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★ただいま
しおりを挟む昨日はホタルが一人で仕事に出掛ける日だった。
膝の痛みは落ち着いてきたけど、「人間が怖い」という理由で狐の里の奥の方で、隠れるようにして暮らしているお年寄りの様子をホタルが見に行く日だったから、付いていけなかった。
そんな日は、ホタルを見送ってから、ヒナタが用意してくれている宿題をしたり、歴史の教科書を読み直したりして時間を潰す。
ニワトリ達の世話にも挑戦しようと思ったけど、俺が小屋に近付いただけで、「ケェーッ!」と、もの凄い声をあげて威嚇してきたから、怖くて小屋の隙間から餌を投げ入れることしか出来なかった。
……もちろん、今朝、卵を取りに行ったホタルにバレて「餌の入れ方がなってない。小屋を汚すな」とすごく叱られた。
ホタルは遠くまで出掛けているから、暗くなってもなかなか帰って来なかった。
夕ご飯も食べ終わって、布団も敷き終わったのに、それでも戻らない。
お母さんと二人で暮らしていた時は、何日も一人でぼんやりしていないといけないこともあったけど平気だった。
だけど、ホタルと一緒にいるようになってからは一人が寂しい。
俺の心が弱くなってしまったということなんだろうか。
でも、今の方がよっぽど人間らしい生活を送れているし、ヒナタのおかげで頭だって良くなった気がする……と考え事をしながら布団にくるまってホタルを待つしかなかった。
ホタルがライトを買ってくれたから、外が暗くなっても本を読むことなら出来る。
本なんてヒナタが買ってくれるまでロクに読んだこともなかったけど、「俺の厳しいチェックを通過した本だ。安心して読んでいい」と初めて渡された小説はすごく面白くて、夢中になって読んだ。
遅い時間まで本を読んでいるとホタルからは「早く寝ろ」って叱られる。
それで渋々本を閉じて灯りを消すと、「本当にしょうがない奴だな……」とブツブツ言いながらホタルはいつも抱き寄せてくれる。
「……たくさん大きくなれよ」
そう言った後、俺の頭を撫でてくれたり、額や頬に触れるだけのキスをしてくれる。
幸せだなってボーッとしてる間に寝てしまうこともあるし、物足りなくてモゾモゾしていたらホタルが「しょうがないな……」って、俺の……。
「……うぅ」
まただ、って自分が嫌になる。
ヒナタが買ってくれた本を読んでいたのに、なんだか集中出来なくなって、ホタルのことを考えて身体が反応してしまった。
「ん……」
最近は勉強をしている時とか、朝、目を覚ました時とか、そんな時もエッチなことを考えてはぼんやりしてしまうことが多い。
こっそりお風呂の時に処理をすることもあるし、ホタルに触って貰う時だってあるのに、全然追い付かない。
「んっ……んんっ……」
うつ伏せの状態になって、勃起した状態の性器に自分の体重をかけながら布団に擦り付けると気持ちがいい。
一人で腰をクネクネ動かして、すごくバカみたいな格好をしているのにやめられなかった。
「んぅ!んんっ……!あっ……!」
服の上から時々自分の手で触っては、擦り付けるを繰り返す。
やっぱり、俺はいくら勉強したって頭が悪いから、それで、エッチなことばかり考えて、すぐに興奮してしまうんだろうか。
「あっ、んぅ……!」
早く終わらせなきゃ、ホタルが帰ってきたら見られちゃう、と焦れば焦る程集中出来なくて、なかなか出ない。
本当は下に着ているものは全部脱いで直に擦り付けたいけど、そしたら布団が汚れてしまう。
パンツが、先っぽから出る汁のせいでほんの少し濡れている気がする。
早く、早くと焦りながら、手を突っ込むと、パンツの中はじっとりと熱くなっていた。
「あっ……だ、め…ホタルっ……」
間違いなく自分の手で触っているのに、俺の頭の中では、ホタルの手で触って貰っていることになっている。
アオイ、もっとこっちにおいで、気持ちいいだろう、好きだよ、可愛いな……。
「うぅ……っ」
好き、ホタルが大好き、だから、もっと触って、早く入れてよ、欲しいよ……。
どうして触るだけじゃ俺の身体は満足出来ないんだろう、って泣きたい気持ちになりながら、腰を高く上げて、お尻を思いきり突き出すような格好になる。
きっとすごくマヌケな姿だ。だけど、気持ちいい。
ホタル、って何度も小さな声で呼びながら、腰を揺らして性器を手で扱く。
どうしよう、せっかく敷いた布団がぐちゃぐちゃだ、ホタルに変に思われるかも……ということを頭の片隅で考えていた時だった。
「……ただいま」
ハッ、とした瞬間に、ぼうっとしていた頭が切り替わって、部屋がすごく静かなこと、つけっぱなしのライトが眩しいこと、右手がベタベタすることといった情報が、次々と頭の中に雪崩れ込んでくる。
何よりも、さっきまでは絶対に居なかったはずのホタルの気配が、すぐ側でする。
まだ、振り向いて確認していないけど、寄り添うようにして、俺のすぐ後ろに、きっといる。
だって、ただいまって、ハッキリ聞こえた。
「えっ、な、な、なんで……?どうして……?」
背中にべったりとホタルの手が張り付いてくる。怖くて、ホタルの方を見れない。
戸を開ける音も、足音だって聞こえなかった。
いくら夢中になっていたとは言え、「ホタルが帰ってきたらどうしよう」とずっと警戒していたのだから、少しでも物音がすれば気が付くはずなのに、なんで、と俺はパニックになっていた。
「……寝ているのかと思って、音をたてずに入ってきたら、アオイが可愛い格好で俺のことを呼んでるから」
「ひっ……」
ホタルの両腕が腰に絡み付いてくる。首元に顔を埋められた後、くすぐるように唇が触れてはすぐに離れていく。
ホタルがクスクスと笑うたびに、ゾクゾクして身体の力が抜ける。
本当は、やめてよって、ホタルをはね除けて布団の中に隠れてしまいたかった。
だけど、いつから見られていたんだろうって思うと、恥ずかしすぎて動けなくなってしまう。
「……アオイ、俺は続きがもっと見たい」
「や、やだっ……!」
「どうして見せてくれない……?見たい」
「いやあっ……やだあっ……!」
お尻に硬いものが当たっている。ホタルのだって、すぐにわかって顔が熱くなる。
見たい、といつもよりもずっと甘えた口調でせがんでくるのに、グリグリと強い力で性器を擦り付けてくる。
可愛く甘えてくるのと、いつもよりもずっと男っぽく自分の欲求を示してくるのと、どっちが本当のホタルなんだろうって、わからなくなってしまった。
「俺が好きだから、こういうことをするのか……、なんて可愛いんだろう」
「うぅ……」
違うよ、って本当のことを全部言ってしまいたかった。
違うよ、俺は普通の人よりもバカだから、たった一晩でもエッチなことをするのが我慢出来なかっただけだよ、他にもやらないといけないことや、考えないといけないことがいっぱいあるのに、一度いやらしいことを考えるとなんにも手に付かなくなるくらい、俺はすごくだらしがないんだよ……。
きっと、そう言ったら「そんなことない」ってホタルを困らせてしまうから、言えなかった。
代わりに「見せるのは嫌だ」ってキッパリ断って、枕に顔を押し付ける。
「アオイ……」
「やだ……」
「どうして?俺は……アオイがホタルって呼びながら、気持ち良さそうにしているのを見て嬉しかった」
「……でも」
「俺のことが恋しいと、あんなふうになる?ニンゲンギツネは自慰をしないからわからない……。
人間はきっと、一人の時でも誰かを思うために、自分の身体に触ることを思い付いたんだな」
俺のしていたことは、ホタルの言うような綺麗なものじゃないってことは、わかっている。
……でも、嬉しかった。ホタルが「恋しいと、あんなふうになる?」と言ってくれたから、俺はただの頭が悪くてだらしない人じゃなくて、ホタルのことが好きな人でいられる。
やっていることに変わりは無いのだから、他の人から見れば、やっぱり俺は、性欲に振り回されるダメな子供なのかもしれない。
でも、ホタルだけがそうじゃないってわかってくれるのなら、それで良かった。
だから……、恥ずかしくて絶対に嫌だと思っていたのに、ちょっとだけなら、ホタルにだったら、いいのかなって、気持ちがグラグラ揺れる。
「……じゃ、じゃあ、少しだけ。……変な格好だけど笑わないで」
うん、とホタルが抱き着いてくる。ホタルに見られながらするなんて、いいのかな、ってまだ迷っているのに、身体中が熱くて、早く気持ちよくなりたくて堪らなかった。
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