灰色のエッセイ

板倉恭司

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続・詐欺師の手口の話

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 前回に続きまして……今回は、ちょっと違うやり方について書かせていただきます。
 最近、『小説家になろう』にて死刑に関するエッセイを読みました。正直、終始ふざけた会話で構成された文からは真剣さを感じられませんでしたし、また「死刑は絶対に正しいのだ!」という結論ありきの論調が非常に不快でしたね。
 まあ、それはいいのですが……このエッセイにて、次のようなことが書かれていました。

「無期懲役では十年経過すれば、仮釈放申請が出来る。勿論、遵守規定があり、審議のもとに決まるから、簡単には釈放とはならないけれど、たった十年で釈放してもらえる可能性がある」
 
 これ、嘘です。いや、嘘というか……現実を全くわかっていないのですよ。
 確かに、刑法二十八条によれば「刑期を十年経過すれば、仮釈放の権利を得る」ことにはなっているようです。しかし、これはあくまで権利を得ただけです。そこから、仮釈放で出すかどうかの審査があるのですよ。
 この審査には、事件が社会に与えた影響や遺族の気持ち、さらには世間の感情なども考慮されるそうです。言うまでもなく、そのハードルは高いです。簡単なものではありません。

 実際の話、現実に十年で出た無期懲役囚はいません。法務省のデータですが、二〇一七年時の無期懲役囚は一七九五人です。同年に八人が仮釈放により出所しましたが、この人たちが刑務所にいた期間の平均は三十三年だそうです。
 また、二〇〇八年から二〇一七年の十年で二百人近い無期懲役囚が獄死しているとのことです。つまり、無期懲役囚が仮釈放で出るには……最低でも三十年ほど刑を務めなくてはならないのです。しかも、その前に獄死するケースも少なくありません。無期懲役は、終身刑に近づいていると言えるでしょう。

 上のデータを調べるのに要した時間は五分もかかっていません。実に簡単なんですよね。件のエッセイの作者も、それくらいはわかっていたものと思います。にもかかわらず「十年で釈放してもらえる」などと書いていました。
 結局、これは「無期懲役なんか十年で出られる甘い刑なんだよ」という間違ったデータを見せ、そこから「こんな奴らは、みんな死刑でいいんだ」という結論に誘導するための手口なんですよね。冒頭にあげた「柔術黒帯が刃物持って襲いかかってきたら~」と同種のものです。
 ただし、件のエッセイの作者さんが本当に知らなかった、という可能性もありますが……この場合は、作者さんの創作への姿勢のいい加減さに呆れるしかないでしょう。死刑について論じようというのに、この程度のことも調べられないのか、と。

 世の中には、利益を得るために、こういう手口を使う者もいます。こんなしょうもない手口に騙されないよう、気をつけてください。


 
 





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