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開拓編
46.稲刈りをする
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翌朝、今日は稲刈りの日だ。
穂は大きくお辞儀をして、風に揺れている。
田の10箇所からランダムに穂をとり、籾を集める。100粒の籾中、まだ緑色が残る青味籾は15粒。ほぼ理想的な熟れ具合だ。
青味籾の数が多過ぎれば熟し方が足りず、収量が減る。一方で青味籾が全くなくなるまで熟せば収量は増えるが割れや欠けが増えてしまう。通常ベストなタイミングは青味籾が13パーセントと言われているが、明日になればまた熟し方が変わってしまう。
昨日のうちに青が稲架を納屋の前に準備してくれていた。
今日は子供達も総出で稲刈りを行う。総出と言っても桜・梅は八重と柚子をおぶって納屋前に待機。チビ達の面倒をみながら、白と小夜が運ぶ稲束を稲架に掛ける役目だ。
稲刈りをするのは青・紅・椿・杉・楓、そして俺の6名。残りの年中組は稲架に掛かった稲束を千歯扱きに掛け、脱穀された籾を回収し唐箕を通して乾燥と分別を行い、袋に詰めてもらう。重要な役目だが、黒が総指揮を取るから問題ないだろう。
こうして初の稲刈りが始まった。
稲刈りをするのは、板塀の内側にある10m×10m×6枚の田だ。ちょうど6人で刈るから1人1枚にはなるが、椿はともかく杉と楓はまだ手付きがおぼつかない。
青-楓、紅-杉、俺-椿のペアで刈り取っていく。
普通は左手で手の平いっぱいに稲を手繰り寄せ、根元を刈っていくが、今回脱穀するのは年中組だ。あまり太い束では作業効率が落ちそうだから、椿や杉でも持てる大きさに揃えなければならない。
大人組の作業効率が半減しそうだが、子供達のことを考えると仕方ないだろう。
何とか1枚1時間ペースで刈り取っていけているが、後半は子供達が疲れてくるだろうし、やはり1日仕事になるのは覚悟しなければいけない。
3枚目の田を刈り終わる頃に、紅が悲鳴を上げ始めた。
「タケル!やっぱ腰痛いぞ!麦刈りの時も言ったけど、スパッと風で刈っちまえばいいじゃんか!」
「いやそれは前にも言っただろう。もっと作付け面積が増えたらな!」
「うう……覚えてろよ……」
紅がまだぶつぶつ言っている。
キリもいいし、脱穀の進捗も気になる。ここで昼飯にしよう。
納屋に戻ると、黒の総指揮の元、子供達がせっせと働いていた。
黒の後ろには籾の入った麻袋が積まれている。その数なんと…7個。袋は30kg用の紙袋の大きさで作ったはずだから、210kg相当。籾殻の重さがあるとはいえ、想定していた180kg(元の世界の標準反収は1a=10m×10mで60kgだから、田3枚で60kg×3=180kg)を大きく上回っている。
そして更にもう一袋追加された。これで午前中に刈り取った3枚分の脱穀は完了のようだ。
「タケル。麻袋が足りないかも。ちょっと収穫量が想定の範囲外」
資産管理担当の黒が言ってくる。
うん……俺も驚いている。味はどうなんだろう。
稲刈りに参加した皆で、一掴みづつ籾摺りをする。
木臼に少しずつ流し込み、半回転回すと、籾殻が向け、玄米が脇からこぼれ出てくる。
麦の場合は手で揉めば籾摺りできるのだが、コメの場合はしっかり摺らなければいけない。今後収量が増えるようなら、水車による機械化ぐらいは必要だろう。
こうして取り出した玄米は、糠を取り精米するために、一升瓶に入れ口から棒で搗く。
水車があれば、籾摺りから精米まで一気にいけるのだ。梅雨の間に水車を作らなければいけない。
まあ今回は味見だ。精米は適当に切り上げ、再度唐箕にかけて糠や籾殻、割れ米を取り除く。
こうして、一人一合ほどの米を確保できた。
黒に頼んで炊いてもらう。
待つこと数十分。粒の揃った白飯が炊きあがった。
青と黒が握り飯にして皆に配る。早速味見だ。
いの一番に喰らいついた紅が歓声を上げる。
「うめえぞこれ!噛めば噛むほど甘みが増すじゃねえか!」
「これは確かにおいしいお米ですね!旦那様のお持ちになった米も美味しいですが、この米は更に上を行きます」
「タケル。雑穀の植え付けは最小限にして、米をもっと増やそう。米さえあればいい」
いや黒、そんなことしたら普通は脚気で死ぬからダメだぞ?
「タケル兄さん……お米って美味しいんだね……育てるのは大変だけど、この味なら疲れも吹き飛ぶね!」
小夜は今回の功労者だ。何せほぼ一人で育成管理をやってのけたのだ。
「これはしつこく虫や雀すずめが狙ってたのがわかるね。追い払うのは大変だったけど、苦労した甲斐があったよ!」
そう、白は稲の葉を狙うバッタや、実り始めた青籾を狙うスズメの猛攻を風の結界で防いでいたのだ。つねに田の天頂方向から風を送り、ウンカなどの小さな蛾が寄ってこないようにもしていた。
「あの……これは本当にお米なのでしょうか……集落で採れるものとは、味も大きさも違いますが……」
これは桜の感想。梅も同調している。
「う~ん……同じ米だけど作り方が少し違うからな。他の集落で採れる米とは少し違うかもな。口に合わないか?」
そう答えると、桜も梅も慌てて首を横に振る。気に入ったのなら何よりだ。
ちなみに椿や杉、その他の年中組は、一心不乱に握り飯にかぶりつき、もうすぐ食べ終わりそうな勢い。
「なあタケル、チビ達が眠くなってきてるぞ?」
そう紅が言ってくる。確かに朝から働かせ詰めだったし、慣れないことをして疲れただろう。
残り3枚の田は俺達だけで刈ろう。
「なあ…タケルよお。チビ達がいないなら遠慮しなくていいだろ?パパっと刈っちゃおうぜ?」
紅が甘い囁きを投げてくる。
そうだな……もうすぐ日も陰ってくるし、一気にやってしまおう。その代わり落穂を増やすなよ?
結局紅の囁きに乗ってしまった。
白が風を使って稲刈りと運搬を一気に行い、納屋の前に積み上げていく。
残りの皆で稲束を作り、千歯扱きにかけ脱穀する。脱穀した籾は俺が唐箕にかけ、藁くずや不良籾を吹き飛ばしながら乾燥させる。乾燥が終わった籾を、黒が袋に詰める。
6枚の田んぼから合計480Kgの籾が採れた。反収に直すと800Kg。元の世界の基準でも超豊作だ。
こうして、何とか一回目の稲刈りが終了した。
明日からは次の田植えの準備に入らなければならない。
穂は大きくお辞儀をして、風に揺れている。
田の10箇所からランダムに穂をとり、籾を集める。100粒の籾中、まだ緑色が残る青味籾は15粒。ほぼ理想的な熟れ具合だ。
青味籾の数が多過ぎれば熟し方が足りず、収量が減る。一方で青味籾が全くなくなるまで熟せば収量は増えるが割れや欠けが増えてしまう。通常ベストなタイミングは青味籾が13パーセントと言われているが、明日になればまた熟し方が変わってしまう。
昨日のうちに青が稲架を納屋の前に準備してくれていた。
今日は子供達も総出で稲刈りを行う。総出と言っても桜・梅は八重と柚子をおぶって納屋前に待機。チビ達の面倒をみながら、白と小夜が運ぶ稲束を稲架に掛ける役目だ。
稲刈りをするのは青・紅・椿・杉・楓、そして俺の6名。残りの年中組は稲架に掛かった稲束を千歯扱きに掛け、脱穀された籾を回収し唐箕を通して乾燥と分別を行い、袋に詰めてもらう。重要な役目だが、黒が総指揮を取るから問題ないだろう。
こうして初の稲刈りが始まった。
稲刈りをするのは、板塀の内側にある10m×10m×6枚の田だ。ちょうど6人で刈るから1人1枚にはなるが、椿はともかく杉と楓はまだ手付きがおぼつかない。
青-楓、紅-杉、俺-椿のペアで刈り取っていく。
普通は左手で手の平いっぱいに稲を手繰り寄せ、根元を刈っていくが、今回脱穀するのは年中組だ。あまり太い束では作業効率が落ちそうだから、椿や杉でも持てる大きさに揃えなければならない。
大人組の作業効率が半減しそうだが、子供達のことを考えると仕方ないだろう。
何とか1枚1時間ペースで刈り取っていけているが、後半は子供達が疲れてくるだろうし、やはり1日仕事になるのは覚悟しなければいけない。
3枚目の田を刈り終わる頃に、紅が悲鳴を上げ始めた。
「タケル!やっぱ腰痛いぞ!麦刈りの時も言ったけど、スパッと風で刈っちまえばいいじゃんか!」
「いやそれは前にも言っただろう。もっと作付け面積が増えたらな!」
「うう……覚えてろよ……」
紅がまだぶつぶつ言っている。
キリもいいし、脱穀の進捗も気になる。ここで昼飯にしよう。
納屋に戻ると、黒の総指揮の元、子供達がせっせと働いていた。
黒の後ろには籾の入った麻袋が積まれている。その数なんと…7個。袋は30kg用の紙袋の大きさで作ったはずだから、210kg相当。籾殻の重さがあるとはいえ、想定していた180kg(元の世界の標準反収は1a=10m×10mで60kgだから、田3枚で60kg×3=180kg)を大きく上回っている。
そして更にもう一袋追加された。これで午前中に刈り取った3枚分の脱穀は完了のようだ。
「タケル。麻袋が足りないかも。ちょっと収穫量が想定の範囲外」
資産管理担当の黒が言ってくる。
うん……俺も驚いている。味はどうなんだろう。
稲刈りに参加した皆で、一掴みづつ籾摺りをする。
木臼に少しずつ流し込み、半回転回すと、籾殻が向け、玄米が脇からこぼれ出てくる。
麦の場合は手で揉めば籾摺りできるのだが、コメの場合はしっかり摺らなければいけない。今後収量が増えるようなら、水車による機械化ぐらいは必要だろう。
こうして取り出した玄米は、糠を取り精米するために、一升瓶に入れ口から棒で搗く。
水車があれば、籾摺りから精米まで一気にいけるのだ。梅雨の間に水車を作らなければいけない。
まあ今回は味見だ。精米は適当に切り上げ、再度唐箕にかけて糠や籾殻、割れ米を取り除く。
こうして、一人一合ほどの米を確保できた。
黒に頼んで炊いてもらう。
待つこと数十分。粒の揃った白飯が炊きあがった。
青と黒が握り飯にして皆に配る。早速味見だ。
いの一番に喰らいついた紅が歓声を上げる。
「うめえぞこれ!噛めば噛むほど甘みが増すじゃねえか!」
「これは確かにおいしいお米ですね!旦那様のお持ちになった米も美味しいですが、この米は更に上を行きます」
「タケル。雑穀の植え付けは最小限にして、米をもっと増やそう。米さえあればいい」
いや黒、そんなことしたら普通は脚気で死ぬからダメだぞ?
「タケル兄さん……お米って美味しいんだね……育てるのは大変だけど、この味なら疲れも吹き飛ぶね!」
小夜は今回の功労者だ。何せほぼ一人で育成管理をやってのけたのだ。
「これはしつこく虫や雀すずめが狙ってたのがわかるね。追い払うのは大変だったけど、苦労した甲斐があったよ!」
そう、白は稲の葉を狙うバッタや、実り始めた青籾を狙うスズメの猛攻を風の結界で防いでいたのだ。つねに田の天頂方向から風を送り、ウンカなどの小さな蛾が寄ってこないようにもしていた。
「あの……これは本当にお米なのでしょうか……集落で採れるものとは、味も大きさも違いますが……」
これは桜の感想。梅も同調している。
「う~ん……同じ米だけど作り方が少し違うからな。他の集落で採れる米とは少し違うかもな。口に合わないか?」
そう答えると、桜も梅も慌てて首を横に振る。気に入ったのなら何よりだ。
ちなみに椿や杉、その他の年中組は、一心不乱に握り飯にかぶりつき、もうすぐ食べ終わりそうな勢い。
「なあタケル、チビ達が眠くなってきてるぞ?」
そう紅が言ってくる。確かに朝から働かせ詰めだったし、慣れないことをして疲れただろう。
残り3枚の田は俺達だけで刈ろう。
「なあ…タケルよお。チビ達がいないなら遠慮しなくていいだろ?パパっと刈っちゃおうぜ?」
紅が甘い囁きを投げてくる。
そうだな……もうすぐ日も陰ってくるし、一気にやってしまおう。その代わり落穂を増やすなよ?
結局紅の囁きに乗ってしまった。
白が風を使って稲刈りと運搬を一気に行い、納屋の前に積み上げていく。
残りの皆で稲束を作り、千歯扱きにかけ脱穀する。脱穀した籾は俺が唐箕にかけ、藁くずや不良籾を吹き飛ばしながら乾燥させる。乾燥が終わった籾を、黒が袋に詰める。
6枚の田んぼから合計480Kgの籾が採れた。反収に直すと800Kg。元の世界の基準でも超豊作だ。
こうして、何とか一回目の稲刈りが終了した。
明日からは次の田植えの準備に入らなければならない。
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