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第三章
62.雲の間の光②
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つまり、たらたらと歩いていたのは時間稼ぎをしていた訳か。そして、こいつがひどく落ち込んでいるのはよく分からないが、その人が何処かへ行ってしまうんだな。
「お前はその人が行ってしまう事で、落ち込んでいるんだな」
「落ち込む? そんなもんじゃない。自分も消えそうだ」
暗い。暗すぎて自分まで憂鬱な気持ちになってくる。本当にこいつ大丈夫か?
「遠くへ行くと言っていたが、何処へ行くんだ? お前はついて行けないのか?」
「俺は一緒には行けない。叶うなら一緒に行きたいが、多分無理だ」
「そんな場所があるのか?」
「誰もが何処へでも、行けるわけじゃない」
それはそうなんだが。あまりにも後ろ向きな答えにそれを納得したくない、っと反発したくなる。はぁ。まぁ、とにかく無理なんだな。
「何故その人は、村から去る」
「約束、があるんだ。彼女にはずっと大切にしている約束が。その約束が、彼女を連れて行ってしまう」
「どんな約束だ? 今から会いに行く奴とか?」
「それはだけは言えない。彼女に言われてる。そもそも彼女の事を外部の人間に話してはいけないと、村の掟で決まってる」
「お前は俺に会った時に、腕輪の事で話してくれたじゃないか」
あんなに簡単に。抱えた膝の間に、深く頭を落とすアトラスをじっと見つめる。後悔してるのだろうか?なんだか考え込んでいる。しばらく黙り込んでいるとアトラスは、おもむろに顔を上がる。
「そうだな……俺はあんたに話したかった、聞いて欲しかったのかもしれない」
「俺に? 何故」
「あんたに会った時、不思議な感じがした。何処か似ていると言うのか……いや、上手く言い表せない」
そう言えばやけに、こいつに見られていた気がする。俺の問に不審がっているのかと、あの時は思ったが。
似ている、か。
俺もこいつにそう思った。悲しい背がカイトを失った自分に重なって見えた。それをこいつも感じたのか?俺はもう、少しは前に進めていると思っていたのに。
「おかしな感だな」
「おかしな感か。だとしたら彼女のそばにいて、備わったのかもしれない」
「不思議な力みたいなものか? 本当に何者なんだ?」
「言っただろ。絶対的な存在だ」
いや、全く分からないな。村の長にしては何か、宗教的なものを感じる。まさか本当に神、なんて事は言わない。神はこの世界にはいない。いたらリナリアを助けてくれるはずだ。
それにしても随分とこいつは、その女を想ってる。主従とか信者とかではなくて、愛慕してるような。もしかして、恋人なのか?
「その人は、お前の恋人なのか?」
「なにを。俺には手の届かない人だ」
「どんな人だ?」
「どんな人……そうだな。俺の唯一の色だ」
「色、か」
ぽかんとしてしまう様な答えだが、俺には何となく分かる。俺もリナリアがいると、世界に色がつく気がするんだ。こいつにとってその人はそれほど大きな存在で、そしてきっと、好きなんだ。
「その色がもうすぐ無くなってしまう。だから俺は、こんな世界嫌なんだ」
「気持ちは分かるが、お前には村の人がいるだろ? 親とかはいないのか?」
「いない。俺は村を出た事はないと言ったが、生まれはあの村じゃない。俺には加護の力がない、忌み子なんだ。そんな俺を親は見放し、幼少の頃商人に売られ奴隷になった」
「そうだったのか」
胸が痛む。酷い話だ。世間は忌み子への差別の根絶をと唱えてはいるが、それは表に見えている世界だけ。裏ではその差別は消えておらず、悲しい思いをしている人がたくさんいる。加護の力がないだけで、こんなにも酷い仕打ちを受けるなんて。カミュンも口に出した事はないが、あいつもいろいろ大変だっただろうな。
俺も悪魔の子だなんて知られたら、酷い仕打ちを受けただろうな。いや、殺される、か。
「毎日地獄のようだった。俺は人間に生まれたはずなのに、人の様には扱われなかった。生きる意味も希望も何もない。それがいつまで続くのだろうと思っていた。だから俺は逃げ出したんだ」
「一人でか?」
「あぁ、俺はずっと一人だ。あの日は雪が降っていた。街まで荷を運ぶ道中、雪に足を取られ荷車の車輪が一つ外れた。その反動奴は外に放り出され、頭を打ち気を失った。動かない奴を見て思った。逃げるなら今しかないと。俺は奴の懐から鍵を見つけ、ずっとつけられていた枷を外し、逃げ出した」
雨音の中にアトラスが、深く息を吐くのが聞こえた。思い出すのも辛い事だろう。それなら別に話さなくても、と言おうとしたが、アトラスはまた話し始めるので、俺は聞き続ける事にする。
「当てはなかった。ただひたすらに雪の中を走って、気づけば山の中だ。寒くて凍えそうで、俺はここで死ぬんだとそう悟った時、彼女が目の前に現れた。衝撃的だった。暗い俺の世界に、色が付く感覚に襲われた。彼女は本当に美しく、幼心にときめいたよ」
「彼女はお前より年上なのか? いくつなんだ?」
「……さぁな。歳なんて俺には分からない。ただ彼女は出会った時と変わらず、ずっと美しい」
「そうか」
少しの興味で聞いてみたが、まぁこの情報は別にどうでもいいか。こいつもいくつなんだろう。なんとなく俺と年が近そうだが、やつれていてよくは分からない。
「彼女は俺を村に連れて行ってくれた。だが、村の連中は加護のない、余所者の俺を置くことに反対だった」
「なら、その人が?」
「あぁ、彼女が俺を置く事を決めた。彼女は俺に加護の力がない事を憂いた。だから、この腕輪をくれたんだ。俺には精霊の加護がない代わりに、彼女が加護をくれた」
「そうか。その人がお前を救ってくれたんだな」
「そうだ。俺は彼女に救われた」
こいつがその人に出会う事ができて、本当に良かった。やはり世界には希望があるし、救いもある。誰にだって誰かが、手を差し伸べてくれるんだ。キルが俺にそうしてくれたように。
「だが彼女が決めた事でも、村の連中は俺の存在を良いようには思っていなかった。あの目は嫌いだった。それでも俺は、彼女がいたからあの村で暮らす事を決めたんだが、あそこでは必ずやらなくてはいけない事があった」
「何だ? 畑仕事か?」
「違う。悪しきもの、不浄が彼女に近づかない様に地を清め続ける事だ」
「悪いものって、闇ビトや瘴魔の事か?」
「いろいろだ。悪いものはいろいろとある。彼女自身も奴らが近づかない様に、強力な結界を張ってる。それを維持する為、より強固なものにする為に彼女は、社から滅多に出てこない」
「お前らがそこまでして、彼女を守る理由は何だ? 絶対的存在だからって、何か他に理由があるんだろ?」
「全てはあの約束のためだ」
「でも、それは何か教えてくれないんだろ?」
アトラスは口を閉じたままで、何も答えない。つまりはそれが答えだ。
「はぁ、まぁいいが。それで、お前はこれから約束を果たす為に、アナスタシアへ行けそうか?」
「正直、嫌だ。でも俺を生かしてくれた彼女を裏切る様な事もできない。なら、死んだ方がマシだ。だから、自分で決断を下せないのなら、見えない力に運命を委ねたくなった。辿り着くのか、それとも何かが起こって、死ぬのか。だから、帯剣をしてこなかった」
「だが、その腕輪の力があれば、大概の事は対処できるんじゃないのか?」
「そうだが……この腕輪だけは置いていけない。たとえ死んでもいいと思っていても、この腕輪だけは。でも、死んだってこの世界には、何の救いもないのにな」
「?」
変な言い方だ。死んでも意味がない、と言うのなら分かるが救いがないなんて、何か引っかかる。でもまぁ、死ぬ気はない様で良かった。
「分かってるなら、そんな事を考えるのはもうやめろ。その人がいなくなっても、生きていればいつか、きっと」
「いつか、きっと? そんな曖昧な、いつ灯るか分からない希望に縋って、生きていくのか? 俺は見てきたんだ、人間の汚さと恐ろしさを。私利私欲のために他人を踏み潰し、異端を受け入れない。我が子にだって愛を注げない。それに、この世界は呪われてるんだ。いや、だからこそ呪われたんだ。そんな世界で一体何が見つかる」
口を開けない。かける言葉が見つからないから。俺には奴隷として生きた苦しみは、想像もできない。そんな俺が吐く言葉は上部だけで、薄っぺらく聞こえるだろう。だが、幼い頃突然両親を奪われた俺も、一度はこの世界を呪った。世界に絶望する気持ちは、少しくらいは分かる。
だが何だ、呪いって?
こいつの言う呪いとは、現実にあるように聞こえる。瘴気の事か?確かに不気味な異形の怪物が突然現れれば、呪いとも言いたくなるかもしれないが。
「呪いって、瘴気の事か?」
「知らない方がいい。この世にはその方が幸せって事がある。それにあんたは、聞いても信じないよ」
「最近信じ難い話ばかり聞いている。だから、大概の事は受け入れられる」
「そうかい。だがあんたが、これからも平穏に暮らしていきたいなら、聞かないことを勧めるよ」
平穏。その言葉を聞いて真っ先に浮かんだのはキルとカイトと過ごした時間だった。だが、三人で過ごす事はもう出来ない。どんなに願っても俺の平穏は戻ってこない。それに何故かこの話を俺は、聞かないといけない気がする。もしかしたら、リナリアの何か手助けになる話が聞けるかもしれない。
「聞かせてくれないか」
「覚悟あるんだな……なら、いいさ。この世界がどれだけ救いがないか、教えてやるよ。それでもあんたは希望があるって言えるのか」
息を飲む。冷め切った声色に心の臓を掴まれる様な、恐ろしさを感じた。
「お前はその人が行ってしまう事で、落ち込んでいるんだな」
「落ち込む? そんなもんじゃない。自分も消えそうだ」
暗い。暗すぎて自分まで憂鬱な気持ちになってくる。本当にこいつ大丈夫か?
「遠くへ行くと言っていたが、何処へ行くんだ? お前はついて行けないのか?」
「俺は一緒には行けない。叶うなら一緒に行きたいが、多分無理だ」
「そんな場所があるのか?」
「誰もが何処へでも、行けるわけじゃない」
それはそうなんだが。あまりにも後ろ向きな答えにそれを納得したくない、っと反発したくなる。はぁ。まぁ、とにかく無理なんだな。
「何故その人は、村から去る」
「約束、があるんだ。彼女にはずっと大切にしている約束が。その約束が、彼女を連れて行ってしまう」
「どんな約束だ? 今から会いに行く奴とか?」
「それはだけは言えない。彼女に言われてる。そもそも彼女の事を外部の人間に話してはいけないと、村の掟で決まってる」
「お前は俺に会った時に、腕輪の事で話してくれたじゃないか」
あんなに簡単に。抱えた膝の間に、深く頭を落とすアトラスをじっと見つめる。後悔してるのだろうか?なんだか考え込んでいる。しばらく黙り込んでいるとアトラスは、おもむろに顔を上がる。
「そうだな……俺はあんたに話したかった、聞いて欲しかったのかもしれない」
「俺に? 何故」
「あんたに会った時、不思議な感じがした。何処か似ていると言うのか……いや、上手く言い表せない」
そう言えばやけに、こいつに見られていた気がする。俺の問に不審がっているのかと、あの時は思ったが。
似ている、か。
俺もこいつにそう思った。悲しい背がカイトを失った自分に重なって見えた。それをこいつも感じたのか?俺はもう、少しは前に進めていると思っていたのに。
「おかしな感だな」
「おかしな感か。だとしたら彼女のそばにいて、備わったのかもしれない」
「不思議な力みたいなものか? 本当に何者なんだ?」
「言っただろ。絶対的な存在だ」
いや、全く分からないな。村の長にしては何か、宗教的なものを感じる。まさか本当に神、なんて事は言わない。神はこの世界にはいない。いたらリナリアを助けてくれるはずだ。
それにしても随分とこいつは、その女を想ってる。主従とか信者とかではなくて、愛慕してるような。もしかして、恋人なのか?
「その人は、お前の恋人なのか?」
「なにを。俺には手の届かない人だ」
「どんな人だ?」
「どんな人……そうだな。俺の唯一の色だ」
「色、か」
ぽかんとしてしまう様な答えだが、俺には何となく分かる。俺もリナリアがいると、世界に色がつく気がするんだ。こいつにとってその人はそれほど大きな存在で、そしてきっと、好きなんだ。
「その色がもうすぐ無くなってしまう。だから俺は、こんな世界嫌なんだ」
「気持ちは分かるが、お前には村の人がいるだろ? 親とかはいないのか?」
「いない。俺は村を出た事はないと言ったが、生まれはあの村じゃない。俺には加護の力がない、忌み子なんだ。そんな俺を親は見放し、幼少の頃商人に売られ奴隷になった」
「そうだったのか」
胸が痛む。酷い話だ。世間は忌み子への差別の根絶をと唱えてはいるが、それは表に見えている世界だけ。裏ではその差別は消えておらず、悲しい思いをしている人がたくさんいる。加護の力がないだけで、こんなにも酷い仕打ちを受けるなんて。カミュンも口に出した事はないが、あいつもいろいろ大変だっただろうな。
俺も悪魔の子だなんて知られたら、酷い仕打ちを受けただろうな。いや、殺される、か。
「毎日地獄のようだった。俺は人間に生まれたはずなのに、人の様には扱われなかった。生きる意味も希望も何もない。それがいつまで続くのだろうと思っていた。だから俺は逃げ出したんだ」
「一人でか?」
「あぁ、俺はずっと一人だ。あの日は雪が降っていた。街まで荷を運ぶ道中、雪に足を取られ荷車の車輪が一つ外れた。その反動奴は外に放り出され、頭を打ち気を失った。動かない奴を見て思った。逃げるなら今しかないと。俺は奴の懐から鍵を見つけ、ずっとつけられていた枷を外し、逃げ出した」
雨音の中にアトラスが、深く息を吐くのが聞こえた。思い出すのも辛い事だろう。それなら別に話さなくても、と言おうとしたが、アトラスはまた話し始めるので、俺は聞き続ける事にする。
「当てはなかった。ただひたすらに雪の中を走って、気づけば山の中だ。寒くて凍えそうで、俺はここで死ぬんだとそう悟った時、彼女が目の前に現れた。衝撃的だった。暗い俺の世界に、色が付く感覚に襲われた。彼女は本当に美しく、幼心にときめいたよ」
「彼女はお前より年上なのか? いくつなんだ?」
「……さぁな。歳なんて俺には分からない。ただ彼女は出会った時と変わらず、ずっと美しい」
「そうか」
少しの興味で聞いてみたが、まぁこの情報は別にどうでもいいか。こいつもいくつなんだろう。なんとなく俺と年が近そうだが、やつれていてよくは分からない。
「彼女は俺を村に連れて行ってくれた。だが、村の連中は加護のない、余所者の俺を置くことに反対だった」
「なら、その人が?」
「あぁ、彼女が俺を置く事を決めた。彼女は俺に加護の力がない事を憂いた。だから、この腕輪をくれたんだ。俺には精霊の加護がない代わりに、彼女が加護をくれた」
「そうか。その人がお前を救ってくれたんだな」
「そうだ。俺は彼女に救われた」
こいつがその人に出会う事ができて、本当に良かった。やはり世界には希望があるし、救いもある。誰にだって誰かが、手を差し伸べてくれるんだ。キルが俺にそうしてくれたように。
「だが彼女が決めた事でも、村の連中は俺の存在を良いようには思っていなかった。あの目は嫌いだった。それでも俺は、彼女がいたからあの村で暮らす事を決めたんだが、あそこでは必ずやらなくてはいけない事があった」
「何だ? 畑仕事か?」
「違う。悪しきもの、不浄が彼女に近づかない様に地を清め続ける事だ」
「悪いものって、闇ビトや瘴魔の事か?」
「いろいろだ。悪いものはいろいろとある。彼女自身も奴らが近づかない様に、強力な結界を張ってる。それを維持する為、より強固なものにする為に彼女は、社から滅多に出てこない」
「お前らがそこまでして、彼女を守る理由は何だ? 絶対的存在だからって、何か他に理由があるんだろ?」
「全てはあの約束のためだ」
「でも、それは何か教えてくれないんだろ?」
アトラスは口を閉じたままで、何も答えない。つまりはそれが答えだ。
「はぁ、まぁいいが。それで、お前はこれから約束を果たす為に、アナスタシアへ行けそうか?」
「正直、嫌だ。でも俺を生かしてくれた彼女を裏切る様な事もできない。なら、死んだ方がマシだ。だから、自分で決断を下せないのなら、見えない力に運命を委ねたくなった。辿り着くのか、それとも何かが起こって、死ぬのか。だから、帯剣をしてこなかった」
「だが、その腕輪の力があれば、大概の事は対処できるんじゃないのか?」
「そうだが……この腕輪だけは置いていけない。たとえ死んでもいいと思っていても、この腕輪だけは。でも、死んだってこの世界には、何の救いもないのにな」
「?」
変な言い方だ。死んでも意味がない、と言うのなら分かるが救いがないなんて、何か引っかかる。でもまぁ、死ぬ気はない様で良かった。
「分かってるなら、そんな事を考えるのはもうやめろ。その人がいなくなっても、生きていればいつか、きっと」
「いつか、きっと? そんな曖昧な、いつ灯るか分からない希望に縋って、生きていくのか? 俺は見てきたんだ、人間の汚さと恐ろしさを。私利私欲のために他人を踏み潰し、異端を受け入れない。我が子にだって愛を注げない。それに、この世界は呪われてるんだ。いや、だからこそ呪われたんだ。そんな世界で一体何が見つかる」
口を開けない。かける言葉が見つからないから。俺には奴隷として生きた苦しみは、想像もできない。そんな俺が吐く言葉は上部だけで、薄っぺらく聞こえるだろう。だが、幼い頃突然両親を奪われた俺も、一度はこの世界を呪った。世界に絶望する気持ちは、少しくらいは分かる。
だが何だ、呪いって?
こいつの言う呪いとは、現実にあるように聞こえる。瘴気の事か?確かに不気味な異形の怪物が突然現れれば、呪いとも言いたくなるかもしれないが。
「呪いって、瘴気の事か?」
「知らない方がいい。この世にはその方が幸せって事がある。それにあんたは、聞いても信じないよ」
「最近信じ難い話ばかり聞いている。だから、大概の事は受け入れられる」
「そうかい。だがあんたが、これからも平穏に暮らしていきたいなら、聞かないことを勧めるよ」
平穏。その言葉を聞いて真っ先に浮かんだのはキルとカイトと過ごした時間だった。だが、三人で過ごす事はもう出来ない。どんなに願っても俺の平穏は戻ってこない。それに何故かこの話を俺は、聞かないといけない気がする。もしかしたら、リナリアの何か手助けになる話が聞けるかもしれない。
「聞かせてくれないか」
「覚悟あるんだな……なら、いいさ。この世界がどれだけ救いがないか、教えてやるよ。それでもあんたは希望があるって言えるのか」
息を飲む。冷め切った声色に心の臓を掴まれる様な、恐ろしさを感じた。
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