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一途なモヤモヤ(5)
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◇◆◇
シャワーを浴びてからフラフラの状態で寝室へ戻る。清潔でひんやりとしたシーツが心地いい。暗い部屋の中で目を凝らしてベッドの側のデジタル時計を確認したらやがて日付が変わろうとしている。俺が思っていたよりもずっと時間が経っていたみたいだった。
二人でシャワーを浴びていたのは、十五分にも満たないような短い時間だ。ということは、残りの時間は全部ベッドの上で抱き合っていたことになる。嘘でしょ? と信じられない思いでユウイチさんの方へ顔を向けると「もうこんな時間か」と呟く掠れた声が聞こえた。
「平気? 疲れた?」
「ううん、大丈夫。いっぱいしちゃったなって、ビックリしてただけ」
「満足出来た?」
「うん」
「俺も」
ぴったりと身体をくっつけているのにまだ足りないような気がして、ユウイチさんの身体に脚を絡ませる。言葉にしなくても伝わったのか、ユウイチさんが俺の額に音を立てずに口づけた。
「……気持ちよくて、なんか、ビックリしちゃった。途中からはずっと終わっちゃやだな、って俺思ってた」
俺もだよ、と言ってくれるユウイチさんは優しい。なんというか、穏やかだけど濃くて激しい時間だった。すごく矛盾してる感想だって自分でも思う。
正常位で入れている時はユウイチさんがほとんど動かなかった。繋がったまま俺はユウイチさんの熱さや硬さを感じながら、全身を愛された。その後は後ろからいっぱい突かれて、それで……。
「俺がユウイチさんに言ったこと覚えてる……?」
「うん? ちゃんと覚えてるし嬉しかったよ」
最後にもう一度仰向けにされた時に、ほとんど残っていない体力を振り絞って、俺はユウイチさんの腰に両足で絡みついた。
「ずっと一緒にいられる? ずっと一緒にいたいよ……」
このタイミングでそんな大事なことを言うのは、もしかしたらズルイことなのかもしれない。でも、ユウイチさんの大きな身体に全身を包まれていたら、「ずっと側にいたい」という思いが強くなってしまって、言葉にせずにはいられなかった。
「いるよ」
そう囁くユウイチさんの声は優しくて、俺の身体と心はいっそう昂っていく。なんだか泣きそうになりながら俺は身体を揺さぶられていた。
「あのさ、ユウイチさん。あれは、その場の勢いとかじゃなくて全部本気だから」
セックスの最中に気分が盛り上がったからああいうことを言ったんじゃなくて、いつもそう思っているんだとどうしても伝えたかった。ユウイチさんから返事はなくて、代わりにぎゅうぎゅう抱き締められる。頬擦りするユウイチさんの表情が柔らかく微笑んでいるように見えて、なんとなく「あっ、ユウイチさん、嬉しいんだ」ってわかった。
「……ユウイチさんって、またどこか海外とかで働くことってないの? それって、えらくなったりするのに必要だったりしない?」
「え? ないよ。打診されても全部断ってるし」
「そうなの? それって大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」
俺がどれだけ頑張ったって、もしかしたらユウイチさんの仕事の都合で離れ離れになる時がやってくるかもしれない……。どうやらそんな心配はいらないみたいだった。「なるべく出世しないように頑張ってる」「出生はしたい人がすればいいんだ」と話すユウイチさんは嘘をついているようには見えない。ユウイチさんの会社での立ち回りや人間関係が俺には全くわからないけど、堂々としている様子を目の当たりにしたら本当に大丈夫なんじゃないかって感じられた。
「いいの? 偉くなれるかもしれないのに?」
「偉くなんかなりたくないよ。コスパが悪すぎるし……」
「コスパ?」
「うん。マナトや他の人の会社がどうなのかは知らないけど、少なくとも俺の会社はそうなんだ」
だから目立ちすぎないようにしてる、とユウイチさんは肩を竦めてみせた。その後も、課長まで出世した場合の給料の上がり幅とそれに伴って発生する責任や時間外の勤務時間についてユウイチさんは平坦な口調で丁寧に解説してくれた。
正直言って、よくわからない部分もあった。けど、ユウイチさんは自分の心身を大切にコツコツ働きたいと、長いこと考えていたんだなあということはちゃんと俺にもわかった。実際は違うかもしれないけど、俺がユウイチさんの人生を変えてしまったんじゃなくて、ユウイチさんが築いてきたものがあって、その側に俺が加われたような気がして、それが嬉しかった。
「そっか……。俺、一人でいろいろ考えて寂しくなったり、張り切ったりしてたんだよね。はー、そっか……。ふふっ……」
「大丈夫だよ。俺はマナトへの課金……、マナトとの生活のためだけに働いてるから」
「うん。……俺ね、ユウイチさんより十歳年下でしょう。その分長く働けるからよかったなーって最近思う。いっぱい頼って欲しいなって」
好きです、と伝えたばかりの時には自分とユウイチさんが年齢を重ねた時のことなんて考えたことがなかった。でも、二人とも誕生日を祝う度に一歳ずつ歳をとっていくし、その分だけ一緒にいる時間が積み重なっているんだなあと最近思う。働き始めてから一年が過ぎるのをすごく早く感じているからだろうか。
「こんなふうに将来のことを話すのはマナトが初めてだ……。ありがとう」
「……うん。俺も。いっぱいありがとう」
話してもいいのかなって迷ってモヤモヤと悩んでいたことを、言葉に出来たのはユウイチさんが全部を受け止めてくれたからだった。積み重ねてきた毎日は目に見えないけど、でもユウイチさんの側でそれをちゃんと感じることが出来る。ユウイチさんも同じで、未来を信じてくれていたらいいのに。そう願いながらようやく目を閉じた。
シャワーを浴びてからフラフラの状態で寝室へ戻る。清潔でひんやりとしたシーツが心地いい。暗い部屋の中で目を凝らしてベッドの側のデジタル時計を確認したらやがて日付が変わろうとしている。俺が思っていたよりもずっと時間が経っていたみたいだった。
二人でシャワーを浴びていたのは、十五分にも満たないような短い時間だ。ということは、残りの時間は全部ベッドの上で抱き合っていたことになる。嘘でしょ? と信じられない思いでユウイチさんの方へ顔を向けると「もうこんな時間か」と呟く掠れた声が聞こえた。
「平気? 疲れた?」
「ううん、大丈夫。いっぱいしちゃったなって、ビックリしてただけ」
「満足出来た?」
「うん」
「俺も」
ぴったりと身体をくっつけているのにまだ足りないような気がして、ユウイチさんの身体に脚を絡ませる。言葉にしなくても伝わったのか、ユウイチさんが俺の額に音を立てずに口づけた。
「……気持ちよくて、なんか、ビックリしちゃった。途中からはずっと終わっちゃやだな、って俺思ってた」
俺もだよ、と言ってくれるユウイチさんは優しい。なんというか、穏やかだけど濃くて激しい時間だった。すごく矛盾してる感想だって自分でも思う。
正常位で入れている時はユウイチさんがほとんど動かなかった。繋がったまま俺はユウイチさんの熱さや硬さを感じながら、全身を愛された。その後は後ろからいっぱい突かれて、それで……。
「俺がユウイチさんに言ったこと覚えてる……?」
「うん? ちゃんと覚えてるし嬉しかったよ」
最後にもう一度仰向けにされた時に、ほとんど残っていない体力を振り絞って、俺はユウイチさんの腰に両足で絡みついた。
「ずっと一緒にいられる? ずっと一緒にいたいよ……」
このタイミングでそんな大事なことを言うのは、もしかしたらズルイことなのかもしれない。でも、ユウイチさんの大きな身体に全身を包まれていたら、「ずっと側にいたい」という思いが強くなってしまって、言葉にせずにはいられなかった。
「いるよ」
そう囁くユウイチさんの声は優しくて、俺の身体と心はいっそう昂っていく。なんだか泣きそうになりながら俺は身体を揺さぶられていた。
「あのさ、ユウイチさん。あれは、その場の勢いとかじゃなくて全部本気だから」
セックスの最中に気分が盛り上がったからああいうことを言ったんじゃなくて、いつもそう思っているんだとどうしても伝えたかった。ユウイチさんから返事はなくて、代わりにぎゅうぎゅう抱き締められる。頬擦りするユウイチさんの表情が柔らかく微笑んでいるように見えて、なんとなく「あっ、ユウイチさん、嬉しいんだ」ってわかった。
「……ユウイチさんって、またどこか海外とかで働くことってないの? それって、えらくなったりするのに必要だったりしない?」
「え? ないよ。打診されても全部断ってるし」
「そうなの? それって大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」
俺がどれだけ頑張ったって、もしかしたらユウイチさんの仕事の都合で離れ離れになる時がやってくるかもしれない……。どうやらそんな心配はいらないみたいだった。「なるべく出世しないように頑張ってる」「出生はしたい人がすればいいんだ」と話すユウイチさんは嘘をついているようには見えない。ユウイチさんの会社での立ち回りや人間関係が俺には全くわからないけど、堂々としている様子を目の当たりにしたら本当に大丈夫なんじゃないかって感じられた。
「いいの? 偉くなれるかもしれないのに?」
「偉くなんかなりたくないよ。コスパが悪すぎるし……」
「コスパ?」
「うん。マナトや他の人の会社がどうなのかは知らないけど、少なくとも俺の会社はそうなんだ」
だから目立ちすぎないようにしてる、とユウイチさんは肩を竦めてみせた。その後も、課長まで出世した場合の給料の上がり幅とそれに伴って発生する責任や時間外の勤務時間についてユウイチさんは平坦な口調で丁寧に解説してくれた。
正直言って、よくわからない部分もあった。けど、ユウイチさんは自分の心身を大切にコツコツ働きたいと、長いこと考えていたんだなあということはちゃんと俺にもわかった。実際は違うかもしれないけど、俺がユウイチさんの人生を変えてしまったんじゃなくて、ユウイチさんが築いてきたものがあって、その側に俺が加われたような気がして、それが嬉しかった。
「そっか……。俺、一人でいろいろ考えて寂しくなったり、張り切ったりしてたんだよね。はー、そっか……。ふふっ……」
「大丈夫だよ。俺はマナトへの課金……、マナトとの生活のためだけに働いてるから」
「うん。……俺ね、ユウイチさんより十歳年下でしょう。その分長く働けるからよかったなーって最近思う。いっぱい頼って欲しいなって」
好きです、と伝えたばかりの時には自分とユウイチさんが年齢を重ねた時のことなんて考えたことがなかった。でも、二人とも誕生日を祝う度に一歳ずつ歳をとっていくし、その分だけ一緒にいる時間が積み重なっているんだなあと最近思う。働き始めてから一年が過ぎるのをすごく早く感じているからだろうか。
「こんなふうに将来のことを話すのはマナトが初めてだ……。ありがとう」
「……うん。俺も。いっぱいありがとう」
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