6 / 8
第6話 はぁ?旦那様が行方不明?伯爵家から出て行ける能力があったことに驚きましたが大丈夫でしょうか?
しおりを挟む
「ユフィ様。旦那様が行方不明です」
朝から特に慌てた様子もなくのんびりと顔を出した執事長が私にそう告げました。
「行方不明?どこに行ったか分からないのですか?」
しかし私は驚きました。あの豚にこっそりと出て行くような能力があったことに。
「はい。朝になっていなくなったと……その……」
「言い淀まなくて結構ですよ。どうせ浮気相手と同衾していたのでしょう」
まったくあのバカは。どうしてこう節操がないのでしょうか。
あれで神殿長を目指していたとか、神に対する冒涜としか思えません。
すみません、神様。私は良き使徒ですので、とばっちりで罰さないでくださいませ。
「はい、その女が言うには忽然と消えてしまったと」
「はぁ……」
忽然と?もしかして何らかの魔法的な干渉があったのでしょうか?
あれを攫ってどうしようというのでしょうね?
今なら支度金もつけて差し上げますが……。
「それで館の中で探しても見つからないということですか?」
「そうなのです。それこそ1階のトイレの中にも、2階のトイレの中にも、裏庭の古井戸にも、庭園の倉庫の中にもいないのです」
どうして探しているのがネズミやゴキブリでもいそうな場所ばかりなのでしょうか?
「食糧庫の中にもいらっしゃいませんでしたか?」
「は?」
お腹がすいてふらっと立ち寄ったあと、閉じ込められたとかで……。
「すみません、盲点でした。探してまいります」
ちょっとこの執事長の評価を改める必要があるようです。下の方へ。
「いらっしゃいませんでした」
「そうですか……どこへ行かれたのでしょうね」
「警備兵たちを信じるとするならば館の外には出られていないハズです。それこそ塀を飛び越えたりしていればわかりませんが……」
ないですね。あの豚は塀どころか柵すら飛び越えられません。
これはもう魔法を使った誘拐を考えた方がいいかもしれません。
となると犯人からの連絡待ちですね。
どうしましょうか。
お金はあげるけど殺してもらいましょうか?
手を汚したという批判だけは回避しなければなりません。
しかし次の日になっても、その次の日になっても何の音沙汰もありませんでした。
「お願いします、グラフェルド様」
「うむ」
そして私は仕方ないので宮廷魔術師長のグラフェルド様にお願いして魔法的な干渉の有無を確認してもらうことにしました。
彼は旦那様の叔父にあたる方なので実際に頼んでくれたのは公爵様ですが。
威厳ある眼差しでソファーから立ち上がって私の横を通るときにお尻を触ろうとしやがったので蹴りたい衝動を抑えるのに必死です……。
もちろん彼の手は避けました。
なんなのでしょうか、この一族は。
公爵様へクレームを送っておきました。
「これは……」
「なにかわかりますでしょうか?」
私はもう全くこれっぽっちも信じられない気分ですが一応それらしい振る舞いで旦那様の寝室を調べるグラフェルド様に尋ねます。
「次元のひずみが開いておるのぉ。これは魔力ではない。神隠しじゃ!」
「なっ……」
疑ってすみませんでした旦那様。てっきり侍女に色目と金を使いまくってこっそりどこかに行かれたのだとばかり思っていました。
侍女たちを秘密裏に処罰する必要がなくなってホッとしました。
グラフェルド様曰く別世界に飛んでいったとのことです。
となると旦那様がわが家の悪評を振りまいてくることを心配する必要がなくなりました。
いえ、悪評は振りまくでしょうが、別世界と私が交わることはないので気にしなくてよくなりました。
もしかして神様が健気に頑張っている私のために?
こんな嬉しいことがあるのでしょうか?
あってよいのでしょうか?
もうあのバカに脅かされる日々とはおさらばできるのです。
なにか間違って抱かれて性病を移される心配もないのです。
なにか……。
なぜでしょうか。
ちょっと悲しい気分ではありますね。
旦那様のアホ。
異世界で死んでしまえ。
これは……
何かの間違いです。
絶対違います。
いなくなって寂しいなんてことはないです。
気の迷いです。
もう。
ふざけんなです。
なんなのでしょうか。
もう。
もう。
もうもうもうもうもう!
あの豚は私を牛にでもしたのでしょうか?
「ユフィ様。少し休まれた方が……」
執事長が私を気遣って仕事を引き受けてくれます。
優しいですね。
でもまだ評価は上げてあげませんが。
「ありがとうございます。それでは失礼させてもらいます」
私はそう言って執務室を離れて食事をとり、お風呂に入ります。
私は旦那様のことを好きなのでしょうか?
そんなことはないと思うのですが、幼馴染の情というやつなのでしょうか?
彼と私は幼い頃から一緒に過ごすことが多かったのです。
それは私たちが婚約していたからなのですが。
クルスローデン伯爵家はアーゼンベルク公爵家と私たちが生まれる少し前から取引をはじめ、それが軌道に乗り、今後も維持していきたいという意思表明のために私たちの婚約に至ったという経緯があります。
そのため私たちは仲良くなることを期待され、ともに学ばされ、ともに遊ばされ、成長しました。
旦那様は学びの途中でサボって抜けることが多かったですし、色恋の多い方でなぜか私にもあの女はどうで、この女はこうだみたいな話をしていました。
学院に入って普通の恋人がかわす話しというものを知って衝撃を受けたのを覚えています。
私たちの実情を暴露したところ、学友たちが衝撃を受けていたのも覚えています。
それでも決定的な喧嘩をして別れるということはなく、ここまで来ました。
来てしまいました。
それがこんな形で終わってしまうというのは、ちょっと酷い気もしてきます。
う~ん。
ちょっと長湯をしてしまったでしょうか?
そろそろ寝ましょう。
あの方がひょっこり帰ってくるかもしれませんし。
そう思いながらお風呂から上がったところで突然上の方が光りだします。
えっ、まさか次元の歪みというやつですか?
私は裸なのでさすがにこの格好で引き込まれたくないのですが……
と思ったのですが、引っ張られるようなことはなく、むしろなにか落ちてきました。
当然ながら我が旦那様……
そのままお風呂に墜落しました。
何をされているのでしょうか???
朝から特に慌てた様子もなくのんびりと顔を出した執事長が私にそう告げました。
「行方不明?どこに行ったか分からないのですか?」
しかし私は驚きました。あの豚にこっそりと出て行くような能力があったことに。
「はい。朝になっていなくなったと……その……」
「言い淀まなくて結構ですよ。どうせ浮気相手と同衾していたのでしょう」
まったくあのバカは。どうしてこう節操がないのでしょうか。
あれで神殿長を目指していたとか、神に対する冒涜としか思えません。
すみません、神様。私は良き使徒ですので、とばっちりで罰さないでくださいませ。
「はい、その女が言うには忽然と消えてしまったと」
「はぁ……」
忽然と?もしかして何らかの魔法的な干渉があったのでしょうか?
あれを攫ってどうしようというのでしょうね?
今なら支度金もつけて差し上げますが……。
「それで館の中で探しても見つからないということですか?」
「そうなのです。それこそ1階のトイレの中にも、2階のトイレの中にも、裏庭の古井戸にも、庭園の倉庫の中にもいないのです」
どうして探しているのがネズミやゴキブリでもいそうな場所ばかりなのでしょうか?
「食糧庫の中にもいらっしゃいませんでしたか?」
「は?」
お腹がすいてふらっと立ち寄ったあと、閉じ込められたとかで……。
「すみません、盲点でした。探してまいります」
ちょっとこの執事長の評価を改める必要があるようです。下の方へ。
「いらっしゃいませんでした」
「そうですか……どこへ行かれたのでしょうね」
「警備兵たちを信じるとするならば館の外には出られていないハズです。それこそ塀を飛び越えたりしていればわかりませんが……」
ないですね。あの豚は塀どころか柵すら飛び越えられません。
これはもう魔法を使った誘拐を考えた方がいいかもしれません。
となると犯人からの連絡待ちですね。
どうしましょうか。
お金はあげるけど殺してもらいましょうか?
手を汚したという批判だけは回避しなければなりません。
しかし次の日になっても、その次の日になっても何の音沙汰もありませんでした。
「お願いします、グラフェルド様」
「うむ」
そして私は仕方ないので宮廷魔術師長のグラフェルド様にお願いして魔法的な干渉の有無を確認してもらうことにしました。
彼は旦那様の叔父にあたる方なので実際に頼んでくれたのは公爵様ですが。
威厳ある眼差しでソファーから立ち上がって私の横を通るときにお尻を触ろうとしやがったので蹴りたい衝動を抑えるのに必死です……。
もちろん彼の手は避けました。
なんなのでしょうか、この一族は。
公爵様へクレームを送っておきました。
「これは……」
「なにかわかりますでしょうか?」
私はもう全くこれっぽっちも信じられない気分ですが一応それらしい振る舞いで旦那様の寝室を調べるグラフェルド様に尋ねます。
「次元のひずみが開いておるのぉ。これは魔力ではない。神隠しじゃ!」
「なっ……」
疑ってすみませんでした旦那様。てっきり侍女に色目と金を使いまくってこっそりどこかに行かれたのだとばかり思っていました。
侍女たちを秘密裏に処罰する必要がなくなってホッとしました。
グラフェルド様曰く別世界に飛んでいったとのことです。
となると旦那様がわが家の悪評を振りまいてくることを心配する必要がなくなりました。
いえ、悪評は振りまくでしょうが、別世界と私が交わることはないので気にしなくてよくなりました。
もしかして神様が健気に頑張っている私のために?
こんな嬉しいことがあるのでしょうか?
あってよいのでしょうか?
もうあのバカに脅かされる日々とはおさらばできるのです。
なにか間違って抱かれて性病を移される心配もないのです。
なにか……。
なぜでしょうか。
ちょっと悲しい気分ではありますね。
旦那様のアホ。
異世界で死んでしまえ。
これは……
何かの間違いです。
絶対違います。
いなくなって寂しいなんてことはないです。
気の迷いです。
もう。
ふざけんなです。
なんなのでしょうか。
もう。
もう。
もうもうもうもうもう!
あの豚は私を牛にでもしたのでしょうか?
「ユフィ様。少し休まれた方が……」
執事長が私を気遣って仕事を引き受けてくれます。
優しいですね。
でもまだ評価は上げてあげませんが。
「ありがとうございます。それでは失礼させてもらいます」
私はそう言って執務室を離れて食事をとり、お風呂に入ります。
私は旦那様のことを好きなのでしょうか?
そんなことはないと思うのですが、幼馴染の情というやつなのでしょうか?
彼と私は幼い頃から一緒に過ごすことが多かったのです。
それは私たちが婚約していたからなのですが。
クルスローデン伯爵家はアーゼンベルク公爵家と私たちが生まれる少し前から取引をはじめ、それが軌道に乗り、今後も維持していきたいという意思表明のために私たちの婚約に至ったという経緯があります。
そのため私たちは仲良くなることを期待され、ともに学ばされ、ともに遊ばされ、成長しました。
旦那様は学びの途中でサボって抜けることが多かったですし、色恋の多い方でなぜか私にもあの女はどうで、この女はこうだみたいな話をしていました。
学院に入って普通の恋人がかわす話しというものを知って衝撃を受けたのを覚えています。
私たちの実情を暴露したところ、学友たちが衝撃を受けていたのも覚えています。
それでも決定的な喧嘩をして別れるということはなく、ここまで来ました。
来てしまいました。
それがこんな形で終わってしまうというのは、ちょっと酷い気もしてきます。
う~ん。
ちょっと長湯をしてしまったでしょうか?
そろそろ寝ましょう。
あの方がひょっこり帰ってくるかもしれませんし。
そう思いながらお風呂から上がったところで突然上の方が光りだします。
えっ、まさか次元の歪みというやつですか?
私は裸なのでさすがにこの格好で引き込まれたくないのですが……
と思ったのですが、引っ張られるようなことはなく、むしろなにか落ちてきました。
当然ながら我が旦那様……
そのままお風呂に墜落しました。
何をされているのでしょうか???
64
あなたにおすすめの小説
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる