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第16話:まかり通らない時もあるさ
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私が能力を初めて使うこととなったのは3歳の秋、収穫祭のお昼頃の出来事である。
その時、親の目がなくなった私達はこっそりと森の奥へと足を進めていた。
もちろん私がそんなことをするはずがない。
ずんずんと奥に進んでいったリボルとヴァイスを追いかける形で進まざる負えなかった、というのが正しい。
1人ならともかく相手は2人だ。
抑え込むこともできずにずるずると引きずられる形で森の奥深くへと進んでいく。
「リボル!ヴァイス!そろそろ皆のところに戻ろう!」
「カノイは臆病だな~。いっぱい収穫するためには奥に進んだほうがいいに決まっているだろ?」
「カノイ様、大丈夫です。今年も狩りは問題なく行われました。モンスターはいませんよ。」
そうはいっても森の奥深くである。
隠れていたモンスターが出てきたり、仕掛けていた罠に引っかかったりしないという保証はない。
「早く戻ろう。こんなところまで来て、もし帰れなくなったら……」
「大丈夫ですよ!このリボルがちゃんと策を考えてあります!このパンを見てください!」
そういってリボルは半分になったパンを差し出してくる。
嫌な予感がする。
「このパンを来る途中の道に落としてきました!なのでそれをたどっていけば!」
「リボル、その落としたパンなのですが、さっきからカーバンクルが食べてます。」
「なんだって!?」
カーバンクル、赤色の毛並みを持つウサギの耳に羽が生えたような生き物だ。
後ろをちょこちょことついてきたそいつはヴォイスの言う通り、落としてきたらしいパンを頬袋いっぱいに頬張っていた。
「なんてことするんだよ!?これじゃあ帰れないじゃないか!」
「リボル……他に何にも考えていなかったんですか?」
「ヴォイスだって道なんて覚えてないだろ!?」
「それは、そうだけど……。」
言い合いは平行線、続けるうちにえぐえぐと泣き声まで聞こえ始める。
「…………壁を目指して歩けばいいんじゃないかなぁ。」
「「……え?」」
そう、彼らは忘れているが、我々の村は獣除けの大きな塀に囲まれている。
つまり空を見上げて壁があるほうに歩いていけばおのずと村に着くのだ。
「な、なんだよ!簡単なことじゃないか!これで帰れるぞ!」
「さ、さすがカノイ様!地理にもお詳しくて記憶力もいいとは恐れ入ります!」
「いやぁ、ちょっと考えればわかるような……まぁいっか!とにかく帰ろうよ!みんな心配しているだろうし!」
そういって歩き出した、瞬間に衝撃音が響き渡る。
後ろを振り返ると血と断末魔。
肉が引きちぎれる音と獣の唸り声。
そこにはリボルだったものが転がっていた。
「がああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
リボルの悲鳴が森中に響き渡る。
そして、リボルを捕食した獣は、
「ウェアウルフ!?」
「ぐらあああぁぁぁ!」
「リボル!」
「あ!まって!」
ヴァイスがリボルに駆け寄るとウェアウルフは舌なめずりをして彼らに照準を合わせた。
どうしよう、逃げたい!死にたくない!死んでほしくない!じゃあどうする?なにか、いや間に合わない!どうする?どうしよう!
あぁ、そうだ
「デバッグモード!!!」
そう叫んだ瞬間に世界は停止した。
リボルを抱え上げたヴァイスも、今にも飛び掛かろうとしたウェアウルフも、私以外の誰も動かない。
命の総数は決まっている。
だからと言ってリボルが死んでいいわけがない!
私が生きてほしいと望んでいるのだから!
なら答えは簡単だ。
私は荒くなった息を整えて、改めてウェアウルフに向き直る。
「リボルが死んでいいわけがない。死ぬのは、お前だ!」
フラグというものをご存じだろうか?仮に0がない状態で1がある状態とする。
今、リボルの命は0の状態にある。だがもし、他の1の状態の誰かの命をリボルに分け与えたら?
答えは簡単だ。
そいつは死んでリボルは生きる。
私は、そういう選択をした。
「リボル!……え?」
そこには傷一つないリボルとばらばらに引き裂かれたウェアウルフがいた。
まるで現実ではないような、ふわふわと浮ついた足取りで彼らに告げる。
「…………帰ろっか。」
「え?う、うん。でも……わかった。」
「う、ん……うわ!?喰われる!……って、あれ?」
ヴァイスはリボルを背負って私の後をついてくる。
村の入り口に着くころには日も暮れて、夕日がやけに美しく輝いていた。
私達を見た大人達は口々にごめんな、と謝罪をして、泣きながら私達を抱きしめた。
そうしていると、珍しく私も泣きたくなって、大声をあげながらわんわんと泣いた。
カノイ・マークガーフ、3歳、初めて人を殺した秋の出来事である。
その時、親の目がなくなった私達はこっそりと森の奥へと足を進めていた。
もちろん私がそんなことをするはずがない。
ずんずんと奥に進んでいったリボルとヴァイスを追いかける形で進まざる負えなかった、というのが正しい。
1人ならともかく相手は2人だ。
抑え込むこともできずにずるずると引きずられる形で森の奥深くへと進んでいく。
「リボル!ヴァイス!そろそろ皆のところに戻ろう!」
「カノイは臆病だな~。いっぱい収穫するためには奥に進んだほうがいいに決まっているだろ?」
「カノイ様、大丈夫です。今年も狩りは問題なく行われました。モンスターはいませんよ。」
そうはいっても森の奥深くである。
隠れていたモンスターが出てきたり、仕掛けていた罠に引っかかったりしないという保証はない。
「早く戻ろう。こんなところまで来て、もし帰れなくなったら……」
「大丈夫ですよ!このリボルがちゃんと策を考えてあります!このパンを見てください!」
そういってリボルは半分になったパンを差し出してくる。
嫌な予感がする。
「このパンを来る途中の道に落としてきました!なのでそれをたどっていけば!」
「リボル、その落としたパンなのですが、さっきからカーバンクルが食べてます。」
「なんだって!?」
カーバンクル、赤色の毛並みを持つウサギの耳に羽が生えたような生き物だ。
後ろをちょこちょことついてきたそいつはヴォイスの言う通り、落としてきたらしいパンを頬袋いっぱいに頬張っていた。
「なんてことするんだよ!?これじゃあ帰れないじゃないか!」
「リボル……他に何にも考えていなかったんですか?」
「ヴォイスだって道なんて覚えてないだろ!?」
「それは、そうだけど……。」
言い合いは平行線、続けるうちにえぐえぐと泣き声まで聞こえ始める。
「…………壁を目指して歩けばいいんじゃないかなぁ。」
「「……え?」」
そう、彼らは忘れているが、我々の村は獣除けの大きな塀に囲まれている。
つまり空を見上げて壁があるほうに歩いていけばおのずと村に着くのだ。
「な、なんだよ!簡単なことじゃないか!これで帰れるぞ!」
「さ、さすがカノイ様!地理にもお詳しくて記憶力もいいとは恐れ入ります!」
「いやぁ、ちょっと考えればわかるような……まぁいっか!とにかく帰ろうよ!みんな心配しているだろうし!」
そういって歩き出した、瞬間に衝撃音が響き渡る。
後ろを振り返ると血と断末魔。
肉が引きちぎれる音と獣の唸り声。
そこにはリボルだったものが転がっていた。
「がああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
リボルの悲鳴が森中に響き渡る。
そして、リボルを捕食した獣は、
「ウェアウルフ!?」
「ぐらあああぁぁぁ!」
「リボル!」
「あ!まって!」
ヴァイスがリボルに駆け寄るとウェアウルフは舌なめずりをして彼らに照準を合わせた。
どうしよう、逃げたい!死にたくない!死んでほしくない!じゃあどうする?なにか、いや間に合わない!どうする?どうしよう!
あぁ、そうだ
「デバッグモード!!!」
そう叫んだ瞬間に世界は停止した。
リボルを抱え上げたヴァイスも、今にも飛び掛かろうとしたウェアウルフも、私以外の誰も動かない。
命の総数は決まっている。
だからと言ってリボルが死んでいいわけがない!
私が生きてほしいと望んでいるのだから!
なら答えは簡単だ。
私は荒くなった息を整えて、改めてウェアウルフに向き直る。
「リボルが死んでいいわけがない。死ぬのは、お前だ!」
フラグというものをご存じだろうか?仮に0がない状態で1がある状態とする。
今、リボルの命は0の状態にある。だがもし、他の1の状態の誰かの命をリボルに分け与えたら?
答えは簡単だ。
そいつは死んでリボルは生きる。
私は、そういう選択をした。
「リボル!……え?」
そこには傷一つないリボルとばらばらに引き裂かれたウェアウルフがいた。
まるで現実ではないような、ふわふわと浮ついた足取りで彼らに告げる。
「…………帰ろっか。」
「え?う、うん。でも……わかった。」
「う、ん……うわ!?喰われる!……って、あれ?」
ヴァイスはリボルを背負って私の後をついてくる。
村の入り口に着くころには日も暮れて、夕日がやけに美しく輝いていた。
私達を見た大人達は口々にごめんな、と謝罪をして、泣きながら私達を抱きしめた。
そうしていると、珍しく私も泣きたくなって、大声をあげながらわんわんと泣いた。
カノイ・マークガーフ、3歳、初めて人を殺した秋の出来事である。
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