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【14】星羅雲布~わたしの星の王子様
嵐を呼ぶふたり
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「現在、ロミジュリのブロマイド、印刷中ですが、もうすぐ搬入されまーす!確実に欲しい方はこちらで整理番号を受け取ってくださーい!あと、ロミオ役の御堀誉君のファンクラブも限定入会受付中でーす!ご希望の方はお声掛けくださーい」
商売に長けた経済研究部は早速御堀のファンクラブ受付とブロマイドの予約、そして後日送付のポスターまで予約を開始しはじめた。
御堀と幾久のツーショットが欲しい人は、別売りでもあることだし、一緒にどうか?と尋ねても、一緒に写真を撮る人はほとんどおらず、「じゃあお二人の別ショットを!」と結局大抵が二人だけの写真を望んだ。
勿論、ロミオ役とふたりで撮りたい人もいたし、幾久を隣に指名する人も居た。
さて、ある女子は写真を取り終った後、幾久に紙袋を手渡した。
「あの、ジュリエット君に、これ」
「へ?オレに?」
こくこくと女子は何度も頷く。
「あ、あたし怪しいものじゃありません!ウィステリアの、演劇部です!えと、それジュリエット君にプレゼントで」
「えっ、マジで?」
まさかプレゼントを女子から貰えるなんて思っていなかった幾久は喜んだ。
「うわ、ありがとう!本当にいいの?」
女子はうんうんと頷きながら言った。
「もう、めちゃくちゃ良かったです!明日、二回とも見ます!絶対、来ます!」
「ありがとう!オレもがんばります!」
喜ぶ幾久に、女子は顔を真っ赤にしつつ、頭を下げて教室を出ようとしたその時。
「あの、ロミオ様とお幸せに!」
御堀はにっこり女子に微笑むと、「責任もって幸せにするよ」と幾久の肩を抱いた。
女子は「やべえ」と言いながら教室を出て行った。
「なんか面白いなー、こういうの」
幾久はご機嫌だ。
「しかも女子からプレゼントとかって、小学生の時のクリスマス会以来じゃないかなあ」
「良かったね、幾」
「うん、ほんと誉のおかげだよ!」
あんなに嫌だったジュリエット役だったけれど、こうも皆に喜んでもらえるなら良かったな、と幾久は思った。
さて、女子たちの順番が終わると次は地元組へと変わって行った。
昔から報国院の地球部のファンだと言うおばあちゃんはほくほくしながら幾久と御堀にはさまれて写真を撮っていったし、割とかたそうなおじさんがOBだといって一緒に記念写真を撮った。
名物的な人もいるらしく、二年、三年が久しぶりです、なんて挨拶している人も居た。
そんな風に写真撮影の時間はつつがなく過ぎて言ったのだが、しばらくするととても存在感のある奥様方が現れた。
どう見てもこれまでのお客さんとは場違いな、ハイソな世界に生きている、美しく派手で金持ちそうなマダムが三人現れた。
一人はまるでお高い雑誌からそのまま出てきたような、絵画のような着物姿、もう一人はこれからパーティでもあるんですか?というふうな、びらびらしたレースのシャツに、よく判らないデザインのスカート、柄物のショールに高そうな四角いバッグを持っている。
もう一人はグレーのワンピースだったが、胸にあるゴールドのアクセサリーがさも宝石店に並んでいそうなゴージャスさを醸し出している。
担当の部員が奥様方に声をかけた。
「待ち時間にブロマイドのご予約いかがですか?」
すると奥様の中の一人がずいと前に出てきた。
「そうね、ではブロマイドとポスター、百枚ずつ頂けるかしら?」
「百枚?」
びっくりして聞き返すと、奥様は頷く。
「ええ、百枚。枚数制限はないのよね?」
「ないですけども」
「じゃあ、あたくしは百五十枚いただこうかしら」
もう一人の奥様が言うと、もう一人が「あら。じゃあ、あたくしは二百枚」と言う。
そこだけで完売するんじゃないかという数に驚いていると、一人の奥様が尋ねた。
「ロミオを演じた御堀誉さまを呼んでくださる?ご存じかしら?あたくし達、誉会のものですの」
「あー、はい、ちょっとお待ちください」
これは知り合いらしいな、と察した係りが部屋へ入って行った。
奥様方は、さも自分たちは特別なのだぞ、といった空気と香水の香りをぷんぷんさせながら教室の前に立つ。
と、列で待っていた女子高生が、奥様連中に声をかけた。
「おばさんたち、ちゃんと並んでください」
「おばっ……、」
奥様方が反論しようとしたが、ずらっと並んでいる面々に睨まれてしまってはさすがに居づらい。
すると、着物姿の奥様がずいっと前に出て女子に告げた。
「あたくし達は誉様、ロミオ様に招待されて来たのよ?」
「で?」
若い女子は「それがなにか?」と言った風に奥様を睨んでいる。
奥様は言う
「チケットを買って来た、あなた達とは立場が違うの」
「いいからどいておばさん。あたしらが先なんだけど」
「おばっ、」
あ、これなんかヤバそう。
仁義なき戦いが始まりそうな雰囲気を察知した別の係りがさっと声をかけた。
「えーと、○番のかた、中へどうぞー」
「はーい。ロミオ君、外のおばさん、あれ何?ロミオ君の知り合い?順番抜かすし態度悪いんだけど」
ウィステリアの女子らしいというか、ずけずけと言いながら教室へ入って行く。
それだけで何があったか御堀は察した。
「それは申し訳なかったね。父の会社がお世話になっている方々の奥様方なんだ。ご無礼のないようにしないといけなくて」
「ふーん、そういうのか」
ナルホド、と女子は頷いた。
「じゃ、写真だけど、どういうのがいい?」
御堀が尋ねると、女子はきりっとした表情で御堀に言った。
「ジュリエット君一択で」
「了解」
御堀王子さまではなく、ジュリエット希望だからこそ、余計に御堀にずけずけ言えたのだろう。
幾久は初めての一人きりのご指名に驚いていた。
「え?オレだけ?」
戸惑う幾久に女子は頷いた。
「ジュリエット君一択で」
御堀は察すると、「幾、笑顔で」とほほ笑んだ。
女子としっかり腕を組まされ、幾久は緊張して写真を撮った。
がらりと教室の扉を開けて、女子は睨みをきかせている友人たちと、誉会の奥様を見つけ、言った。
「ねーねー、あの人たち、ロミオ君の、お父さんの会社関係の人の奥様なんだってー」
「えー?じゃあロミオ様、お父さんの会社の手伝いさせられてるの?高校の文化祭なのに?激烈ブラックじゃん」
「いい大人が学校行事にまで父親の会社を盾に息子に会いに来るのは引く」
女子たちが言うと奥様方はぐぬぬ、となるもそこは事実なので否定できない。
外の空気が不穏だとみて、御堀は教室から顔を出した。
「ロミオ様!」
出てきた御堀にキャーッと女子の声が上がる。
「ごめん、ちょっと休憩いいかな。五分でいいんだけど」
「そりゃ俺らはいいけどさ」
係りに声をかけると御堀は頷き、立っていた誉会の奥様方に頭を下げた。
「奥様方、本日はお越しくださいましてありがとうございます」
キラッキラの笑顔で御堀が王子様のように頭を下げて会釈すると、奥様方は顔を赤くしながら首を横に振った。
「ほっ、誉さま!ご無沙汰しております!お元気そうでなによりですわ」
「ありがとうございます。奥様方には遠いところまで足をお運び頂きありがたく存じます」
着物の奥様は首をぶんぶんと横に振った。
「いいえ、誉会としては当然ですわ!」
ずいっとレースの奥様も首を突っ込む。
「ええ、誉会の代表として当たり前ですもの、お気になさらないで」
頷き、グレーのワンピースの奥様が言う。
「あたくしたち、最低でも一人百枚はブロマイドを購入するつもりですわ!誉会で配りますの!」
「ありがとうございます」
誉が微笑むと、ほう……と奥様と女子からため息が漏れる。
揉めてるっぽいと聞いた幾久は心配で、ひょこっと教室から顔を出す。
と、めざとく見つけた女子から声が上がった。
「ジュリエット君だ!」
「かわいい!こっち向いて!」
「あ、ドモ」
ぺこっと頭を下げるとまたきゃあ、という声が上がる。
商売に長けた経済研究部は早速御堀のファンクラブ受付とブロマイドの予約、そして後日送付のポスターまで予約を開始しはじめた。
御堀と幾久のツーショットが欲しい人は、別売りでもあることだし、一緒にどうか?と尋ねても、一緒に写真を撮る人はほとんどおらず、「じゃあお二人の別ショットを!」と結局大抵が二人だけの写真を望んだ。
勿論、ロミオ役とふたりで撮りたい人もいたし、幾久を隣に指名する人も居た。
さて、ある女子は写真を取り終った後、幾久に紙袋を手渡した。
「あの、ジュリエット君に、これ」
「へ?オレに?」
こくこくと女子は何度も頷く。
「あ、あたし怪しいものじゃありません!ウィステリアの、演劇部です!えと、それジュリエット君にプレゼントで」
「えっ、マジで?」
まさかプレゼントを女子から貰えるなんて思っていなかった幾久は喜んだ。
「うわ、ありがとう!本当にいいの?」
女子はうんうんと頷きながら言った。
「もう、めちゃくちゃ良かったです!明日、二回とも見ます!絶対、来ます!」
「ありがとう!オレもがんばります!」
喜ぶ幾久に、女子は顔を真っ赤にしつつ、頭を下げて教室を出ようとしたその時。
「あの、ロミオ様とお幸せに!」
御堀はにっこり女子に微笑むと、「責任もって幸せにするよ」と幾久の肩を抱いた。
女子は「やべえ」と言いながら教室を出て行った。
「なんか面白いなー、こういうの」
幾久はご機嫌だ。
「しかも女子からプレゼントとかって、小学生の時のクリスマス会以来じゃないかなあ」
「良かったね、幾」
「うん、ほんと誉のおかげだよ!」
あんなに嫌だったジュリエット役だったけれど、こうも皆に喜んでもらえるなら良かったな、と幾久は思った。
さて、女子たちの順番が終わると次は地元組へと変わって行った。
昔から報国院の地球部のファンだと言うおばあちゃんはほくほくしながら幾久と御堀にはさまれて写真を撮っていったし、割とかたそうなおじさんがOBだといって一緒に記念写真を撮った。
名物的な人もいるらしく、二年、三年が久しぶりです、なんて挨拶している人も居た。
そんな風に写真撮影の時間はつつがなく過ぎて言ったのだが、しばらくするととても存在感のある奥様方が現れた。
どう見てもこれまでのお客さんとは場違いな、ハイソな世界に生きている、美しく派手で金持ちそうなマダムが三人現れた。
一人はまるでお高い雑誌からそのまま出てきたような、絵画のような着物姿、もう一人はこれからパーティでもあるんですか?というふうな、びらびらしたレースのシャツに、よく判らないデザインのスカート、柄物のショールに高そうな四角いバッグを持っている。
もう一人はグレーのワンピースだったが、胸にあるゴールドのアクセサリーがさも宝石店に並んでいそうなゴージャスさを醸し出している。
担当の部員が奥様方に声をかけた。
「待ち時間にブロマイドのご予約いかがですか?」
すると奥様の中の一人がずいと前に出てきた。
「そうね、ではブロマイドとポスター、百枚ずつ頂けるかしら?」
「百枚?」
びっくりして聞き返すと、奥様は頷く。
「ええ、百枚。枚数制限はないのよね?」
「ないですけども」
「じゃあ、あたくしは百五十枚いただこうかしら」
もう一人の奥様が言うと、もう一人が「あら。じゃあ、あたくしは二百枚」と言う。
そこだけで完売するんじゃないかという数に驚いていると、一人の奥様が尋ねた。
「ロミオを演じた御堀誉さまを呼んでくださる?ご存じかしら?あたくし達、誉会のものですの」
「あー、はい、ちょっとお待ちください」
これは知り合いらしいな、と察した係りが部屋へ入って行った。
奥様方は、さも自分たちは特別なのだぞ、といった空気と香水の香りをぷんぷんさせながら教室の前に立つ。
と、列で待っていた女子高生が、奥様連中に声をかけた。
「おばさんたち、ちゃんと並んでください」
「おばっ……、」
奥様方が反論しようとしたが、ずらっと並んでいる面々に睨まれてしまってはさすがに居づらい。
すると、着物姿の奥様がずいっと前に出て女子に告げた。
「あたくし達は誉様、ロミオ様に招待されて来たのよ?」
「で?」
若い女子は「それがなにか?」と言った風に奥様を睨んでいる。
奥様は言う
「チケットを買って来た、あなた達とは立場が違うの」
「いいからどいておばさん。あたしらが先なんだけど」
「おばっ、」
あ、これなんかヤバそう。
仁義なき戦いが始まりそうな雰囲気を察知した別の係りがさっと声をかけた。
「えーと、○番のかた、中へどうぞー」
「はーい。ロミオ君、外のおばさん、あれ何?ロミオ君の知り合い?順番抜かすし態度悪いんだけど」
ウィステリアの女子らしいというか、ずけずけと言いながら教室へ入って行く。
それだけで何があったか御堀は察した。
「それは申し訳なかったね。父の会社がお世話になっている方々の奥様方なんだ。ご無礼のないようにしないといけなくて」
「ふーん、そういうのか」
ナルホド、と女子は頷いた。
「じゃ、写真だけど、どういうのがいい?」
御堀が尋ねると、女子はきりっとした表情で御堀に言った。
「ジュリエット君一択で」
「了解」
御堀王子さまではなく、ジュリエット希望だからこそ、余計に御堀にずけずけ言えたのだろう。
幾久は初めての一人きりのご指名に驚いていた。
「え?オレだけ?」
戸惑う幾久に女子は頷いた。
「ジュリエット君一択で」
御堀は察すると、「幾、笑顔で」とほほ笑んだ。
女子としっかり腕を組まされ、幾久は緊張して写真を撮った。
がらりと教室の扉を開けて、女子は睨みをきかせている友人たちと、誉会の奥様を見つけ、言った。
「ねーねー、あの人たち、ロミオ君の、お父さんの会社関係の人の奥様なんだってー」
「えー?じゃあロミオ様、お父さんの会社の手伝いさせられてるの?高校の文化祭なのに?激烈ブラックじゃん」
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女子たちが言うと奥様方はぐぬぬ、となるもそこは事実なので否定できない。
外の空気が不穏だとみて、御堀は教室から顔を出した。
「ロミオ様!」
出てきた御堀にキャーッと女子の声が上がる。
「ごめん、ちょっと休憩いいかな。五分でいいんだけど」
「そりゃ俺らはいいけどさ」
係りに声をかけると御堀は頷き、立っていた誉会の奥様方に頭を下げた。
「奥様方、本日はお越しくださいましてありがとうございます」
キラッキラの笑顔で御堀が王子様のように頭を下げて会釈すると、奥様方は顔を赤くしながら首を横に振った。
「ほっ、誉さま!ご無沙汰しております!お元気そうでなによりですわ」
「ありがとうございます。奥様方には遠いところまで足をお運び頂きありがたく存じます」
着物の奥様は首をぶんぶんと横に振った。
「いいえ、誉会としては当然ですわ!」
ずいっとレースの奥様も首を突っ込む。
「ええ、誉会の代表として当たり前ですもの、お気になさらないで」
頷き、グレーのワンピースの奥様が言う。
「あたくしたち、最低でも一人百枚はブロマイドを購入するつもりですわ!誉会で配りますの!」
「ありがとうございます」
誉が微笑むと、ほう……と奥様と女子からため息が漏れる。
揉めてるっぽいと聞いた幾久は心配で、ひょこっと教室から顔を出す。
と、めざとく見つけた女子から声が上がった。
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