異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

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60.魔核・魔石とは何か①(5月15日)

魔石の色が変わる。何かの化学変化か物理変化なのかはわからないが、洞窟から掘り出したことで何かが起きたのだとは思っていた。
だが、皆の反応がそれほど単純なことではないと物語っている。

「やはり最初は真っ黒だったのだね。それがカズヤ君が触っているうちに透明になったと」

「まるで浄化ね。魔核を見つけた場合はまずは浄化魔法を掛けて、汚れた魔力を取り除く。そうして初めて、人間が触っても平気な普通の魔石になるものなの」

「特に黒い魔核は要注意だ。耐性の無い者は近寄るだけで引きずられる事だってある」

モンロイ師とカミラさんの言葉は、やはり黒い魔石が透明になったことの異常性を示している。
俺が真っ黒な魔石を素手で掘り出している時にアリシアが驚いた顔をしていたり、その後ガレージで話し込んでいた際に‟なんで平気なのか”と聞いていたのは、この事だったか。

「俺が触ったことで真っ黒な魔石、魔核でしたか?その魔核が透明になったということは、結局どういうことなのでしょうか?」

「これは仮説なのだけれど」

俺の質問にそう前置きしたのは校長先生だ。

「カズヤ君がこの魔核を掘り出した時は、魔力の残量が少なかったのではないかしら?」

魔核を掘り出したのはアリシアを助けた時だから、前日の自宅防衛戦とその後のゴブリンの埋葬で大量のの魔法を使った後だった。あの時は魔力切れのような症状を起こしていたが、一晩眠ると眩暈などは治まっていた。

「確かに……直前で水魔法や土魔法、火魔法を乱発していました」

「カズヤ君の魔法容量、つまり器が人並外れて大きいのだとしたら、魔核の持つ魔力を吸収したと考えるのが自然でしょうね」

校長先生の言葉に、モンロイ師とカミラさんが魔力測定器を覗き込み、文字通りあんぐりと口を開けた。

「なんじゃこのデタラメな数値は!6千だと!?」

「あ、それ一度振り切ってからの数値なので、正しくは1万6千です……」

「それも私達3人の魔力を全回復した後なので、恐らくは2万を超えているかと」

アリシアとアイダの言葉に、モンロイ師はますますヒートアップした。

「そんなバカな!5千に近づく者すら近年はおらぬというのに、その4倍だと……お主さては人間ではないな。魔物か魔人あるいは魔王の類か!?」

とんだ濡れ衣だ。俺はれっきとした人間だぞ。そもそも魔物はともかく、魔人やら魔王なんてのも存在するのか。

「つまりはカズヤ君が言っていた‟異世界から来たようだ”という言葉が裏付けられたということでしょうね。少なくとも人に仇為す存在ではないようですし、ここは懐柔しておいたほうが後々のためでは?」

校長先生……そういう事は俺に聞こえないところで言って欲しい。
ただ面と向かって言われるほうがまだ信用できるというものだ。

さて、俺の魔力量は人並外れて異常らしい。これはいったいどういうことだろう。
現代日本からやってきた人間の魔法容量、つまり器が大きいというのは一種のチートなのだろう。
ただ一旦はその魔力も使い切っている。その魔力を何らかの方法で補充したはずなのだ。少なくともアリシア達に出会って彼女達に魔力を分け与える事が出来るくらいには。

魔核のもつ魔力を吸収した。確かに、魔力を電力のようなものだと考えるなら、より充電量の大きな蓄電池に空に近い蓄電池を繋げば充電されるのは理屈では理解できる。
だが、アリシアは魔石から直接魔力を補給することは不可能だと言っていなかったか?

「すみません。俺の理解が追い付いていないのですが、魔石から直接魔力を補充する、例えば魔石を飲み込むなどしても、副作用が強すぎて上手くいかないのではありませんでしたか?」

「おほん。校長先生の仰られるとおりかもしれん。取り乱して悪かった。魔石から直接魔力を補充するという件についてはその通りだ。ただし例外があって、透明な魔石、カズヤ君達が小鬼から分捕ってきた魔石の中にもあったが、その透明な魔石の高純度の魔力は、持っているだけで魔力を補給する効果がある。まあ小鬼が持っているような大きさでは、補充しやすくなる程度の効果しか見込めんがな」

モンロイ師は混乱から立ち直ってくれたようだ。
しかしモンロイ師の説明にますます混乱する。

「えっと……基本的なところが分かっていないのですが、そもそも魔石とは何ですか?魔素が結晶化したものだと考えていましたが、色によって効果というか特性が異なるようですし、高値で取引されるようですが使い方も知りません。詳しく教えていただけませんか?」

俺の言葉にモンロイ師が呆れたように頭を振る。

「なんじゃ……お主そんなことも知らんのか。これはお主が異世界から来たというのも納得せざるをえんな……まあいい。お前達にも良い復習の機会じゃ。ほれ、席に着け。講義を始める」

どうやらモンロイ師の教官魂に火を付けてしまったようだ。

◇◇◇

「さて、魔石とは何か。先ほどカズヤ君が言った通り、魔素が結晶化したものじゃ。地中に産出する場合もあるし、魔物の体内から取り出すこともできる。幸か不幸か人間や魔物以外の動植物からは採取されない。魔物のように心臓にくっ付いておったとしたら、どれほど凄惨な事件が起きるか見当もつかん」

確かに。魔石が有益な物だというなら、必ず人体を掻っ捌こうという輩が出てくるに違いない。

「その魔石じゃが、確かに様々な種類がある。イザベル、代表的な魔石の種類と用途、採取できる魔物を答えよ。とりあえず一種類じゃ」

「私から!?えっと……黄色や琥珀色の魔石は光魔法に使えて、一角オオカミや大耳キツネなどの犬系統の魔物から採取できます」

「また微妙な所を攻めてきたのう。次はアイダ」

「はい。赤い魔石は火系統の魔法に使えます。採取できる魔物は主にサラマンドルです」

知らない魔物の名前が出てきた。サラマンダーと言えば両生類のアレだが、魔物となれば火蜥蜴のほうだろう。

「よろしい。では次はアリシア」

「えっと……青い魔石は水系統の魔道具で使用します。採取できるのは水棲種の魔物全般です」

「うむ。魔道具の発動に使われる一般的な魔石は、その3種類じゃな。言うまでもないが黄色系の魔石は灯りに、赤系の魔石は料理の火に、青系統の魔石は水瓶に使われる。では魔道具の発動に必要な3要素を言ってみよ。イザベル!」

「ふえええ……正しい魔法式、適切な魔石、起動に必要な僅かな魔力です……」

「魔法師ともあろう者が情けない声を出すな!まあ答えは正しい。魔道具とは、魔法師ほど魔力を持たない者が魔法を行使する為に作られた装置じゃ。装置といってもその構造は単純。円形に描かれた魔法式の中心に適切な魔石を置き、魔石に魔力を流す。それだけじゃ。ここまではよいかなカズヤ君?」

「えっと……魔法式は魔石から魔力を引き出すためのものですか?とすれば、起動に必要な魔力を流すのは、魔石にではなくて魔法式になのでは?」

「いや、魔法式は魔石から流れる魔力を魔法に変換する、つまり魔石の魔力を使って魔法を発現させるためのものじゃ。魔石の魔力を引き出すためのものではない」

「つまり、魔力を操る人間が直接魔法式に魔力を込めても、魔石と同じ効果が得られる?」

「その通りじゃ。お主も魔法を使う際に詠唱をしておるじゃろう?その詠唱を文字と記号で表したものが魔法式じゃ」

詠唱……アリシアが何やらこっぱずかしい詠唱をしていたな。俺は詠唱などしたことはないが……

「あ、カズヤさんは詠唱してないかもです」

「そう!私達もわざわざ口に出して詠唱することは少ないけど、お兄ちゃんの魔法発動はめちゃくちゃ早いの!あれって詠唱そのものをやってないよね!?」

「はああ…もう驚かんぞ。お主は詠唱無しで魔法を発動出来るのじゃな?」

「はあ、たぶん……やってみますか?」

確認するために校長先生を見る。

「火柱を立てたり水浸しにしたりしないのなら、是非見てみたいわ」

にこやかに微笑んで許可してくれた。

効果が極小で分かりやすい魔法…ライターだな。
タバコに火を点けるように、右手人差し指の爪先に火を灯す。普段は屋外でしかタバコを吸わないから、ターボライターの様な高音の青白い炎を出しているが、今回は室内でも見えやすいオイルライター様の赤い火だ。

音もなく点火した火に、モンロイ師が右手を掴まんばかりの勢いで手を出してきた。

「な…今何をしたのじゃ?」

「ちょっと!危ないですよ先生!」

慌てて爪先の火を消して、右手を引っ込める。

ついでにそのままポケットを弄り、オイルライターを取り出す。しばらく使っていないが、内部の綿はフェルトに交換しているし、BDUのポケットには収納魔法を掛けていたから、オイルの揮発は抑えられているはずだ。

「これです。この炎を再現してみました」

本体のキャップを開くと、カチャリという金属音がして僅かなナフサの匂いがする。
ホイールを回してフリントと擦り合わせ、火花を出す。1発でウィックから炎が上がった。

「それは…魔道具?」

今度はカミラさんが詰め寄ってくる。

「いえ、魔法を使わない、ただの道具です」

キャップを閉めて消火し、ライターをカミラさんに渡す。

「本当だ…少なくとも表面には魔法式はない……ここにある刻印が気にはなるけれど、魔法式って感じじゃないわね」

「それは製造者の名前と製造年月ですね。カミラさんも魔道具を作られたら、何か製作者が分かるような印などを入れるのでは?」

「確かに。私達が使う文字に似ているけど、意味が全然分からない。ディボ??」

「まあその道具の名前だと思ってください」

「ふ~ん。なんだか不思議な匂いがするけど…どこかで嗅いだ事があるような……ねえ校長先生。記憶にありませんか?」

カミラさんがライターのキャップを開けて匂いを嗅いでいる。

「ああ、これって東の森にある“死の沼”の臭いじゃないかしら?」

「それです!周囲の木々は枯れ、近寄る生き物も死に絶えるというあの沼ですよ……それがこの中に?」

ナフサというか揮発油の臭いがする沼?それってつまり自噴油田か。

「その沼というのは真っ黒でドロドロした油が溜まっているのでは?」

「直接見た者の報告では、そのようですね」

「ならばそれは恐らく油田です。そこで湧いている油と同じような物を精製して揮発性の高い油を取り出して、その道具、ライターの燃料にしています。燃焼の三要素、つまり可燃物、酸素供給、点火源のうち、酸素は大気から風除けの穴を通じて供給されるので、あとは紐状の芯に染み込んだ燃料に火花が飛んで……って、あれ?どうしました?」

またカミラさんが近づいてくる。

「サンソって何?」

はい?えっと……こっちの言葉ではなんと言うんだ?
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