ボケるな執事!俺は異世界でも真面目に生きたいんだ!

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第32話:お礼返しだこのやろう!!

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「ふっふっふ……ふっふっふ……。」

その朝、屋敷の廊下に響く不穏な笑い声。

「……レオン様、ご気分が優れませんか?」

「いや、超元気。むしろ元気すぎて爆発しそうだわ。」

「ではお薬を――」

「そうじゃねぇよ!!クラウス、お前の話だ!!」

クラウスはきょとんとした顔で立っている。
その姿に、レオンは指を突きつけて叫んだ。

「風邪で寝込んだ俺に、おかゆの代わりにスイーツ出した罪、覚えてるか!?」

「はい、心温まる献立だったかと。」

「温まりすぎて甘ったるかったわ!!」

ということで――

「今日は俺が、お前に“お礼返し”してやる!!」

「お礼返し、ですか?」

「そうだ!お前の好きな“穏やかな日常”ってやつを、逆手に取ってやる!!」

その日のクラウスの一日は、なぜか“完璧に整えられた予定表”から始まった。

「八時:紅茶時間。九時:掃除。十時:散歩。そして十一時:読書……?」

「どうだ、計画的だろ。全部俺が決めた。」

「……なるほど、“真面目すぎるレオン様モード”ですね。」

「その通りだ。今日はお前がツッコミ入れる番だぞ!」

「……ふふ。」

「笑うなああああああ!!」

紅茶を淹れるクラウスに、レオンはにっこりと言う。

「さあ、どうぞ。今日は俺が“味の確認”してやるからな。」

「……かしこまりました。ではどうぞ。」

ごくり。

「……って、またなんで塩入ってんだよぉぉぉ!!!」

「おや、今回はレオン様のツッコミを引き出す目的で――。」

「俺の努力が一瞬で水泡にぃぃぃ!!!」

その後も、読書時間にはクラウスが“料理本で詩を朗読”したり、
散歩中には“突然空中一回転”したり、
掃除中には“モップで舞い踊ったり”……。

すべて、レオンの“逆襲計画”を打ち砕く天然の嵐。

夕暮れ。

レオンはぐったりとソファに倒れ込んでいた。

「……もう、俺が普通になるのは無理なんだな……。」

「そんなことはございません。」

「……え?」

「レオン様は、十分すぎるほど“真面目”で“優しく”て、“愛すべきご主人様”です。」

「…………な、なんで急に真面目になるんだよ。」

「たまには、こちらも“お礼返し”を。」

クラウスがそう言って微笑んだ瞬間、レオンの顔は爆発しそうなほど赤くなった。

「……ずるい、ほんとずるい、お前……!」

レオン・フェルドリン、19歳。
逆襲に失敗し、今度こそ自分が溶ける番だった領主。

クラウス・イーデン、27歳。
主の企みをすべて受け止め、愛し返す天然執事。

――今日も、フェルドリン家の主従ラブコメは絶好調です。
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