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第120話:終身刑は一生労働刑って言ったほうが辛そうじゃない?
「う~ん……どうするかな~。」
ジェイルは通常より大ぶりな斧を持って独り言つ。
え、何その斧怖い。
「お~いジェイル!何してんの~!」
「お~カノイ様!実はさぁ。」
そう言って困ったような表情で指を指した先には角の生えた人物が泣きながら座り込んでいた。
「え、誰?」
「いやぁ誰かは知らないんだけど、実は村の備蓄庫に住み着いててな。これから罪人として首を切り落とそうとしてたんだが……。」
「え、そんなつらいことしてんの?いつもありがとうな?」
「いやいやそれはいいよ。仕事だし。それよりも、なぁ。」
困ったような、困惑したような顔をしたままジェイルが指をさらに下に動かした。
その指を追って下を見ると、
「……あ~ね?」
小さな子供が今にも泣きそうな顔でこちらを覗き込んでいた。
「第、何回だ?何回目だっけ?え、分かんない?数えてないのか~そうか~じゃあ適当に、マークガーフ村議会~!司会は村長代理のカノイ・マークガーフがお送りします~!」
「「「いえ~い。」」」
「さて、今回の議題は『共和国の移民、受け入れる?受け入れない?』問題で~す。」
「移民ならいつでもウェルカムじゃないの?」
「それが今回は備蓄庫からの窃盗罪が付加されておりま~す。」
「あぁ……まぁ結構な重罪だね。」
そう、このご時世村の備蓄庫からの窃盗は結構な重罪である。
それこそ発見し次第打ち首待ったなしなくらいには。
「でもな~子連れなんだよな~。」
「それは!お親御さんがいたほうがいいね。」
「けど罪は罪だ。罰は与えないと。」
重罪を犯した人間の子供をどう扱うか、今回の本題はそこだ。
正直に言ってしまえば両人生存が望ましいのは皆分かっているのだが、窃盗罪に与える他の刑罰が思いつかないのも事実。
というか労働力は足りているし、奴隷制とかはこの国にないので村人より下の立場というものがない。
移民も原住民も皆村人。これはマークガーフ村が発展していくために皆が周知している常識だ。
だが、ここに罪を犯した人間が入るとどうだろう?
治安の悪化……とかは今回はないかもしれないが、村人からすれば受け入れがたい部分があるのも事実だろう。
さて、どうしたものか。
「う~ん、刑期を設けて労働で返してもらうか?」
「でもその間家の村に序列ができてしまうわ。下の人間というのは差別や争いの素よ?」
「だからといって無罪の人間と同じ生活ってわけにもいかんだろう。」
「いっそのこと祖国に帰すのは?あちらで裁いてもらえば、ご家族もいるかも。」
「いや、そもそも移民になっている辺り貧困や孤立が原因の可能性が高い。」
「子を育てるのに適さない環境ってことかぁ。」
どうしたもんかな~。
あ、そうだ。
「ジェイル!被告が盗んだとされる麦の量は?」
「ん?おおよそ11日分だな。発見が遅れたから結構食っちまってた。」
「それなら、村人として受け入れて通常より多く税を納めてもらおう。」
「なるほど?」
「一応重罪だからな。治める税は10倍の110日分!今後の生活の中で必要最低限の麦以外を治めれば数年でバックできる計算だ。」
「カノイ様はそれでいいのね?」
「もちろん!提案者だしね。被告にはジェイル監視のもと少し離れたところにある一軒家を与える!そちらの開墾作業と日々の労働意欲によっては罪を軽くしてもいいだろう!子供は……一旦学校で預かるか。」
「学校なら他の子達と一緒に見ていてあげられるしいいんじゃない?」
「ジェイルの仕事が増えるけどね。」
「マジかよ。休みが多いことだけがメリットの仕事だったのになぁ。」
「まぁまぁ、ジェイルには後で新しい斧を買ってやるから。」
「それで喜ぶとでも思ってるのか?最近切れ味が悪いんだよなぁ助かる。」
「お兄ちゃんは優しいね~。」
「にーちゃは何時でも優しいよ!」
「というわけだから。今日から君達は家の住人だ。色々とよろしくね!」
「あぁ……ありがとうございます……ありがとうございます……!」
「あいあとうごじゃいまふ。」
「うん、とりあえず君は言葉の練習からだな!」
多分2歳くらいだろう、家の2歳児はペラペラしゃべるぞ!
「よし!じゃあ名前を教えてくれ!」
「私はフキと申します。この子はミツキといいます。」
「みちゅき、3ちゃい」
おっと~?まさかの3歳?さては栄養が足りてないな?
ジェイルの言っていた通り貧困からの移民だったか……じゃあとりあえず、
「ご飯食べるぞごはん!腹が減っては労働もできん!」
「「「お~!カノイ様のおごり?」」」
「おう!いいぞ~!今日は奮発しちゃう!材料買って来い!メイド達に調理お願いするから!」
まぁなんやかんやで命を奪わずに済んだ。
今更かもしれないが、命は大切だからね。
こうして新たにフキとミツキという仲間が増えた。
目指せ100人村!
余談だが、この噂が広まったのか共和国移民が多く訪れることとなったりなかったり。
カノイ・マークガーフ、29歳、人の罪の重さについて考えさせられる秋の出来事である。
ジェイルは通常より大ぶりな斧を持って独り言つ。
え、何その斧怖い。
「お~いジェイル!何してんの~!」
「お~カノイ様!実はさぁ。」
そう言って困ったような表情で指を指した先には角の生えた人物が泣きながら座り込んでいた。
「え、誰?」
「いやぁ誰かは知らないんだけど、実は村の備蓄庫に住み着いててな。これから罪人として首を切り落とそうとしてたんだが……。」
「え、そんなつらいことしてんの?いつもありがとうな?」
「いやいやそれはいいよ。仕事だし。それよりも、なぁ。」
困ったような、困惑したような顔をしたままジェイルが指をさらに下に動かした。
その指を追って下を見ると、
「……あ~ね?」
小さな子供が今にも泣きそうな顔でこちらを覗き込んでいた。
「第、何回だ?何回目だっけ?え、分かんない?数えてないのか~そうか~じゃあ適当に、マークガーフ村議会~!司会は村長代理のカノイ・マークガーフがお送りします~!」
「「「いえ~い。」」」
「さて、今回の議題は『共和国の移民、受け入れる?受け入れない?』問題で~す。」
「移民ならいつでもウェルカムじゃないの?」
「それが今回は備蓄庫からの窃盗罪が付加されておりま~す。」
「あぁ……まぁ結構な重罪だね。」
そう、このご時世村の備蓄庫からの窃盗は結構な重罪である。
それこそ発見し次第打ち首待ったなしなくらいには。
「でもな~子連れなんだよな~。」
「それは!お親御さんがいたほうがいいね。」
「けど罪は罪だ。罰は与えないと。」
重罪を犯した人間の子供をどう扱うか、今回の本題はそこだ。
正直に言ってしまえば両人生存が望ましいのは皆分かっているのだが、窃盗罪に与える他の刑罰が思いつかないのも事実。
というか労働力は足りているし、奴隷制とかはこの国にないので村人より下の立場というものがない。
移民も原住民も皆村人。これはマークガーフ村が発展していくために皆が周知している常識だ。
だが、ここに罪を犯した人間が入るとどうだろう?
治安の悪化……とかは今回はないかもしれないが、村人からすれば受け入れがたい部分があるのも事実だろう。
さて、どうしたものか。
「う~ん、刑期を設けて労働で返してもらうか?」
「でもその間家の村に序列ができてしまうわ。下の人間というのは差別や争いの素よ?」
「だからといって無罪の人間と同じ生活ってわけにもいかんだろう。」
「いっそのこと祖国に帰すのは?あちらで裁いてもらえば、ご家族もいるかも。」
「いや、そもそも移民になっている辺り貧困や孤立が原因の可能性が高い。」
「子を育てるのに適さない環境ってことかぁ。」
どうしたもんかな~。
あ、そうだ。
「ジェイル!被告が盗んだとされる麦の量は?」
「ん?おおよそ11日分だな。発見が遅れたから結構食っちまってた。」
「それなら、村人として受け入れて通常より多く税を納めてもらおう。」
「なるほど?」
「一応重罪だからな。治める税は10倍の110日分!今後の生活の中で必要最低限の麦以外を治めれば数年でバックできる計算だ。」
「カノイ様はそれでいいのね?」
「もちろん!提案者だしね。被告にはジェイル監視のもと少し離れたところにある一軒家を与える!そちらの開墾作業と日々の労働意欲によっては罪を軽くしてもいいだろう!子供は……一旦学校で預かるか。」
「学校なら他の子達と一緒に見ていてあげられるしいいんじゃない?」
「ジェイルの仕事が増えるけどね。」
「マジかよ。休みが多いことだけがメリットの仕事だったのになぁ。」
「まぁまぁ、ジェイルには後で新しい斧を買ってやるから。」
「それで喜ぶとでも思ってるのか?最近切れ味が悪いんだよなぁ助かる。」
「お兄ちゃんは優しいね~。」
「にーちゃは何時でも優しいよ!」
「というわけだから。今日から君達は家の住人だ。色々とよろしくね!」
「あぁ……ありがとうございます……ありがとうございます……!」
「あいあとうごじゃいまふ。」
「うん、とりあえず君は言葉の練習からだな!」
多分2歳くらいだろう、家の2歳児はペラペラしゃべるぞ!
「よし!じゃあ名前を教えてくれ!」
「私はフキと申します。この子はミツキといいます。」
「みちゅき、3ちゃい」
おっと~?まさかの3歳?さては栄養が足りてないな?
ジェイルの言っていた通り貧困からの移民だったか……じゃあとりあえず、
「ご飯食べるぞごはん!腹が減っては労働もできん!」
「「「お~!カノイ様のおごり?」」」
「おう!いいぞ~!今日は奮発しちゃう!材料買って来い!メイド達に調理お願いするから!」
まぁなんやかんやで命を奪わずに済んだ。
今更かもしれないが、命は大切だからね。
こうして新たにフキとミツキという仲間が増えた。
目指せ100人村!
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