お客様はあやかしです~神様に指名されてあやかし限定のツアコンやってます~

新高

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うどんと景勝地

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「お腹は空いていない? 大丈夫? もう少ししたらサービスエリアがあるけど、なにか軽く食べ物でも買う?」
「だいじょうぶ。おうどんたべるから、がまんできる」
「君はトイレに行かなくて大丈夫か?」
「そういう事は! 訊かなくていい!!」
「おっとコイツはでりかしーがないって言われるやつだな」
「あんた本当にムカつく……!」
「お気遣いしてやったのにえらい言われようだなあ」

 言葉の割に青年が平然としているのは声の質からして明らかだ。この小馬鹿にした様な物言いは腹が立つし、やたらと現代用語を使ってくるのも雪乃は腹が立って仕方がない。

「千年も前の人間だって言ってるくせに、今の言葉使えるのってどうなの!? 熊本とかの地名だってすぐに分かってたし!」

 雪乃が青年の言葉を信用できなかったのはその辺りにも原因がある。どうしてやたらと現代用語に精通しているのか。やはり神というのは自称でしかなく、本当は彼こそが雪乃を魂ごと喰らおうとしているあやかしなのではないか。そう疑いの眼差しを向ければ、青年はやれやれと言わんばかりに大袈裟に首を横に振ってこう言い放った。

「人の子だって千年もあれば色々な事を学び進化するのに、どうして神であるおれがそうではないと思うんだ? 日々知識のアップデートはしているに決まっているじゃないか」

 悔しいかな納得はしてしまう。そもそも、人の信仰を糧に存在しているのだから、その時代の人間の使う言葉を理解していないとその願いを叶える事もできないだろう。
 それでも流石に使い慣れない言葉は発音が怪しかったりするが、それがまた何やらあざとさを感じてしまう。

「早い話が全部ムカつくってことだけどね!」
「お、今おれへの悪意を感じたぞ?」
「気のせいじゃないから安心して」
「馬鹿正直も悪くはないが、たまには隠してもいいんじゃないかー?」
「ちびちゃん達が平気なら、そのまま行こうかな」
「おれとも会話しようぜお嬢さん」
「でもおねえさん、ずっとうんてんしてるから、おやすみしなくて、へいき?」
「えー優しい! どこぞの騒がしい白いのとは大違い!」
「トイレ休憩はいいのかとおれも一声掛けたがなあ」
「このくらいの距離ならまだ平気だけど、でもやっぱり少しだけ寄ろうか。今走ってる、この大きな橋を下からも見てみたいでしょ?」
「みたい! です!!」
「じゃあ寄ろうね。それまでお外の景色を楽しんでてください」
「はあい!」
「尽く無視だぜどう思うチビども?」
「しろさまが、うるいさいからしかたないです」

 少女からの無垢な言葉の刃を正面から食らい、さしもの神もガクリと項垂れる。その姿に、ほんの少しだけ雪乃の溜飲も下がった。
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