4 / 12
第4話 帝都で婚活リサーチ開始!
しおりを挟む
帝国の首都――グランヴェル帝都。
石造りの荘厳な城門をくぐり抜けると、目に飛び込んでくるのは壮大な建築群と、活気に満ちた人々の姿。
「……ようこそ。我が帝都へ」
隣に立つのは、皇帝ディアス・ヴァルグランその人。
その声音は重厚で、威厳に満ちていた。
(おおお、カッコいい! これは完全にラスボス兼ヒーローポジション! ……なんだけど)
心の中でこっそり首を傾げる。
ここまで来て、まだ告白の一言もない。
差し伸べた手で導いてくれるけれど、あくまで「客人」としての扱い。
(……あれ? 拍子抜け。もっとこう、「俺の妃になれ」とか迫られると思ってたのに)
むしろ、これならむちゃくちゃ動きやすいではないか。
(よし! 帝国の社交界、婚活リサーチ開始よ!)
―――
「帝国貴族の方々との顔合わせの場を設けました」
案内役の執務官が丁寧に告げる。
「ありがとうございます。ぜひぜひ!」
わたくしは即答した。
――といっても、表向きは「追放された令嬢のための社交場慣れ」。
でも実際には、もう完全に「婚活市場視察ツアー」である。
煌びやかな広間に集まった帝国の貴族たち。
細身で優雅な青年、落ち着いた壮年の紳士、隣国から訪れている王族の姿もちらほら。
(ふむふむ、なかなかの顔ぶれじゃない。身分も悪くないし、みんな仕事できそうな感じ……!)
わたくしは笑顔を絶やさず、ひとりひとりに挨拶しては、内心で採点表をつけていった。
「彼は誠実そうだけど……趣味が狩猟ばっかりって、ちょっと合わないわね」
「こっちは経済に明るそう。でも私より喋るの遅い人は合わないなぁ……」
「おや、あの隣国の王族……見た目はいいけど、笑顔が軽いわ。遊び人タイプね、減点!」
……などと、心の中で赤ペンチェックを入れまくっていたその時。
「……アリサ」
背後から低く名前を呼ばれ、わたくしはビクリと肩を跳ねさせた。
振り返れば、黒衣の皇帝ディアスが立っている。
その視線は冷静そのもの――だが、ほんのり眉間に皺が寄っていた。
(あ、これ……めっちゃ見られてた? 私の婚活リサーチ、ばっちりバレてる!?)
皇帝は一歩近づき、わたくしの手に軽く触れた。
その仕草ひとつで、周囲のざわめきがすっと収まる。
「……帝国の客人であることを忘れずに。目移りばかりしていては、危うい」
威厳たっぷりの忠告。
でも、その声音の端にほんの僅かな――焦りが滲んでいたように思えた。
(……え? 今の、もしかして嫉妬……? いやいや、そんな。だってまだ告白もしてないのに――)
わたくしはにやりと心の中で笑いながら、にっこりと皇帝に会釈した。
「ご忠告、感謝いたしますわ。……でも私は、未来のために勉強熱心なだけですの」
その瞬間、皇帝ディアスの目がわずかに見開かれた。
そして、何か言いかけて……結局、口を閉じる。
――そう、まだこの時は。
彼の「本心」が大舞踏会まで隠されることになるなど、誰も知らなかった。
石造りの荘厳な城門をくぐり抜けると、目に飛び込んでくるのは壮大な建築群と、活気に満ちた人々の姿。
「……ようこそ。我が帝都へ」
隣に立つのは、皇帝ディアス・ヴァルグランその人。
その声音は重厚で、威厳に満ちていた。
(おおお、カッコいい! これは完全にラスボス兼ヒーローポジション! ……なんだけど)
心の中でこっそり首を傾げる。
ここまで来て、まだ告白の一言もない。
差し伸べた手で導いてくれるけれど、あくまで「客人」としての扱い。
(……あれ? 拍子抜け。もっとこう、「俺の妃になれ」とか迫られると思ってたのに)
むしろ、これならむちゃくちゃ動きやすいではないか。
(よし! 帝国の社交界、婚活リサーチ開始よ!)
―――
「帝国貴族の方々との顔合わせの場を設けました」
案内役の執務官が丁寧に告げる。
「ありがとうございます。ぜひぜひ!」
わたくしは即答した。
――といっても、表向きは「追放された令嬢のための社交場慣れ」。
でも実際には、もう完全に「婚活市場視察ツアー」である。
煌びやかな広間に集まった帝国の貴族たち。
細身で優雅な青年、落ち着いた壮年の紳士、隣国から訪れている王族の姿もちらほら。
(ふむふむ、なかなかの顔ぶれじゃない。身分も悪くないし、みんな仕事できそうな感じ……!)
わたくしは笑顔を絶やさず、ひとりひとりに挨拶しては、内心で採点表をつけていった。
「彼は誠実そうだけど……趣味が狩猟ばっかりって、ちょっと合わないわね」
「こっちは経済に明るそう。でも私より喋るの遅い人は合わないなぁ……」
「おや、あの隣国の王族……見た目はいいけど、笑顔が軽いわ。遊び人タイプね、減点!」
……などと、心の中で赤ペンチェックを入れまくっていたその時。
「……アリサ」
背後から低く名前を呼ばれ、わたくしはビクリと肩を跳ねさせた。
振り返れば、黒衣の皇帝ディアスが立っている。
その視線は冷静そのもの――だが、ほんのり眉間に皺が寄っていた。
(あ、これ……めっちゃ見られてた? 私の婚活リサーチ、ばっちりバレてる!?)
皇帝は一歩近づき、わたくしの手に軽く触れた。
その仕草ひとつで、周囲のざわめきがすっと収まる。
「……帝国の客人であることを忘れずに。目移りばかりしていては、危うい」
威厳たっぷりの忠告。
でも、その声音の端にほんの僅かな――焦りが滲んでいたように思えた。
(……え? 今の、もしかして嫉妬……? いやいや、そんな。だってまだ告白もしてないのに――)
わたくしはにやりと心の中で笑いながら、にっこりと皇帝に会釈した。
「ご忠告、感謝いたしますわ。……でも私は、未来のために勉強熱心なだけですの」
その瞬間、皇帝ディアスの目がわずかに見開かれた。
そして、何か言いかけて……結局、口を閉じる。
――そう、まだこの時は。
彼の「本心」が大舞踏会まで隠されることになるなど、誰も知らなかった。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
悪役令嬢、婚約破棄されたので見返してみたら今さら溺愛されました
sika
恋愛
婚約者に裏切られ、婚約破棄された悪役令嬢リリアナ。
涙も枯れたそのとき、彼女は決意する。「もう誰にも侮られない」。
隣国で自立し、転生者の知識で成功を手にした彼女の前に、今さら後悔した元婚約者が現れる――。
これは、“ざまぁ”と“溺愛”が交差する、逆転恋愛ストーリー。
プライドを捨てた王子、傷ついても立ち上がる令嬢。
求め合う二人の行方は、赦しか、それとも別れか――。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
婚約破棄されたので辺境伯令嬢は自由に生きます~冷酷公爵の過保護が過ぎて困ります!~
sika
恋愛
「君のような女と婚約していたなど、恥だ!」
公爵嫡男に突然婚約を破棄された辺境伯令嬢リーゼは、すべてを捨てて故郷の領地へ戻る決意をした。
誰にも期待せず、ひっそりと生きようとするリーゼの前に現れたのは、冷酷と噂される隣国の公爵・アルヴィン。
彼はなぜかリーゼにだけ穏やかで優しく、彼女を守ることに執着していて――。
「君はもう誰にも踏みにじられない。俺が保証しよう」
呪いのような過去を断ち切り、真実の愛を掴むざまぁ×溺愛ラブストーリー!
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる