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11話

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「はぁ......ようやくFランクの
問題児が消えたかと思えば、
まさかSSランクになって
戻って来ようとはな」

週に一度、クラスの落ちこぼれが
一堂に会する委員会。
その落ちこぼれ共を束ねるは
この学園の生徒会長ソフィアだった。

ソフィアは一年SSクラスの席に
堂々と座っているジンに
ため息を漏らした。

ジンがここにいる理由は一つ。
アルナが嘲笑の対象になるのを
防ぐため。
そのためにクラスの委員長に、
委員長を変われと脅した。

「別に邪魔をするつもりはない。
話すつもりもない」

「委員長で発言をしてくれないのは
困るな。だが......もう一人が
優秀なのを見ると大丈夫そうだ」

その優秀なのは、ジンに続いて
副委員長になったレベッカだった。

「何故君のような優秀な人間が、
副委員長という雑用を自分から
しようと思ったんだね?」

「私はジンと距離を縮めようと、
努力しているだけです」

そのレベッカの発言に
会議室中に動揺が広まる。

だが、生徒会長は全くその
言葉に動揺することなく冷静に、

「と、言われているが?」

ジンに水を向けた。

「知らん。こいつが勝手に
言ってるだけだ」

「ほーん」

何かを考えているのか、
生徒会長は目を細める。

「まぁ、世間話はこれくらいに
しておこう。早速、会議を始める。
まずは、今週の課題の反省に入ろう。
Fクラスの一年生、今週の
学祭の催し物を決めるという
課題は達成できたか?」

ジンがFランクからいなくなったことで、
成績最下位となったアルナが委員長を
勤めていた。

アルナは申し訳なさそうな表情を
浮かべながら立ち上がる。

「す、すみません。まだ......
決めれていません」

「だろうな。学祭委員に聞けば、
Fランクの一年生のクラスが
まだ企画書を提出出来ていないと
言っていた。
学祭まで残り一ヶ月だぞ。
間に合うのか?」

「な、なんとかします」

「具体的にどうする? 
その様子ではまだクラスの連中と
話し合いもしてなさそうだが?」

アルナは押し黙ってしまった。

それに嘲笑が聞こえてくる。

その嘲笑をしたSランクの女子生徒に、

「何が面白い」

と、獣のような視線で睨み付けた。

女子生徒はその威圧に震え上がる。

アルナは真面目なやつだ。
何もしていないはずがない。
どうせ話し合いをしようとしても、
クラスの馬鹿共が話を
聞かなかったのだろう。

本来であれば、一緒にその
話し合いをするはずだったのに。
何もしてやれなかった自分が憎かった。

「邪魔はしないと
言っていたはずだが?」

生徒会長の視線がこちらに向く。

「邪魔はしていない。
むしろ、邪魔なやつを黙らせただけだ」

そんなジンの言い訳を鼻で笑った。

「まぁいい。Fランクの一年生。
来週までに何とかしろ」

「......はい」

落ち込んだ様子でアルナは
着席した。

会議が終わり、真っ先にジンは
アルナに駆け寄った。

「アルナ。大丈夫か?」

それに彼女は作り笑いを浮かべて、

「......うん。大丈夫大丈夫。
心配しないで、何とかするよ」

「だが、お前顔色が」

「ジン、授業が始まるわ。行きましょ」

背後からレベッカが言った。

うるさい、黙ってろ。

そう言い返そうとしたジンだったが、

「わ、私もそろそろ授業が
始まるから行かなくちゃ。
またね、ジン君」

まるで逃げるように、
アルナは会議室を出て行った。

お前のせいだと、ジンはレベッカを
ねめつける。

「私を恨むのはお門違いよ。
それに彼女の判断は正しいと思うわ。
これ以上、貴方と話してたら、
また周りから白い目で
見られていたでしょうから」

「俺達はそんなこと気にしていない」

「そうかしら? もしそうだとしても、
周りがそれを許さないわよ。
彼女が無事に学園生活を
送れるといいけど」

こいつの相手の不安を掻き立てる
物言いがジンは嫌いだった。

だが、大丈夫。
アルナは強いやつだ。
もし挫けそうになっても、
こちらが全力で支える。
二人で理不尽を共有すると決めたのだ。

しかし、レベッカの言ったことは
現実となった。

三日後、ジンはFランクの教室を訪れた。

だが、アルナの姿がない。

「おい」

「は、はい」

ジンは適当なやつを捕まえて、

「アルナはどこにいる」

「アルナさんなら
二日前に故郷に帰ったよ」
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