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第166話:泣きたいときは泣けば良いよ
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「パパが旅行に誘うなんて珍しいね?」
「ははは、旅行じゃなくて視察だよ。」
そういって父上は馬車を走らせる。
「カノイもやってみるかい?」
「あ、やってみたいかも。馬車って乗るの専門だったからな~。」
そういって手綱を手渡されてあたふたと握り直す。
突然のチャレンジは、まぁうまく行った。
「上手いぞカノイ!そのままとなり村までダッシュだ!」
「ダッシュ!?もう!どうなっても知らないからね!」
そうして私達はなかなかの速度でとなり村を目指した。
「まずはシュテル君のところだ。何時も通り、小麦と綿を交換する。」
「ふむふむ。」
「ついでに近況報告もだな。大体のことはサリバン家の通信網で伝わっているが、細々としたことは直接でないと伝わらないからな。」
「なるほど。」
「それが終わったら次の村に向かう。おまえも昔見たひまわり畑が綺麗な村だよ。」
「了解!」
「この村では油を貰う。モンスターの肉と交換だ。ついでにお土産のドライフラワーを忘れるな!」
「あぁ、あのママの部屋に溢れかえってる。」
「アラン達の家に行った時からのお気に入りなんだ。喜ぶぞ~?」
「それはパパからの贈り物だからであってひまわりが滅茶苦茶好きって訳ではないと思うよ?」
「なん……だと!?」
「この町ではガラスや鉄を交換して貰うんだ。多めに貰えたら次の町で加工品と交換して貰える。」
「そうなんだ。」
「ここまででなにか質問あるか?」
「ないよ。全部知ってる。」
昔から父上が頑張って外交をしてきたことは知っている。
よい関係を築くために小麦を必要数より多く持っていくことも知っている。
ぜーんぶ知ってたよ。
「そ、そうか?じゃあ次の町に向かうか!」
本当に全部知っている。
父と母の寿命がもう長くはないことも、少し足を痛めたのかたまに階段がきつそうなことも。
全部わかった上で何時も通りの生活を送っている。
だって2人がそう望んでいるから。
「これで私がいなくなってもカノイが何とかしてくれるな!」
「……。」
自分達がいなくなっても、皆が何時も通り生活できるように。
そう彼らが望んでいるから。
なのに、
「……どうした?カノイ。そんなに泣いて。」
「……。」
溢れる涙が止められなかった。
40年以上一緒にいてくれた、大好きな家族との別れを想像すると、どうしても、自然と溢れてきてしまうのだ。
きっと、その時にはきっと、何時も通りの笑顔で見送るから、今は、ただ泣かせてほしい。
「カノイもまだまだ子供だったか。すまないな、全部押し付けて。」
抱き締められてポンポンと背中を叩かれる。
私は一生、この温もりを忘れないだろう。
カノイ・マークガーフ、41歳、過ぎ去る時間をこの時だけは忘れたかった春の出来事である。
「ははは、旅行じゃなくて視察だよ。」
そういって父上は馬車を走らせる。
「カノイもやってみるかい?」
「あ、やってみたいかも。馬車って乗るの専門だったからな~。」
そういって手綱を手渡されてあたふたと握り直す。
突然のチャレンジは、まぁうまく行った。
「上手いぞカノイ!そのままとなり村までダッシュだ!」
「ダッシュ!?もう!どうなっても知らないからね!」
そうして私達はなかなかの速度でとなり村を目指した。
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「ふむふむ。」
「ついでに近況報告もだな。大体のことはサリバン家の通信網で伝わっているが、細々としたことは直接でないと伝わらないからな。」
「なるほど。」
「それが終わったら次の村に向かう。おまえも昔見たひまわり畑が綺麗な村だよ。」
「了解!」
「この村では油を貰う。モンスターの肉と交換だ。ついでにお土産のドライフラワーを忘れるな!」
「あぁ、あのママの部屋に溢れかえってる。」
「アラン達の家に行った時からのお気に入りなんだ。喜ぶぞ~?」
「それはパパからの贈り物だからであってひまわりが滅茶苦茶好きって訳ではないと思うよ?」
「なん……だと!?」
「この町ではガラスや鉄を交換して貰うんだ。多めに貰えたら次の町で加工品と交換して貰える。」
「そうなんだ。」
「ここまででなにか質問あるか?」
「ないよ。全部知ってる。」
昔から父上が頑張って外交をしてきたことは知っている。
よい関係を築くために小麦を必要数より多く持っていくことも知っている。
ぜーんぶ知ってたよ。
「そ、そうか?じゃあ次の町に向かうか!」
本当に全部知っている。
父と母の寿命がもう長くはないことも、少し足を痛めたのかたまに階段がきつそうなことも。
全部わかった上で何時も通りの生活を送っている。
だって2人がそう望んでいるから。
「これで私がいなくなってもカノイが何とかしてくれるな!」
「……。」
自分達がいなくなっても、皆が何時も通り生活できるように。
そう彼らが望んでいるから。
なのに、
「……どうした?カノイ。そんなに泣いて。」
「……。」
溢れる涙が止められなかった。
40年以上一緒にいてくれた、大好きな家族との別れを想像すると、どうしても、自然と溢れてきてしまうのだ。
きっと、その時にはきっと、何時も通りの笑顔で見送るから、今は、ただ泣かせてほしい。
「カノイもまだまだ子供だったか。すまないな、全部押し付けて。」
抱き締められてポンポンと背中を叩かれる。
私は一生、この温もりを忘れないだろう。
カノイ・マークガーフ、41歳、過ぎ去る時間をこの時だけは忘れたかった春の出来事である。
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