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第3話 「独占欲と胃痛の宴」
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ギルドの掲示板前で依頼を探していると、受付嬢が手招きしてきた。
「レイリさん、セシルさん、今日は新加入者歓迎の宴会がありますよ!」
「宴会? 昼間から?」
「はい! お酒も食事も無料です!」
無料と聞いて、俺の中の庶民魂が震えた。
即答で参加表明。
……が、隣のセシルは眉ひとつ動かさない。
「……必要ない」
「何が必要ないだ! こういうのは人脈作りだぞ!」
押し問答の末、俺が強制的に腕を引いてギルドホールの奥へ。
―――
酒樽が並び、テーブルには肉料理とパン、スープ、そしてよくわからない異世界の果物が山盛り。
既に酔っぱらった冒険者たちが歌い、踊り、笑っている。
「おお、新入りだな!」
真っ先に声をかけてきたのは、黒髪の軽装剣士――リードと名乗る青年だ。
二十代前半、軽いノリで笑顔が爽やか。
……こういうタイプ、社交場ではやたらモテる。
「よろしくな、レイリ。バフ師だって? 珍しいな。今度俺のパーティにも――」
「無理」
背後から低い声。
セシルが俺の肩をがっしり掴んでいる。
リードが目を瞬かせた。
「え……?」
「レイリは俺専属。譲らない」
(いや言い方! ほんと誤解されるから!)
―――
さらに別の方向から、ローブ姿の女性が近づいてきた。
栗色の長髪、琥珀色の瞳、落ち着いた雰囲気。
自己紹介によると、名前はミラ。王立魔法学院出身の新米魔法使いらしい。
「専属バフ師……面白いわね。支援職は貴重だし、連携を学べば戦術の幅が広がるわ」
「あ、そうなんですか?」
「ええ。よければ今度、一緒に――」
「無理」
……まただ。
俺は頭を抱えた。
「……セシル、おまえさぁ……」
「俺以外と組ませない」
ミラはくすっと笑い、「仲がいいのね」とだけ言って去っていった。
なんだろう、あの余裕……逆に怖い。
―――
結局、宴会中ずっとセシルは俺から半径一メートル以上離れず、近づいてくる人間を全部撃退した。
気づけば俺は、肉を片手にセシルの壁役をしているような状態。
「なあセシル、俺、今日なんのために来たんだ?」
「……食事」
「おまえも食ってるだけだろ!」
周囲の冒険者たちは、笑いながらも「仲いいなー」とか「夫婦かよ」とか好き勝手言っていた。
……胃が痛い。
―――
夜も更け、宴会は完全にカオス状態になっていた。
テーブルの下で寝てる奴、歌いながら椅子に立つ奴、厨房から勝手に肉を持ち出す奴……。
俺は半分呆れながらも、セシルの横で水を飲んでいた。
「……そろそろ帰るか?」
「うん」
そう言って立ち上がったとき、ギルドの入口がバン!と開く。
荒い息をつきながら、鎧姿の冒険者が飛び込んできた。
「西区の倉庫で魔獣が暴れてる! 近くの奴、応援してくれ!」
途端に場の空気が変わる。
酒臭い笑い声が消え、冒険者たちが武器を掴んで立ち上がる。
―――
俺とセシルも現場へ向かうと、倉庫の壁がぶち破られ、四足の影が暴れていた。
黒い毛並みの狼型魔獣――体長は三メートル近い。
「でけぇ……」
「危ない、下がれ!」
前にいた冒険者が吹き飛ばされる。
その中には、宴会で話しかけてきたリードとミラの姿もあった。
「リード!」
「くそっ……速すぎて、狙えねぇ!」
ミラが詠唱を試みるが、狼型が距離を詰める方が早い。
俺は即座にセシルにバフをかける。
「セシル、右から回れ!」
「了解」
―――
バフを受けたセシルの動きは別格だった。
地面を蹴った瞬間、視界から消えたかと思うほどの速度で狼型の懐へ。
剣が一閃し、後脚の腱を断ち切る。
「今だ、リード!」
「おう!」
リードが大剣を振り下ろし、前脚を押さえ込む。
その隙にミラが魔法を放ち、雷光が狼型の全身を貫いた。
「……終わりか?」
巨大な体が崩れ落ち、辺りに静寂が戻る。
俺はようやく息を吐いた。
―――
「助かったぜ、レイリ。あんたのバフ、マジでやべぇな」
リードが笑いながら肩を叩く。
……その瞬間、背後から冷気。
「……触るな」
セシルが無表情で立っていた。
(あ、まただ……)
ミラも「本当に仲がいいのね」と笑うが、目が鋭く光っているのを俺は見逃さなかった。
なんか、この人はこの人で別方向に怖い。
―――
ギルドに戻ると、宴会の残りの料理がそのまま置かれていた。
誰も片付ける気力がなかったらしい。
「……腹減った」
「おまえ、戦闘直後にそれ言うなよ」
パンをかじるセシルを見ながら、俺はなんとなく思った。
この相棒、過保護で面倒くさいけど――
結局俺も、こいつが隣にいるのが一番安心するんだよな。
「レイリさん、セシルさん、今日は新加入者歓迎の宴会がありますよ!」
「宴会? 昼間から?」
「はい! お酒も食事も無料です!」
無料と聞いて、俺の中の庶民魂が震えた。
即答で参加表明。
……が、隣のセシルは眉ひとつ動かさない。
「……必要ない」
「何が必要ないだ! こういうのは人脈作りだぞ!」
押し問答の末、俺が強制的に腕を引いてギルドホールの奥へ。
―――
酒樽が並び、テーブルには肉料理とパン、スープ、そしてよくわからない異世界の果物が山盛り。
既に酔っぱらった冒険者たちが歌い、踊り、笑っている。
「おお、新入りだな!」
真っ先に声をかけてきたのは、黒髪の軽装剣士――リードと名乗る青年だ。
二十代前半、軽いノリで笑顔が爽やか。
……こういうタイプ、社交場ではやたらモテる。
「よろしくな、レイリ。バフ師だって? 珍しいな。今度俺のパーティにも――」
「無理」
背後から低い声。
セシルが俺の肩をがっしり掴んでいる。
リードが目を瞬かせた。
「え……?」
「レイリは俺専属。譲らない」
(いや言い方! ほんと誤解されるから!)
―――
さらに別の方向から、ローブ姿の女性が近づいてきた。
栗色の長髪、琥珀色の瞳、落ち着いた雰囲気。
自己紹介によると、名前はミラ。王立魔法学院出身の新米魔法使いらしい。
「専属バフ師……面白いわね。支援職は貴重だし、連携を学べば戦術の幅が広がるわ」
「あ、そうなんですか?」
「ええ。よければ今度、一緒に――」
「無理」
……まただ。
俺は頭を抱えた。
「……セシル、おまえさぁ……」
「俺以外と組ませない」
ミラはくすっと笑い、「仲がいいのね」とだけ言って去っていった。
なんだろう、あの余裕……逆に怖い。
―――
結局、宴会中ずっとセシルは俺から半径一メートル以上離れず、近づいてくる人間を全部撃退した。
気づけば俺は、肉を片手にセシルの壁役をしているような状態。
「なあセシル、俺、今日なんのために来たんだ?」
「……食事」
「おまえも食ってるだけだろ!」
周囲の冒険者たちは、笑いながらも「仲いいなー」とか「夫婦かよ」とか好き勝手言っていた。
……胃が痛い。
―――
夜も更け、宴会は完全にカオス状態になっていた。
テーブルの下で寝てる奴、歌いながら椅子に立つ奴、厨房から勝手に肉を持ち出す奴……。
俺は半分呆れながらも、セシルの横で水を飲んでいた。
「……そろそろ帰るか?」
「うん」
そう言って立ち上がったとき、ギルドの入口がバン!と開く。
荒い息をつきながら、鎧姿の冒険者が飛び込んできた。
「西区の倉庫で魔獣が暴れてる! 近くの奴、応援してくれ!」
途端に場の空気が変わる。
酒臭い笑い声が消え、冒険者たちが武器を掴んで立ち上がる。
―――
俺とセシルも現場へ向かうと、倉庫の壁がぶち破られ、四足の影が暴れていた。
黒い毛並みの狼型魔獣――体長は三メートル近い。
「でけぇ……」
「危ない、下がれ!」
前にいた冒険者が吹き飛ばされる。
その中には、宴会で話しかけてきたリードとミラの姿もあった。
「リード!」
「くそっ……速すぎて、狙えねぇ!」
ミラが詠唱を試みるが、狼型が距離を詰める方が早い。
俺は即座にセシルにバフをかける。
「セシル、右から回れ!」
「了解」
―――
バフを受けたセシルの動きは別格だった。
地面を蹴った瞬間、視界から消えたかと思うほどの速度で狼型の懐へ。
剣が一閃し、後脚の腱を断ち切る。
「今だ、リード!」
「おう!」
リードが大剣を振り下ろし、前脚を押さえ込む。
その隙にミラが魔法を放ち、雷光が狼型の全身を貫いた。
「……終わりか?」
巨大な体が崩れ落ち、辺りに静寂が戻る。
俺はようやく息を吐いた。
―――
「助かったぜ、レイリ。あんたのバフ、マジでやべぇな」
リードが笑いながら肩を叩く。
……その瞬間、背後から冷気。
「……触るな」
セシルが無表情で立っていた。
(あ、まただ……)
ミラも「本当に仲がいいのね」と笑うが、目が鋭く光っているのを俺は見逃さなかった。
なんか、この人はこの人で別方向に怖い。
―――
ギルドに戻ると、宴会の残りの料理がそのまま置かれていた。
誰も片付ける気力がなかったらしい。
「……腹減った」
「おまえ、戦闘直後にそれ言うなよ」
パンをかじるセシルを見ながら、俺はなんとなく思った。
この相棒、過保護で面倒くさいけど――
結局俺も、こいつが隣にいるのが一番安心するんだよな。
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