白雷のルシウス ~知識チートで最強への道を歩んでいたら、敵もチートだった~

がおがお

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幼少期編

リエルの子

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「シルフィアはいるか?」

「ミリアーナ様!」

「様はやめろ。私はただの冒険者だ」

「そんな、王都でただ一人のSランク冒険者のミリアーナ様はただの冒険者ではありません!」

 リーナは悪いやつではないんだが、どうも調子が狂う。Sランクだろうとなんだろうと冒険者など所詮はならず者の集まりだろうに。

「むっ! 隣の方はどなたです?」

「挨拶が遅れたな。ギルだ。冒険者をやっている」

「ギルはこれでもAランクだ」

 ブラッドオーガにはさすがに勝てないだろうが、ギルは優秀な剣士だ。私も以前少しだけ臨時でパーティを組んだことがある。ブラッドオーガは刃が通らず、その巨体から鈍器のような攻撃を繰り出してくる。ギルとは相性も良くなかった。違うタイプのAランクの魔物が相手なら勝てないまでもいい戦いになるんじゃないだろうか。そもそも冒険者と魔物のランクは等価ではない。魔物のAランクとは冒険者のAランク六人パーティが半壊しつつもなんとか討伐できる程度だ。

「聞いたことがあります! 素晴らしい剣士だとか」

「よかったなギル。お前も有名になってきたじゃないか」

「やめてくれ。ブラッドオーガには何もできなかったんだ。自分の力の無さは痛感している」

「それで、シルフィアはいるか?」

「はい! 学園長室にいるかと」

「そうか。少し入らせてもらうぞ」



「シルフィア、いるか? ミリアーナだ」

「どうぞ」

 シルフィアは相変わらず美しい。とても私の何倍も生きているとは思えない。女として嫉妬してしまうのは仕方ないことだろう。まぁそれがエルフの特徴だから当然といえば当然なのだが。

「あなたは来ると思っていました」

「分かっていたのか?」

「ええ。あれだけの魔法、あなたが気づかないはずがありませんからね。更にその発生源が学園となればあなたが来ることを予想するのは難しくありません」

 なるほど。確かにそうだ。魔力に敏感なものであればあの魔法は無視できるものではない。あれだけの魔法の制御など私でもできるか分からない。

「そうか。なら用件もわかっているか」

「ええ。あの魔法について教えることは構いません。ただ、口外しない契約をすることが条件です。そこの方も」

「契約魔法か? 契約書まで用意しているのか。何故そこまで隠す必要がある? 力を隠してもいいことなどないだろう」

 力がないと余計な虫が寄ってくる。中途半端な力も虫を寄せ付けるが、一定のラインを越えた力さえあればそう簡単には寄ってこないし、妙な奸計を仕掛けてくるようなやつもそうはいなくなる。隠すメリットとはなんだ?

「貴族の面倒なところ、ということですよ。どうしますか? 私はどちらでも構いませんよ」

 貴族か。あの人種は本当に何を考えているのかよく分からない。そう言われるとそうなのか、と納得するしかない。口外しない契約についても問題はないしな。私がただ知りたいだけなのだから。

「私は構わん。ギルもそれでいいか?」

「ああ。口外しないことは問題ない。俺は命を救われた。礼を言いたいだけだ」

「分かりました。それでは--」

契約のコントラクト=烙印スティグマ

 さすがにシルフィアの契約魔法は強いな。これなら私でも口外することができない程の強制力がある。

「「契約を受け入れる」」

 私とギルがシルフィアの契約を受け入れる言葉を示して契約は完了する。契約書がそれぞれ二枚に分かれてシルフィアに二枚、私とギルに一枚ずつが取り込まれた。

「予想はしているでしょうけど、あの魔法は今年の受験生のものです」

「エマニエルの娘ではないのか?」

「ええ、そうですね。その子もなかなか面白い魔法だったけれど、さすがにあの魔法には劣っていたわね」

「それで? 誰なんだ。あの魔法を使ったのは」

「リエルの子ですよ」

 なるほど、リエルの子か。今年の受験生にリエルの子がいたのか。だがそれでもあの魔法は異常だった。私はこれでもSクラスの冒険者だが、その私でもあれだけの魔力制御をできるか分からないんだ。それをいくらリエルの子とはいえ十歳の子が使ったなど……というかリエルですら厳しいだろう。

「……わかってますよ。そのために契約魔法まで使ったのですからね。あの子は……魔法陣の秘密を読み解いたそうです」

「魔法陣を読み解く? どういうことなんだ?」

 ギルは剣士だ。分からないのも無理はない。しかし魔術師にとってはとんでもない情報だ。値千金どころの話ではない。

「シルフィア、何を言っているか分かっているのか。それは魔法の深淵を覗くに等しいことだぞ。それを十歳の子供が為したというのか?」

「ええ。私だって魔術師の端くれです。私も魔法陣についてはずっと調べてきました。それこそ気が遠くなるほどの時間を」

 シルフィアはエルフだ。私たちの一生以上の時間をかけていても何も不思議ではない。

「しかしそれでも……」

「そう、読み解けませんでした。いくらかわかったことはあります。しかし魔法文字は全く分からない未知の言語。過去のどの文献を漁っても魔法文字は出てきません。だから、ゼロから読み解くしかないのです。全く何もわからない文字を」

 そうだ。だからこそ誰も読み解けなかった。第一何一つ分からない言語をどうやって読み解くというのだ。想像すらできない。

「私も多少は魔法陣に手を加えてはいる。だがそれは何度も試行錯誤を重ねてたまたま効果が上がったものを使っているだけ・・・リエルの子は完璧に思った通りに改変ができるのだな……?」

「その通りです。それと、リエルはあの子に力をセーブするように伝えているようです。」

「なんだと!? あり得ない! あの魔法が手加減されたものだと、そう言うのか!?」

「魔法陣を解析するとは、そういうことなのでしょう。ただ……」

 なんだというのだ。これ以上まだ何かあるというのか。

「仮に私が魔法文字を教えてもらって魔法を改変したとしても、あの魔法を更に強化して魔力制御ができるとは思えません」

 確かにそうだ。魔法はただ強化すればいいというものではない。魔力制御ができなければ魔法は発動しない。魔力がただ無駄になるだけだ。下手すれば暴発する。あれよりまだ上の魔法を制御できるというのか。十歳の子供が。

「これでわかったでしょう。契約魔法まで使った理由が」

「わかっているのか。リエルの子次第では……」

「国が滅ぶでしょうね。だからどうするというのです? 現時点で私やあなたですら及ばないであろう相手に。ただ……私はそんなことにはならないと思っていますよ」

「何を根拠に!」

「リエルの子だからです。あの子がリエルと、そしてラティウスの子だからです」

 そうか……そうだったな。リエルと、そしてラティウスの子か。楽観できるとは思わないが、あの二人の子供なら道を踏み外すことはないだろう。

「それに、私もいます。学園にいる間、いえ、これからも私はあの子を見守ろうと考えています」

「……わかった。シルフィアがそこまで言うなら私もこれ以上はやめておこう」

 きっと、大丈夫だ。そして、それ程の魔術師がいれば、深淵アビスの脅威にだってもしかすると対抗できるかもしれない。

「すまないんだが……会うことはできないのだろうか? 俺は礼を言いたかったんだが……」

「フフ、申し訳ありません。すっかり忘れてしまっておりました。」

「いや、いいんだ。なんというか、よくはわからなかったがものすごい話をしていたというのはわかる」

「お心遣いありがとうございます。それと……そうですね。明日のこの時間、もう一度来ていただけますか? あの子に声をかけておきますので」

「わかった。ありがとう、すまないな」

「いいえ。それで、あなたも来るのでしょう? ミリアーナ」

「ああ、頼む」
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