り出したのです。
言うまでもないことですが、刑務所は罪を犯した者を収容する施設です。罪を犯すような者がどんな人種であるかというと、大半は金が欲しくて法を破ってしまった人間です。
それゆえ、中には金が全くない者もいます。塀の中では「ゼロ銭」と呼ばれたりする人種らしいです。しかし受刑者といえども、人間として最低限の生活を営ませなくてはなりません。
そこで、金のない人に支給されるのが、粉末の歯磨き粉と「チリ紙」と呼ばれるティッシュペーパーです。
この粉末の歯磨き粉ですが、見た目は灰色でクレンザーのようでした。こんなものを歯につけるのか、と思うと、ちょっとヤな気分がしましたね。
さらに、チリ紙も見せてもらいました。こちらは、キッチンペーパーみたいな材質でした。月々の枚数に限度はあるものの、一応はただで支給されるそうです。ちなみに、刑務所ではティッシュといわずチリ紙と呼ばされるとか。
スミスは、最初のうちは歯磨き粉もチリ紙も、支給される物……いわゆる「官物」を使っていました。刑務所の中では、当然ながら収入がありません。家族に迷惑をかけたくないため、なるべく金を使わないように生活しよう……と、心がけていたそうです。
しかし、官物の歯磨き粉もチリ紙も、あまりにも使い心地が悪いため、仕方なく金を出して市販の物を買い使うようになりました。刑務所に入っていた間は、ずっと市販の物を使っていたそうです。
やがて仮出所が決まった時、スミスはわざわざ官物の歯磨き粉とチリ紙を支給してもらったとか。シャバの人間に、その二つを見せるためだそうです。
個人的には、なぜこんなものを支給するのか、ちょっと理解できないですね。今時、むしろ粉末の歯磨き粉を支給する方が、かえってコストがかかる気がします。まあ、ひょっとすると、これも刑罰のひとつなのかもしれませんが。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる