兄がΩ 〜うっかり兄弟で番いましたが、今日も楽しく暮らしています。〜

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●真面目に学生生活。

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 生コン屋の朝は早い。一方、大学生の朝は別に早くなくてもいい。僕が起きる時間には、茶の間には誰もいなくて、テーブルには僕のぶんのおにぎりが置いてある。僕は味噌汁を温め直し、一人でテレビを観ながら遅い朝食を摂る。遅いといっても、まだ七時半を回ったところだ。 
 一限目は九時からなので、もっと遅くまで寝ていても大丈夫なのだけれど、家族が早朝からどたばたと動いているのに、僕一人だけがのんびりしているのは忍びないと思い、無駄に早起きをしてしまう。
 八時半を過ぎた頃に家の外に出た。太陽がすでに昼間のように高い。最近すっかり日が長くなった。
 目の前を兄の運転する4トンのミキサー車が通る。すれ違う時、兄は僕に気づいて咥え煙草のまま口の両端を上げた。僕は4トン車の後ろ姿に、大きく手を振った。
「かっこいいなぁ」
 僕は思わずつぶやいた。兄が聞いたらきっと「所詮3K労働」などと言って嫌がるだろう。でも、僕の目には働くお兄さんがとっても輝いて見えるのです。兄の仕事はコンクリートの製造だ。建物の基礎の部分を始めとして、社会のありとあらゆる場所の礎や枠組みを築く材料を作る。一見地味だけれども、とても重要な仕事だ。
 はぁ、いつかお兄さんの隣で家業の切り盛りをお手伝い出来たらいいなと思うけれど、それだけは絶対ダメだと父も兄も言うので、僕は僕の仕事を……今は学業を、頑張らないと。
 愛車のマーチに乗り込みエンジンをかける。この車だって両親から新車で買ってもらったものだ。卒業したらいい会社に勤め、沢山稼いで、いつか両親に恩返しをしたい。
 午前の早い時間、キャンパスを歩いている学生の姿は少ない。今年度は取れる科目は全て履修登録したので、僕は毎日ほぼ一日中大学で過ごす。そんな僕を、同期の仲間はクレイジーだと笑う。でも、僕は大学の学費も全額親に出してもらった身だし、せめて元を取るくらいは勉強しなければ。
「隣、空いてる?」
 不意に話し掛けられて、僕は顔を上げた。女子が二人。華やかな子とコンサバ系の清楚な子だ。華やかな方は同期のレイちゃん。清楚な子の方には見覚えがなかった。
「空いてますよ、どうぞ」
「ありがと。じゃ、あかね、ここに座りな」
「え、私? それじゃあどうも……お隣失礼します」
 清楚な子が僕の隣に座らされ、レイちゃんは彼女の反対側の隣に着席した。清楚な子、茜ちゃんは僕に会釈した。はにかんだ笑顔が、結構可愛い。
 茜ちゃんの上をまたぐようにして、レイちゃんは僕に話し掛けてくる。
「トモくん香水変えたん?」
「いえ。僕、香水は着けないですよ」
「嘘ぉ。じゃあ柔軟剤の匂いかな」
「ほんとだぁ、いい匂いする」
 心当たりはないが、女子に自分の匂いを褒められて悪い気はしない。茜ちゃんのちょっと天然そうなぽわんとした声色もよかった。こんな子がうちの事務所で電話番をしてくれたら、などとつい妄想してしまう。いずれは兄のお嫁さんに……まてよ。兄は僕に「お前にしか抱かれたくない」もとい「もうお前にしか抱かれらんない」と言ったではないか。
『僕のせいでお兄さん、結婚できなくなったのでは!?』
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