転生賢者は安心して死にたい ~転生者カノイの一生~

文字の大きさ
135 / 244

第134話:可愛い子には旅をさせよと言うが不安なものは不安

風邪も治り、平穏な日常が戻ってきた春この頃。

ルーナの誕生日も終わり成人の儀、を行った次の日。

「ママ、我は自立するぞ。」

「え。」

以前ルーが言っていたことを思い出す。

ウェアウルフは自分の群れを持つために旅に出るのだとか。

ついにその時が来てしまったのか……。

しかし、ルーナが自分で決めたことだ仕方がない。

「ルーナ、本気で家を出るんだな?」

「うん。」

「ルーナ、ウェアウルフは強者に絶対服従だ。」

「うん……うん?」

「家を出ていくなら私を越えてからいけー!」

「大人げないぞ長殿!」

いつも冷静なルーが焦ったように叫ぶ。

そう、思えばルーも私のほうが強いから私の傘下についているのだ。

つまりルーナより私のほうが強ければルーナは私の傘下につく!

「さぁ!どこからでもかかってこい!」

「我!ママを超える!」

「えぇい止めんか!」



「うぅ……掟とか知らんし……マークガーフ家の家訓は家族円満なんだぞ……?」

「仕方がないことなのだ。我らは旅に出て群れを作り、子を育て、終の棲家で余生を過ごす。そうして繋がれてきた命だ。」

「……。」

それは分かっている。

実際この村にいてもウェアウルフの仲間はそう多くはできないだろう。

成人したルーナの伴侶も、仮にウェアウルフに限定すると選択肢はない状態といえる。

この子の自由のためには本人の意思を尊重してやるべきだ。

けど……。

「ママ、大丈夫。たまには帰ってくる。」

「本当に……?本当に本当だな?」

「うむ。我は約束は守る子だ。」

「そうだな……。そうだったかな?」

結構やんちゃしていた気もするが?

「だ、大丈夫だ!家に位帰ってこれる!」

「そうだな。……ルーナを、信じるよ。」

頭を撫でてやりながら目線を合わせる。

力強い目と目が合って、改めてその覚悟の強さを思い知る。

それからルーナは自室に戻り、旅立つ準備をしていた。

お気に入りのおもちゃと生活用品、皆で作った何かわからないオブジェクトなどを鞄に詰めていく。

部屋ががらりと広く感じる程に片付くと、まるでいつもの散歩のような足取りでルーナは玄関へと向かっていく。

「じゃあ、行ってくる。」

「うん……絶対無事に帰ってくるんだぞ?」

「ウェアウルフとしての誇りを……いや、お前は我らの子であるということを忘れるな。」

「うむ、絶対に無事に帰ってくる。」

こうしてルーナは家を出ていった。



しばらくして。

「え、隣町手前の空き地に家が建ってる?」

隣町までの道のりは意外と短い。

具体的には一戸建て10件分くらいの距離だ。

つまりその間に家ができたということはどちらの領になるかという話し合いをしなければならない。

「いったい誰だ~?お隣さんとの話し合いって結構面倒くさいんだぞ?」

まぁ隣村を治めているシグナルさんのところは父上と知己の仲なのでそこまで問題にはならないだろうが……本当だったら大問題になっているところだぞ?

家の持ち主になんというべきか考えながら空き地に向かう。

そこには耳の生えた少年が、数人立っていた。

「ルーナ!?それにヘリュックにカーロ!?」

「む?ママか?」

「ママか?じゃないよ!?これどういう状況!?」

「うむ、ママ、我はここに"ルーナ村"を築くぞ!」

「え!?えー!?」

あんな劇的な別れ方をしたのに!?

ルーナ村!?

というかヘリュックとカーロも連れてきてたのか!?

色々あれ過ぎて頭が追い付かないんだけど!?

「家を建ててもらったから3人でここに住む。シグナルじぃには許可をもらってきた。」

「まさかの根回し済み!?」

用意周到だな!?

「ルーナ様が「伴侶に迎えてやるからついて来い」って言ったんだ~。」

「ルーナ様かっこいいから子供達皆の憧れなんだ~。」

ヘリュックとカーロは新しい家の床で伸びをしながらほのぼのと話す。

選択肢がないとか思っていた私が馬鹿だった……しっかり口説き落としとる!

「…………そりゃあ無事帰ってくるだろうね!こんな近場ならな!」

「うむ!ここを拠点に旅をして仲間を集める!そして群れを大きくする!そうすればパパもママも満足だ!」

「え。」

もしかして、あの喧嘩を覚えていたのか?

いや、そんなはずはない。だってあの頃はまだ生まれたばかりの頃だ。

でも、もしかしたら……。

「そうか、ルーナは優しいな。」

「うむ!パパとママの子だからな!」

「あはは!でもよかったよ。まだ小さいのに、目につかないところに行ってしまうと思っていたから。」

「……家族と離れるのは寂しいからな。」

「ルー!お前知ってたのか!?」

「数日前からこの辺りが騒がしかったのでな。先に話を聞いていた。……長殿、お前はこれで満足か?」

「……うん!とっても満足だ!」

こうしてルーナが家の近所に居を構えることとなった。

ルーナ村、大きくなるといいな。

カノイ・マークガーフ、33歳、別れと再開のサイクルが意外と早い春の出来事である。
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。