異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

文字の大きさ
238 / 253

237.アスタ①(11月7日)

意識を取り戻したホアキンには早速事情聴取が行われた。担当はソフィア、カミラとビビアナが付き添う。
その間にイザベルとルイサ、ルツはフェルを伴って偵察に出る。周辺300m圏内に魔物の反応は無いが、元々魔物の密度が高い地域である。狩人達がこぞってトロー狩りに向かったのであれば留守を狙って侵入する小物がいるかもしれない。俺はアリシアとアイダを連れて街の境界に常駐型結界を構築する。通過できる対象は馬よりも小さな動物と人間のみ。この世界の馬はいわゆるサラブレッド種ほど体高が高くないから、この条件でならトローや大鬼オーガは通過できない。一角オオカミや牙イノシシ、小鬼ゴブリンなどは素通りしてしまうが、それぐらいは自力で対処できるはずだ。

アスタは街とは名ばかりの小さな集落だ。結界を構築しながら堀と板塀に囲まれた外周を歩いても1時間程度しか掛からなかった。外周はおよそ3km、街が円形ならば半径は500m弱。とすれば人口密度は1,400ぐらいか。人口密度だけで元の世界と比較すればそう高いほうではない。例えば江戸時代の江戸の街には10km四方ぐらいの地域に100万人余りが住んでいたという。人口密度にすれば実に10,000だ。しかしアスタの住民のほとんどは壮年の狩人であり、老人も子供も少ない。この歪な人口構成が、街を一層窮屈に感じさせている。

それにしてもトローの襲撃か。
カディスでもトローを狩ったが、襲撃したのは俺達の方だった。カディス周辺の森の中にトローの巣を発見した俺達は、奴等の巣を襲い殲滅したのだ。今回は俺達が襲われる方なのだが、アスタを訪れたその日に襲撃されるのは単なる偶然なのか。

偵察に出ているイザベルとルイサから通信が入る。

「お兄ちゃん!街の狩人達がトローと接触したよ!」

「結構やられちゃってますけど、手伝ってもいいですか?」

どうやら戦況は芳しくないらしい。養成所のモンロイは“森の木々の上に潜んでトローを狩る”と表現していたが、群れたトローにその方法は効かないか。

「イザベル、ルイサ。二人とも無事だな?場所はどこだ?」

「街の南西、ちょっとした丘があって森が開けてるんだけど、そこで襲撃を受けたみたい」

「街の狩人さん達が丘の上に集まっていたところを南から横撃されたみたいです。あ、また一人倒れました!」

「お前達はどこにいる?」

「森の切れ目に生えてる大きな木に登ってるよ!」

「わかった。そこから減らせるだけ減らして撤退してくれ。ルイサ!絶対にイザベルから離れるなよ」

いざとなればルイサは自身の転移魔法で俺の背後に転移できる。イザベルも自力で戻って来れはするだろうが、リスクは少ないに越したことはない。ルツはフェルと一緒にそこいらのトローを狩り出しているのだろう。

「わかりました!イザベル姉さんは任せてください!」

「ちょっとそれ私のセリフだけど!?ほら、狙撃開始するよ!」

通信機の向こう側でスラッグ弾をぶっ放す重い音が聞こえだす。イザベルは狙撃から近接戦闘まで熟すが、こと狙撃となるとAT弾を使うG36VやPS-1だけでなく特殊弾頭を使用するへカートⅡやM870も愛用している。今回は樹上という不安定な場所であることを考慮して、スラッグ弾を装填したM870を選択したのだろう。

「よし。アリシア、アイダ。結界を維持したままさっきの酒場まで戻るぞ。そろそろ情報を整理できているだろう」

「了解です。カズヤ殿、先行した狩人は全滅でしょうか」

「彼等だって百戦錬磨の猛者だろう。そうそう遅れは取らないと思う」

そうアイダに答えながらも、それが望み薄なのは自覚している。そもそも魔物を狩るのに何だって丘の上なんぞに集まっていたのか。巻狩りで追いやられたイノシシじゃないんだぞ。
酒場への道を走りながら、イザベル達に呼び掛ける。

「イザベル!状況は?ルツ達は見えているか?」

「今6匹目のトローを倒したところ!ルツ姉はフェルに跨ってトローを狩ってるよ!」

「カズヤよ!1匹づつ狩るのも面倒だ。まとめてそっちに連れて行くからお前が始末しろ!」

イザベルとの通信にルツが割り込む。巨大な狼を駆る少女。物怪のお姫様が白い狼の背に跨って戦う映画のワンシーンが頭をよぎる。

「わかった。トローを1箇所に集めてくれ。結界で逃げられなくしてから片付ける」

「承知!」

耳に掛けた骨伝導イヤホンからフェルとトローの咆哮が聞こえる。ルツが通信を切るのを忘れているようだ。

◇◇◇

酒場に戻ると事情聴取を終えたビビアナ達が待っていた。
負傷したホアキンは鎧を脱がされて何故か床に正座している。

「カズヤさん、この方ったら暴れて大変でしたのよ」

「違う!暴れてなんかない!僕はただ……」

「恐怖で錯乱したんだよな。無理もない」

「恐怖?ソフィア、お前いったい何をしたんだ?」

「嫌ですわカズヤさん。私がそんな無体なことをするとお思いですの?」

「思わなくもないが。それで、状況は?」

「トローが南西の森に現れたのは事実です。彼の偵察隊は不意を突かれ壊滅。彼だけが命からがら戻ってきたようです」

「そうか。トローに襲われた場所は特定出来ているか?」

「狩人の遺体か」

「ああ。放置はできない」

「とっくに喰われてるんじゃないか?それか苗床に……」

そこまで言ってカミラが黙る。ここには危うく苗床にされかけたアリシアとアイダがいることに思い当たったのだろう。

「もちろんわかってる。南西だけじゃなく、この辺りの森は熟知している。案内できる」

「そうか。トローを殲滅してから他の狩人と一緒に連れて帰ろう。出撃した狩人は何人ぐらいだ?ホアキン、わかるか?」

「えっと、すぐに動ける狩人なら100人は出たと思う」

100人か。多いな。まさかそれだけの人数が一箇所に固まっていたとは思えない。ある程度は分散して行動しているはずだ。
とりあえず酒場から出て偵察隊を呼び出す。

「ルツ、イザベル!状況は?」

通信機を通して2人に呼び掛ける。カミラとソフィアを含めた娘達も一斉にイヤホンに指を当てる。

「お兄ちゃん!こっちは15匹倒して撤退中!あと少しで酒場に辿り着くよ!」

イヤホンから伝わるイザベルの呼吸は落ち着いているが、風切り音が激しい。どうやら全力ダッシュをしているようだ。

「カズヤ!フェルと我が眷属がトロー共を丘の上に追い立てておる。そこらじゅうに倒れている狩人が邪魔じゃ!」

「わかった。イザベル達が戻り次第、回収に向かう。その場はフェルに任せてルツも戻れ!」

「承知した!フェル、後を任せるぞ!生き残りを踏み潰させるな!」

フェルの咆哮とほとんど同時にルツが転移してくる。
続いてイザベルとルイサが飛ぶような速度で駆けてきた。

「揃ったな。アイダ、カミラは俺と一緒にルツと転移して負傷者を救出する。イザベルとビビアナ、ルイサはこの場の周辺警戒、アリシアとソフィアは転移させた負傷者の応急処置。負傷者の救出が終わり次第、トローを殲滅する。いいな」

「了解です。カズヤさん、トローが逃げ出さないように結界魔法で網を掛けますか?」

「そうだな。そうしてくれると助かるが、網を掛ける範囲を指定するためにお前も前線に出なければならんだろう」

「あ、それは大丈夫です。だいたいの距離と方角、それに範囲がわかれば、網状の結界魔法を射出できます」

「ヘカートⅡにそんな使い方があったなんてねぇ。私知らなかったよ」

俺も知らないぞそんなこと。あの対物狙撃銃はそんなことが出来るのか。まあ“AT弾に込めた魔法を遠くに運んで発現させるための魔道具”として捉えれば、確かに正しい使い方なのかもしれないが。

「それにしても行ったり来たり、ちょっとは年長者を敬うがよいぞ」

「姐御はルツ婆さんって呼ばれたいのですか?」

アイダがM870にスラッグ弾を装填しながら嘯く。

「吐かせ小娘。婆さんと呼ばれるには千年早いわ」

ルツが毒付きながらアイダとカミラの腰に手を回す。必然的に俺はルツの肩に手を置くことになった。

「背後から抱きしめてくれてもよいのじゃぞ?」

わざわざ娘達に聞こえるように言っているルツの戯言は無視して、転移するよう促す。

「ルツ、早く向かうぞ。一刻一秒が惜しい」

「ふん。変な表現をするのう。行くぞ!」

小さな掛け声と共にルツの転移魔法が発動した。
感想 232

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?