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第一章
12.道中②
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「カイトさんは隊長とお友達なんですよね?」
「うん。10歳くらいからの付き合いかな」
アルの質問に対してもカイトは心ここに在らずと言った感じだ。
「そうなんですか! あの、小さい頃のヴァンってどんな感じだったんですか!?」
今度はカイリが目を輝かせて食い気味に質問する。俺の話はやめてほしいが、カイトはやっといつもの柔らかい表情に戻る。
「そうだねぇ、あんまり今と変わんないよ。昔からツンツンしてたし」
「おい」
「ふふ、冗談だよ。でも本当に変わらないかな。昔から優しいし、真面目だし。本もよく読んでた……それも今と変わらないね。でも、今の方がよく喋ってくれるかな」
「へぇ! 二人の出会いってどんな感じだったんですか!?」
「そうだね」
カイトは懐かしむ様に目を細め、空を仰ぐ。そしてポツポツと話出す。
「僕は昔は結構内気で、孤児院に入った時も馴染めなくてね。いつも一人で本読んでたりしてたんだ」
「そうなんですか」
カイリの相槌にカイトは頷く。
「ヴァンとキル、えっと国王はあの当時は王子かな。二人はよく孤児院の庭にある木の下で本を読んでたんだ。ね?」
カイトが俺に俺に問いかけてくる。その辺りの思い出は割とよく覚えている。
「そうだな」
「二人は特におしゃべりしたりとか、遊んだりとかしてたわけじゃないけどでも、なんて言うのかな……絆みたいなものを感じたよ」
「絆?」
「ヴァンは気づいてないと思うけど、キルといる時だけはどこか嬉しそうだったよ」
「そんな訳ない」
「ふふ、またまた。でね、そんな二人がすごく羨ましく見えた。だからね、僕はあの日勇気を出して二人に声をかけたんだ。でも、ヴァンは子供なのに今より目つき悪くてね! 本当にドキドキしたよ」
こんな目っと、カイトは自身の目を指で釣り上げて周りの笑いを誘っている。
こいつは人を出しにして。
不服な気持ちでカイトを見ていると懐かしいな、っと呟き歯に噛む様な笑顔を俺に向ける。
「でも、あの日勇気を出した自分を褒めてあげたいよ。だって二人が居てくれたから、僕は生きてこれたんだ」
カイトはまた返し辛い事を平気で言ってくる。でも、それは俺だって同じ。二人がいなければ俺は今ここにはいなかったと思う。だからって、俺もだなんて言えるはずない。
「照れてるの?」
「照れてない」
「へぇ~素敵ぃ」
マリーが少しからかった声で言う。周りを見る。皆微笑ましいと言った感じで俺を見る。顔を伏せる。羞恥で頭が一杯になる。でも、こんな時いつも思うのだ。自分の正体を知ったら、皆俺を憎悪の瞳で見るんだと。
居ずら過ぎる。
「……もうそろそろ、行きませんか」
「ははっ、そうだね。そろそろ行こうか」
セラートの言葉に腰を上げ馬に乗る。俺は乗り込もうとしているカイトのそばへ駆け寄り声をかける。
「カイト」
「なに?」
「どこか調子でも悪いのか?」
「えっ? どうして?」
「その……なんかおかしくないか?」
「……」
カイトは眉を寄せ、どこか不安そうに胸をぎゅっと掴む。
「カイト?」
「ううん、ごめんね。必ず、希望になる事を見つけられる……だから大丈夫。ヴァンも心配しないで、ね?」
「も?」
俺の問いにカイトは小さく首を振る。
「昨日不安になってたでしょ? それに今も顔にそう書いてあるよ」
カイトは俺の肩に手を置き、柔らかく微笑む。確かにずっと胸騒ぎを感じ不安ではあったが、そんなに顔に出ていただろうか?俺は自身の頬を触る。こんな事をしても分かるわけないか。ふとカイトの肩越しにもう荷馬車に乗り込んでいる、セラートも小さく頷いているのが見えた。
「そうだな」
俺もそうであったらいいと願ったのだから。
「うん。10歳くらいからの付き合いかな」
アルの質問に対してもカイトは心ここに在らずと言った感じだ。
「そうなんですか! あの、小さい頃のヴァンってどんな感じだったんですか!?」
今度はカイリが目を輝かせて食い気味に質問する。俺の話はやめてほしいが、カイトはやっといつもの柔らかい表情に戻る。
「そうだねぇ、あんまり今と変わんないよ。昔からツンツンしてたし」
「おい」
「ふふ、冗談だよ。でも本当に変わらないかな。昔から優しいし、真面目だし。本もよく読んでた……それも今と変わらないね。でも、今の方がよく喋ってくれるかな」
「へぇ! 二人の出会いってどんな感じだったんですか!?」
「そうだね」
カイトは懐かしむ様に目を細め、空を仰ぐ。そしてポツポツと話出す。
「僕は昔は結構内気で、孤児院に入った時も馴染めなくてね。いつも一人で本読んでたりしてたんだ」
「そうなんですか」
カイリの相槌にカイトは頷く。
「ヴァンとキル、えっと国王はあの当時は王子かな。二人はよく孤児院の庭にある木の下で本を読んでたんだ。ね?」
カイトが俺に俺に問いかけてくる。その辺りの思い出は割とよく覚えている。
「そうだな」
「二人は特におしゃべりしたりとか、遊んだりとかしてたわけじゃないけどでも、なんて言うのかな……絆みたいなものを感じたよ」
「絆?」
「ヴァンは気づいてないと思うけど、キルといる時だけはどこか嬉しそうだったよ」
「そんな訳ない」
「ふふ、またまた。でね、そんな二人がすごく羨ましく見えた。だからね、僕はあの日勇気を出して二人に声をかけたんだ。でも、ヴァンは子供なのに今より目つき悪くてね! 本当にドキドキしたよ」
こんな目っと、カイトは自身の目を指で釣り上げて周りの笑いを誘っている。
こいつは人を出しにして。
不服な気持ちでカイトを見ていると懐かしいな、っと呟き歯に噛む様な笑顔を俺に向ける。
「でも、あの日勇気を出した自分を褒めてあげたいよ。だって二人が居てくれたから、僕は生きてこれたんだ」
カイトはまた返し辛い事を平気で言ってくる。でも、それは俺だって同じ。二人がいなければ俺は今ここにはいなかったと思う。だからって、俺もだなんて言えるはずない。
「照れてるの?」
「照れてない」
「へぇ~素敵ぃ」
マリーが少しからかった声で言う。周りを見る。皆微笑ましいと言った感じで俺を見る。顔を伏せる。羞恥で頭が一杯になる。でも、こんな時いつも思うのだ。自分の正体を知ったら、皆俺を憎悪の瞳で見るんだと。
居ずら過ぎる。
「……もうそろそろ、行きませんか」
「ははっ、そうだね。そろそろ行こうか」
セラートの言葉に腰を上げ馬に乗る。俺は乗り込もうとしているカイトのそばへ駆け寄り声をかける。
「カイト」
「なに?」
「どこか調子でも悪いのか?」
「えっ? どうして?」
「その……なんかおかしくないか?」
「……」
カイトは眉を寄せ、どこか不安そうに胸をぎゅっと掴む。
「カイト?」
「ううん、ごめんね。必ず、希望になる事を見つけられる……だから大丈夫。ヴァンも心配しないで、ね?」
「も?」
俺の問いにカイトは小さく首を振る。
「昨日不安になってたでしょ? それに今も顔にそう書いてあるよ」
カイトは俺の肩に手を置き、柔らかく微笑む。確かにずっと胸騒ぎを感じ不安ではあったが、そんなに顔に出ていただろうか?俺は自身の頬を触る。こんな事をしても分かるわけないか。ふとカイトの肩越しにもう荷馬車に乗り込んでいる、セラートも小さく頷いているのが見えた。
「そうだな」
俺もそうであったらいいと願ったのだから。
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