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「わたしの存在が国家機密とか言ってましたよね? それが原因なんでしょう!?」
「と、言いますと?」

 姿勢を戻し、それどころかソファに背を預けて余裕綽々の態度でシークが人の悪い笑みを浮かべている。セレスは負けじと気持ちを奮い立たせた。

「だから、わたしが変な人に狙われないようにとか……着いていかないようにとか……傍で、見張りやすいようにいっそ結婚とかそんな風にするのが手っとり早いなってこと!」
「聖女サマ普段は話の裏とか読まないのに、今回に限って疑り深いのなんなんです?」
「……それだけあなたの話が胡散臭いってことですよ……!」
「そりゃ違いない」

 はは、と軽く声を出して笑った後、シークは足を組んでセレスを見据える。ううん不遜な態度、とセレスは対抗する様に自分もゆっくりとソファに背凭れた。

「すでにお察しかとは思いますけど、まあ不正解ですよね。でもいいですよ、それでも」

 そんな余裕ぶった態度も秒で吹き飛ばされるが。

「なにが……?」
「貴女が言う様な事はこれっぽっちも無いんですが、そういう理由を付けた方が納得できるってんなら、今はそれでもいいですよって」
「もう少しはっきり」
「どんな理由であれ、貴女が俺の所に来てくれるならそれで構いませんって言ってるんです。俺はどんな手段を使おうと、貴女が欲しいので」

 ひぁっ、とセレスの口から奇声が漏れる。シークはそんなセレスをここぞとばかりに追い込み始めた。

「最終的に俺の気持ちを分かって貰えればいいので。それが伝わる様頑張りますし」

 余裕の姿勢を崩さないまま、シークから飛んでくる想いの圧が凄まじい。セレスは全身真っ赤に染めてプルプルと震え出す。

「そのテの理由がいいって言うならもう一つあるんですけど、どうします?」
「え……どうしますって……どうもしませんが……?」

 まあそう言わずに、と提示された理由にセレスは一瞬気が遠くなる。

「今回の件で昇進しまして、栄えある王国騎士団の副団長に任命されました。で、その褒美として、貴女を娶らせて欲しいと国王に願い出たんです」
「わーっっっ!! なんてこと言ってるんですかーっっっっ!?」
「でもまあ流石に王命だとあまりにも貴女に拒否権がなさ過ぎるので、そこは貴女を口説く許可をくださいって事に変更しました」

 そして、その許可を見事に得たのでこうしてセレスを口説いているのだとシークは笑う。
セレスにとっては全く笑い事では無いけれど。

「それってつまりは王命にしようと思えばできるっていう脅しなのでは……!?」
「まあそうとも取れますよね」
「他人事みたいに言う!」
「自発的に俺の所に来るのと、国家機密の保持の為だと勘違いして来るのと、王命、の三択ですがどれにします? 俺としては一番目をお薦めしますし、俺の希望でもありますが」
「それ選択肢があるって言えます!?」
「聖女サマ的にも一択だと俺も嬉しいです」

 本当に全てが筒抜けだ。セレスは眉間の皺を深く呻き声を上げる。


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