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第5話 「バフ師争奪戦」
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ギルドに行くと、受付嬢が申し訳なさそうに言った。
「すみません……今回の依頼、ギルドから指定がありまして。リードさんとミラさんと、合同でお願いします」
セシルが無言でこちらを見た。
……いや、そんな「断れ」の目すんな。規定なんだから。
「依頼内容は南の丘陵地帯での盗賊団討伐です。最近、商隊への被害が増えてまして」
「盗賊か……人間相手か」
前世ではニュースの中だけの話だったけど、この世界では珍しくない。
ただ今回は、討伐対象が魔獣じゃなく人間だから、立ち回りが重要になる。
―――
南門で集合した瞬間から、空気が重い。
「お、来たなレイリ。今日は頼むぜ」
リードがにこやかに肩を叩こうとした瞬間――
「触るな」
セシルがスッと前に出て、物理的に遮った。
「……あのな、セシル」
「必要ない」
「いや戦力的には必要だろ!?」
横でミラがくすっと笑い、「まあまあ。今日は仲良くやりましょう」と場を取りなす。
でもその目は、まるで実験材料を観察する学者みたいに光っている。
―――
丘陵地帯の奥に、岩場を利用した盗賊団のアジトがあった。
見張りが二人、入り口の前で槍を持ってうろついている。
「セシルとリードで正面突破、私とレイリで後方から魔法支援はどうかしら?」
ミラの提案に、セシルが即答。
「却下」
「え?」
「レイリは俺と一緒に動く」
(うわぁ……これミラ怒るやつだ)
案の定、ミラは笑顔を崩さずに「……では、正面はお二人にお任せしますわ」と言ったが、声が若干低かった。
―――
バフをかけたセシルは、見張り二人をあっという間に無力化。
そのまま中に突入し、盗賊たちを次々と叩き伏せていく。
リードも大剣で暴れ回り、敵を薙ぎ倒す。
一方、ミラは後方から的確に魔法を放ち、動きを封じていた。
「……やっぱ四人いると早いな」
そう呟いた瞬間、奥から一際大柄な盗賊が現れた。
全身鎧をまとい、大剣を構えて突っ込んでくる。
「セシル!」
「任せろ」
バフ全開のセシルが剣を交差させ、一撃で鎧ごと斬り伏せた。
……やっぱこいつ一人で十分なんじゃ。
―――
盗賊団は全滅、捕縛した生き残りはギルドに引き渡すことに。
依頼は成功――のはずなんだけど。
「やっぱおまえ、すげぇなレイリ。バフがなかったら、あんな動きできねぇ」
リードが笑顔で言った瞬間、背後で氷点下のオーラ。
「……近づくな」
ミラも歩み寄り、「専属じゃなければ、ぜひ私が――」
「無理」
セシルが両方まとめて撃退した。
……胃が痛い。
―――
盗賊団討伐から王都へ戻ると、ギルドホールがざわついていた。
入口をくぐった瞬間、あちこちから視線が突き刺さる。
「……あれが専属バフ師のレイリか」
「昨日の討伐、あのバフがあったから成功したって話だ」
「しかも固定対象って珍しいんだろ?」
(……うわ、完全にネタにされてる)
受付嬢までカウンター越しににこにこしている。
「お疲れさまでした。盗賊団討伐、見事でしたね。すでに他のパーティから問い合わせが――」
「断る」
隣でセシルが即答。
受付嬢が「え……?」と固まった。
―――
カウンターから離れた途端、三組ほどの冒険者が俺たちの前に立ちはだかった。
「レイリ、短期でいいからうちの依頼に――」
「魔獣討伐で支援職を探しててな……」
「報酬は山分け、どうだ?」
「無理」
「不要」
「断る」
セシルが淡々と撃墜。
相手が話を最後まで言う前に斬り捨てるその速さ、もはや戦闘スキルの域。
「……おまえさぁ」
「レイリは俺専属」
「……胃薬、買っとくかな」
―――
人混みをかき分けて、筋骨隆々の男が現れた。
白髪交じりの短髪、肩幅がドア枠に収まりきらない。
ギルドマスターのガルドさんだ。
「おまえがレイリか。専属バフ師……面白い能力だな」
「あ、はい……」
「専属ってのは珍しい。だが、その分一人への効果は絶大だ。王都の戦力として登録を上げたい」
「登録……?」
「通常の冒険者から、準戦力扱いに昇格だ。依頼の報酬も上がるし、権限も増える」
おお、それは悪くない――と思った瞬間、
「……条件は?」
「王都内の緊急依頼には必ず参加だ。もちろん、セシルも一緒にな」
セシルはしばらく無言で考え込み、やがて頷いた。
「……レイリとならいい」
(おまえ、俺の意思確認しろや!)
―――
手続きが終わると、ガルドさんが小声で言った。
「最近、専属バフを研究してる連中がいる。あまり目立ちすぎるなよ」
(うわ……そういう厄介な方向にも広がるのか)
隣を見ると、セシルは平然としていた。
でもその瞳の奥は、今まで以上に鋭く光っている。
(あー……これは絶対、俺を離さないモードだな)
「すみません……今回の依頼、ギルドから指定がありまして。リードさんとミラさんと、合同でお願いします」
セシルが無言でこちらを見た。
……いや、そんな「断れ」の目すんな。規定なんだから。
「依頼内容は南の丘陵地帯での盗賊団討伐です。最近、商隊への被害が増えてまして」
「盗賊か……人間相手か」
前世ではニュースの中だけの話だったけど、この世界では珍しくない。
ただ今回は、討伐対象が魔獣じゃなく人間だから、立ち回りが重要になる。
―――
南門で集合した瞬間から、空気が重い。
「お、来たなレイリ。今日は頼むぜ」
リードがにこやかに肩を叩こうとした瞬間――
「触るな」
セシルがスッと前に出て、物理的に遮った。
「……あのな、セシル」
「必要ない」
「いや戦力的には必要だろ!?」
横でミラがくすっと笑い、「まあまあ。今日は仲良くやりましょう」と場を取りなす。
でもその目は、まるで実験材料を観察する学者みたいに光っている。
―――
丘陵地帯の奥に、岩場を利用した盗賊団のアジトがあった。
見張りが二人、入り口の前で槍を持ってうろついている。
「セシルとリードで正面突破、私とレイリで後方から魔法支援はどうかしら?」
ミラの提案に、セシルが即答。
「却下」
「え?」
「レイリは俺と一緒に動く」
(うわぁ……これミラ怒るやつだ)
案の定、ミラは笑顔を崩さずに「……では、正面はお二人にお任せしますわ」と言ったが、声が若干低かった。
―――
バフをかけたセシルは、見張り二人をあっという間に無力化。
そのまま中に突入し、盗賊たちを次々と叩き伏せていく。
リードも大剣で暴れ回り、敵を薙ぎ倒す。
一方、ミラは後方から的確に魔法を放ち、動きを封じていた。
「……やっぱ四人いると早いな」
そう呟いた瞬間、奥から一際大柄な盗賊が現れた。
全身鎧をまとい、大剣を構えて突っ込んでくる。
「セシル!」
「任せろ」
バフ全開のセシルが剣を交差させ、一撃で鎧ごと斬り伏せた。
……やっぱこいつ一人で十分なんじゃ。
―――
盗賊団は全滅、捕縛した生き残りはギルドに引き渡すことに。
依頼は成功――のはずなんだけど。
「やっぱおまえ、すげぇなレイリ。バフがなかったら、あんな動きできねぇ」
リードが笑顔で言った瞬間、背後で氷点下のオーラ。
「……近づくな」
ミラも歩み寄り、「専属じゃなければ、ぜひ私が――」
「無理」
セシルが両方まとめて撃退した。
……胃が痛い。
―――
盗賊団討伐から王都へ戻ると、ギルドホールがざわついていた。
入口をくぐった瞬間、あちこちから視線が突き刺さる。
「……あれが専属バフ師のレイリか」
「昨日の討伐、あのバフがあったから成功したって話だ」
「しかも固定対象って珍しいんだろ?」
(……うわ、完全にネタにされてる)
受付嬢までカウンター越しににこにこしている。
「お疲れさまでした。盗賊団討伐、見事でしたね。すでに他のパーティから問い合わせが――」
「断る」
隣でセシルが即答。
受付嬢が「え……?」と固まった。
―――
カウンターから離れた途端、三組ほどの冒険者が俺たちの前に立ちはだかった。
「レイリ、短期でいいからうちの依頼に――」
「魔獣討伐で支援職を探しててな……」
「報酬は山分け、どうだ?」
「無理」
「不要」
「断る」
セシルが淡々と撃墜。
相手が話を最後まで言う前に斬り捨てるその速さ、もはや戦闘スキルの域。
「……おまえさぁ」
「レイリは俺専属」
「……胃薬、買っとくかな」
―――
人混みをかき分けて、筋骨隆々の男が現れた。
白髪交じりの短髪、肩幅がドア枠に収まりきらない。
ギルドマスターのガルドさんだ。
「おまえがレイリか。専属バフ師……面白い能力だな」
「あ、はい……」
「専属ってのは珍しい。だが、その分一人への効果は絶大だ。王都の戦力として登録を上げたい」
「登録……?」
「通常の冒険者から、準戦力扱いに昇格だ。依頼の報酬も上がるし、権限も増える」
おお、それは悪くない――と思った瞬間、
「……条件は?」
「王都内の緊急依頼には必ず参加だ。もちろん、セシルも一緒にな」
セシルはしばらく無言で考え込み、やがて頷いた。
「……レイリとならいい」
(おまえ、俺の意思確認しろや!)
―――
手続きが終わると、ガルドさんが小声で言った。
「最近、専属バフを研究してる連中がいる。あまり目立ちすぎるなよ」
(うわ……そういう厄介な方向にも広がるのか)
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