闇の人

猫好き作家

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「はわわわわ」

彼女と俺、そこには二人しかいなかった。教室、合計30名。若干少なめな人数のこの場所で俺と彼女は授業を受けていた。季ここ森園学園は田舎の隔離されている場所にある小さなさびれた学校だ。教室はわりかし広く、遊ぶスペースはある。昔は人口もけっこういたらしいが人口減少の波には勝てず毎年子供の数は減っている。雪の積もる場所にあるがクーラーはない。今の季節は夏。過ごしやすい。冬は寒く夏は涼しい、いいところもあればわるいところもある、そんなところ。
俺の名前は稲葉智之。ここでは中学2年生だ。考え方が少し変わっていて、人の殺し方を研究している。もちろん本当にやったりはしない。特殊な力にあこがれていて今修行中の能力は心を覗く行為だ。髪は前髪が長く、ラフな感じに伸ばしている。顔を見られるのが嫌いで、人と関わるのが得意じゃない。それでも集中力はある方で、学園で出された問題に簡単に答えることができる。天才肌、といったら聞こえはいいかもしれないが、俺は世俗の喜びにはあまり興味がない。この学園における中心的な人物とはかかわりがあり、浮いてしまってはいるが埋没してはいない。一目置かれてないと言ったらうそになる。俺の名前は有名だ。なぜなら、この学校のグループの一角を担う、東京学芸会に所属している。
東京学芸会。この名前を聞くだけで、多くのものは震えあがる。それくらい大きな組織なのだ。この組織はここ、森園学園だけではなく、日本の首都の東京、そして京都とつながりを持つ。組織の目的は、いわゆる強奪だ。あらゆるものを手中に収めるために活動している。今までに集めたものは、例えば、真功の真珠。東京にある最強の至宝の一つで持つものに叡智と理性をもたらすとされている。らせんの紛い物、これは兵庫にある至宝の一つで持つものを冥界へ連れて行くとされている。こちらに関しては取扱注意だ。手に入れたものはすでに、死んだ。厳重に京都支部の最奥部に保管されている。
とまあ自己紹介はこのくらいにしよう。主人公もいればヒロインもいる。これからヒロインについて紹介しよう。この物語のヒロイン、彼女、しおり。さっき「はわわわわ」といっていたやつだ。

「ねえねえねえ、智之にゃ!ここ、わかんないにゃ!教えてくれにゃい?」

しおりのやつは学校の授業にあまりついていけていない。この学園のレベルが高いというのもあるが、しおりは特殊だからかもしれない。授業中なんだから話しかけんなよ。といいたいところだが、しおりは俺にとって重要人物なのだ。なぜ重要人物なのかといえば、それは至宝に関係がある。そう、しおりこそが、至宝だから。
しおりはよくみればかわいい。いもっぽいところもあるが、そこらへんはこの片田舎の女子みんなに共通している。でもそのぶん、あかるく気安く、誰にも分け隔てない。いいところも多い。おさげにした黒髪をみているとしおりが重要人物ということを忘れてしまう。たれ目で癒し系。このクラスのみんなに愛されている。おでこがひろくでこりんと揶揄されることはあるが、それは大したことじゃないだろう。そんなことしおりは気にしていない。しおりが気になっているのは、俺?なのだろうか。よく話しかけてくるし、俺のことが好きなのかもしれない。でも俺はしおりと付き合うわけにはいかない。東京学芸会としての任務があるから。そのためにはしおりを利用しないといけない。

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