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【20】適材適所~愛とは君が居るということ
大人って本当にえげつない
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恭王寮から御門寮は車ですぐで、あっという間にタクシーは到着した。
御門寮の門の横の潜戸から中へ入り、庭の明かりを頼りに寮に到着した。
鍵はかかっていなかった。
からりと戸を横に滑らすと、暖かい空気がふわりと届く。
「ただいまー」
三人が言うと、置くから足音が聞こえた。
「無事帰ったか。迷子にならんでよかったの、幾久」
出てきたのは高杉で、やっぱり一言余計だ。
「誉がいるから大丈夫でーす」
「迷子は否定しないのかよ」
呆れる児玉に御堀が言った。
「そうなっても見てるから」
「お前も否定しないのかよ」
ま、いいやと言う三人は、いつものように玄関口で上着を脱ぎ、上着用のハンガーラックにかけておく。
「風呂、沸いちょるぞ」
「俺先!」
寝るのが早い児玉が挙手して、幾久も御堀も、「じゃ、後からでいいよ」と頷いた。
「それじゃあ、迷子にならんかったほうびに茶でも入れちゃろう」
「オレも先輩がお留守番で良い子にしてたごほうびがあるっス」
幾久が言うと、高杉が笑った。
「楽しみにしちょこう」
そうして全員は、御門寮の居間へと向かったのだった。
一方こちらは恭王寮の居間だ。
江村に早めに風呂に入って寝るように、と伝え、雪充は幾久に貰ったプレゼントを居間で開いていた。
菫あてのものは小さな袋に入っていたのでそれは紙袋の中へ戻し、雪充あてのプレゼントを開く。
入っていたのは、スノーフレーク模様が入った、黒と灰色と白の、お洒落なネックウォーマーだった。
「ネックウォーマーかあ」
自分では決して選ばないアイテムとデザインだが、悪くない。
かっこいい部類に入るな、と思い、もうひとつの袋を開けた。
「!」
雪充はそこで、御堀が言った意味がやっと判った。
『幾にそっくりなの、入ってますよ』
「そういう意味か!」
雪充は爆笑した。
手元にあるのは、ピーターラビットの小さなマスコットのキーホルダーだが、ほやんとした雰囲気が確かにぼうっとしている時の幾久に似ている。
おまけに幾久が着ていたのはブルーグレーのダッフルコート。
(あー、確かにこれはいっくんだ)
雪充が笑っていると、一年の桂弥太郎が寮の休憩室へ出てきた。
「雪ちゃん先輩、なに笑ってるんですか?」
雪充が勉強を時々見るので、参考書を抱えていた弥太郎が尋ねると、服部も出てきた。
「これ。いっくんに似てるだろ?」
雪充が言うと、二人はキーホルダーを見て、ぶっと噴出した。
すると、服部が、ひらめいた!という顔になって雪充に言った。
「先輩、それ、ホーム部に言ったら面白いことできますよ」
翌日の朝、クリスマス当日だが、幾久たちにとってはライヴの二日目だ。
昨日と同じ時間で移動して、児玉達は昨日買えなかったグッズにチャレンジするのだという。
幾久と御堀は博多駅で二人と別れたが、しばらく時間をずらして宮部に連絡すると、用意した車で駅から会場のある場所まで移動するように言われた。
「なにするんだろうね?」
昨日のうちに、なにかに巻き込まれるのは判っていたが、御堀は幾久に参加して欲しいとの事だし、幾久も昨日のライヴがあまりに凄かったので、まあいいか、と思うようになっていた。
一台の黒い大きなワゴン車が幾久と御堀の前で止まった。
がらっとワゴンがあくと、中にはグラスエッジのスタッフTシャツを着た南風が居た。
「おまたせ!じゃあ向かおうか」
二人は頷き、ワゴン車に乗り込んだ。
車は会場の横の道路を越えてどんどん沿岸へ向かっていく。
「どこいくんだろう」
てっきり会場へ向かうもの、と思い込んでいた幾久と御堀は驚くが、車は迷わず港のほうへ進んでいく。
会場の近くで南風は車を降りてしまい、「目的地に兄貴がいるから」と二人をそのままに手を振った。
車はコンテナの重なった広い場所からぐんぐんと奥へ向かい、場所は海岸傍のターミナルに到着し、やっと止まった。
「……ここ、どこ」
車から降りて困惑する幾久に、スマホを見つめながら御堀が答えた。
「博多シー通り、の埠頭みたいだね」
「いや、それはいいんだけど」
五月にフェスがあった長州市の海岸のように、だだっ広い駐車場のような何もない場所。
見渡す限り海と空でやたら世界が広く見える。
三十人くらい集まっている一角があって、そこからスーツの男性が駆け寄ってきた。
「やあ、お疲れいっくん!」
近づいてきたのは宮部だ。
「あ、どもっす。今日もお世話になるっス」
ぺこりと頭を下げたものの、一体こんなところになぜ幾久と御堀を呼び出したのだろうか。
「昨日言ってた、アオとの勝負、あるじゃない?」
「あ、はい」
福原に頼まれて、青木に運動させるため、幾久は青木に勝負を申し出た。
つまり、ランニングかマラソンで、青木と勝負して負けた方がなんでも聞く、というやつだ。
「あれ、今からここでやって」
宮部の言葉に、幾久は驚いた。
「えー!今から?」
驚く幾久に宮部はにこにこと頷き言った。
「うん。実はあれから企画してね、福岡の番組でグラスエッジの特集することになったんだけど、その目玉でアオといっくんのランニング勝負を持ってこようと言う事に決まってね!ほら、あそこカメラマン居るけど、いっくんは顔出しNGってことなんでそこは安心して!」
安心も何も、どうしてそんなことになっているんだ。
「……オレに断る余地は」
「まあないけど、ちゃんとバイト代払うってことで御堀君にはOK貰ったんで!」
「誉!オレを売ったな!」
幾久が怒鳴ると御堀が言った。
「サッカーと同じで期限付きレンタル。売ってないよ、貸すだけ」
「ああ、そう……」
幾久はがっかり肩を落とす。
御堀が絡んでいるなら、逆らうのはまず無理だし、宮部が言うならちゃんと幾久の身は隠してくれるだろう。
「もー……なんでお前らそう強引なんだよ」
ぼそっと言うも、御堀はにやっと笑って言った。
「だって幾、勝つんだろ?」
「勝つよ、そりゃね」
青木の実力は知らないが、運動していない大人に負けるとは思えないし負ける気もない。
幾久の言葉に宮部はにこにことして、袋を差し出した。
「何すか?」
「それ着て勝負してね!グラスエッジとコラボしたスポーツウェアの試作品で」
袋の中はジャージのセットウェアだった。
上はパーカーのジャージで、フードは白から水色、紺色とまるで集の髪のような色のグラデーションで、裾のあたりは紺から黒、ジャージの下は真っ黒なズボンでラインは細身だ。
グラスエッジのバンドロゴが、袖や足のラインにトリックアートのように隠されて良く見たらわかるようになっているデザインで、凄くかっこいい。
「これ、貰えますか?」
幾久が尋ねると宮部が頷いた。
「いいよ!もちろん!」
「これより、ひとつ大きいサイズがいいんスけど」
絶対にこのジャージのセットは児玉が喜ぶに違いない。
児玉は入学時は幾久よりちょっと大きいくらいだったのに、今はぐんぐん伸びて御堀に近くなっている。
なのでサイズは幾久よりも大きい。
「いいよいいよ!今日いますぐは無理だけど、後日寮に送っていい?」
「もちろんス」
幾久は頷く。
「着替えだけど、さっきの車の中でいいかな」
幾久は頷く。
「いっス」
ジャージを受け取り、幾久は再び着替えるために車へ乗り込んだ。
車の外で待っている御堀は、宮部に尋ねた。
「青木先輩はまだなんですか?」
「今頃やっと番組の内容を聞いていることじゃないかな。ふっくんらは勝手に撮影始めてて、そろそろこっちに向かうけど、アオはこっちも作戦があってね」
んふふ、と宮部は笑ってスマホを取り出した。
「あ、アオ?番組の内容聞いた?」
青木にかけるとすぐに出たようで、向こうから不機嫌な青木の声が聞こえた。
『いま聞いたばっかだよ!なんでさっさと教えてくんねーんだよ!いっくん、いまどこにいんだよ!』
すると宮部は御堀へスマホを向けた。
「ごらんのとおり、いっくんはすでに港に到着している。そして現在あの車の中で生着替えの真っ最中。走ってこないと間に合わないぞ。場所はわかるだろ?」
そう言って宮部がぐるっとあたりをカメラで映した。
『会場の裏じゃねえかよ!!!!!!』
「そうだよ。早く来ないと、いっくんだけで撮影、」
ぶちっとスマホが切られた。
多分青木のことだ。
幾久が居ると知って飛び出してきたのだろう。
宮部は全く想定通り、という表情でにこにこして御堀に言った。
「ふっくんらには仕込み頼んであるから、すぐ来るよ!」
なるほど、と御堀は感心した。
あの面倒くさそうな先輩達を扱うだけあって、なかなかに強引な人だったが、やり方は見習えるところがある。
「勉強になります」
御堀が言うと、宮部はにこにこと微笑んで言った。
「大学出たあとでも、うちへの就職考えておいてね!いっくんとセットで!」
「考えておきます」
「本気でね!」
宮部がにこにこと頷いたところで、幾久の着替えが終わり、出てきた。
「着替え終わったけど」
「おー、似合う似合う!かっこいい!」
宮部がほめると御堀も頷いた。
「かっこいいし、似合ってるよ、幾」
「えー、本当?なんかかっこよすぎて照れるなあ」
こんなにデザインの派手なジャージは持っていないので、ちょっと照れてしまうが、御堀がほめるなら悪くないのだろう。
話をしていると、遠くから一台の車がこちらへ向かって走ってきていた。
「あー、じゃあ到着したな。さて、いっくん。お仕事お願いします!」
「ウス!」
もうこうなったら仕方がない。
バイト代も出るし、御堀も宮部とグルだったわけだし。
あきらめて青木をこてんぱんにしてやろう。
幾久はふう、と息を吐いた。
御門寮の門の横の潜戸から中へ入り、庭の明かりを頼りに寮に到着した。
鍵はかかっていなかった。
からりと戸を横に滑らすと、暖かい空気がふわりと届く。
「ただいまー」
三人が言うと、置くから足音が聞こえた。
「無事帰ったか。迷子にならんでよかったの、幾久」
出てきたのは高杉で、やっぱり一言余計だ。
「誉がいるから大丈夫でーす」
「迷子は否定しないのかよ」
呆れる児玉に御堀が言った。
「そうなっても見てるから」
「お前も否定しないのかよ」
ま、いいやと言う三人は、いつものように玄関口で上着を脱ぎ、上着用のハンガーラックにかけておく。
「風呂、沸いちょるぞ」
「俺先!」
寝るのが早い児玉が挙手して、幾久も御堀も、「じゃ、後からでいいよ」と頷いた。
「それじゃあ、迷子にならんかったほうびに茶でも入れちゃろう」
「オレも先輩がお留守番で良い子にしてたごほうびがあるっス」
幾久が言うと、高杉が笑った。
「楽しみにしちょこう」
そうして全員は、御門寮の居間へと向かったのだった。
一方こちらは恭王寮の居間だ。
江村に早めに風呂に入って寝るように、と伝え、雪充は幾久に貰ったプレゼントを居間で開いていた。
菫あてのものは小さな袋に入っていたのでそれは紙袋の中へ戻し、雪充あてのプレゼントを開く。
入っていたのは、スノーフレーク模様が入った、黒と灰色と白の、お洒落なネックウォーマーだった。
「ネックウォーマーかあ」
自分では決して選ばないアイテムとデザインだが、悪くない。
かっこいい部類に入るな、と思い、もうひとつの袋を開けた。
「!」
雪充はそこで、御堀が言った意味がやっと判った。
『幾にそっくりなの、入ってますよ』
「そういう意味か!」
雪充は爆笑した。
手元にあるのは、ピーターラビットの小さなマスコットのキーホルダーだが、ほやんとした雰囲気が確かにぼうっとしている時の幾久に似ている。
おまけに幾久が着ていたのはブルーグレーのダッフルコート。
(あー、確かにこれはいっくんだ)
雪充が笑っていると、一年の桂弥太郎が寮の休憩室へ出てきた。
「雪ちゃん先輩、なに笑ってるんですか?」
雪充が勉強を時々見るので、参考書を抱えていた弥太郎が尋ねると、服部も出てきた。
「これ。いっくんに似てるだろ?」
雪充が言うと、二人はキーホルダーを見て、ぶっと噴出した。
すると、服部が、ひらめいた!という顔になって雪充に言った。
「先輩、それ、ホーム部に言ったら面白いことできますよ」
翌日の朝、クリスマス当日だが、幾久たちにとってはライヴの二日目だ。
昨日と同じ時間で移動して、児玉達は昨日買えなかったグッズにチャレンジするのだという。
幾久と御堀は博多駅で二人と別れたが、しばらく時間をずらして宮部に連絡すると、用意した車で駅から会場のある場所まで移動するように言われた。
「なにするんだろうね?」
昨日のうちに、なにかに巻き込まれるのは判っていたが、御堀は幾久に参加して欲しいとの事だし、幾久も昨日のライヴがあまりに凄かったので、まあいいか、と思うようになっていた。
一台の黒い大きなワゴン車が幾久と御堀の前で止まった。
がらっとワゴンがあくと、中にはグラスエッジのスタッフTシャツを着た南風が居た。
「おまたせ!じゃあ向かおうか」
二人は頷き、ワゴン車に乗り込んだ。
車は会場の横の道路を越えてどんどん沿岸へ向かっていく。
「どこいくんだろう」
てっきり会場へ向かうもの、と思い込んでいた幾久と御堀は驚くが、車は迷わず港のほうへ進んでいく。
会場の近くで南風は車を降りてしまい、「目的地に兄貴がいるから」と二人をそのままに手を振った。
車はコンテナの重なった広い場所からぐんぐんと奥へ向かい、場所は海岸傍のターミナルに到着し、やっと止まった。
「……ここ、どこ」
車から降りて困惑する幾久に、スマホを見つめながら御堀が答えた。
「博多シー通り、の埠頭みたいだね」
「いや、それはいいんだけど」
五月にフェスがあった長州市の海岸のように、だだっ広い駐車場のような何もない場所。
見渡す限り海と空でやたら世界が広く見える。
三十人くらい集まっている一角があって、そこからスーツの男性が駆け寄ってきた。
「やあ、お疲れいっくん!」
近づいてきたのは宮部だ。
「あ、どもっす。今日もお世話になるっス」
ぺこりと頭を下げたものの、一体こんなところになぜ幾久と御堀を呼び出したのだろうか。
「昨日言ってた、アオとの勝負、あるじゃない?」
「あ、はい」
福原に頼まれて、青木に運動させるため、幾久は青木に勝負を申し出た。
つまり、ランニングかマラソンで、青木と勝負して負けた方がなんでも聞く、というやつだ。
「あれ、今からここでやって」
宮部の言葉に、幾久は驚いた。
「えー!今から?」
驚く幾久に宮部はにこにこと頷き言った。
「うん。実はあれから企画してね、福岡の番組でグラスエッジの特集することになったんだけど、その目玉でアオといっくんのランニング勝負を持ってこようと言う事に決まってね!ほら、あそこカメラマン居るけど、いっくんは顔出しNGってことなんでそこは安心して!」
安心も何も、どうしてそんなことになっているんだ。
「……オレに断る余地は」
「まあないけど、ちゃんとバイト代払うってことで御堀君にはOK貰ったんで!」
「誉!オレを売ったな!」
幾久が怒鳴ると御堀が言った。
「サッカーと同じで期限付きレンタル。売ってないよ、貸すだけ」
「ああ、そう……」
幾久はがっかり肩を落とす。
御堀が絡んでいるなら、逆らうのはまず無理だし、宮部が言うならちゃんと幾久の身は隠してくれるだろう。
「もー……なんでお前らそう強引なんだよ」
ぼそっと言うも、御堀はにやっと笑って言った。
「だって幾、勝つんだろ?」
「勝つよ、そりゃね」
青木の実力は知らないが、運動していない大人に負けるとは思えないし負ける気もない。
幾久の言葉に宮部はにこにことして、袋を差し出した。
「何すか?」
「それ着て勝負してね!グラスエッジとコラボしたスポーツウェアの試作品で」
袋の中はジャージのセットウェアだった。
上はパーカーのジャージで、フードは白から水色、紺色とまるで集の髪のような色のグラデーションで、裾のあたりは紺から黒、ジャージの下は真っ黒なズボンでラインは細身だ。
グラスエッジのバンドロゴが、袖や足のラインにトリックアートのように隠されて良く見たらわかるようになっているデザインで、凄くかっこいい。
「これ、貰えますか?」
幾久が尋ねると宮部が頷いた。
「いいよ!もちろん!」
「これより、ひとつ大きいサイズがいいんスけど」
絶対にこのジャージのセットは児玉が喜ぶに違いない。
児玉は入学時は幾久よりちょっと大きいくらいだったのに、今はぐんぐん伸びて御堀に近くなっている。
なのでサイズは幾久よりも大きい。
「いいよいいよ!今日いますぐは無理だけど、後日寮に送っていい?」
「もちろんス」
幾久は頷く。
「着替えだけど、さっきの車の中でいいかな」
幾久は頷く。
「いっス」
ジャージを受け取り、幾久は再び着替えるために車へ乗り込んだ。
車の外で待っている御堀は、宮部に尋ねた。
「青木先輩はまだなんですか?」
「今頃やっと番組の内容を聞いていることじゃないかな。ふっくんらは勝手に撮影始めてて、そろそろこっちに向かうけど、アオはこっちも作戦があってね」
んふふ、と宮部は笑ってスマホを取り出した。
「あ、アオ?番組の内容聞いた?」
青木にかけるとすぐに出たようで、向こうから不機嫌な青木の声が聞こえた。
『いま聞いたばっかだよ!なんでさっさと教えてくんねーんだよ!いっくん、いまどこにいんだよ!』
すると宮部は御堀へスマホを向けた。
「ごらんのとおり、いっくんはすでに港に到着している。そして現在あの車の中で生着替えの真っ最中。走ってこないと間に合わないぞ。場所はわかるだろ?」
そう言って宮部がぐるっとあたりをカメラで映した。
『会場の裏じゃねえかよ!!!!!!』
「そうだよ。早く来ないと、いっくんだけで撮影、」
ぶちっとスマホが切られた。
多分青木のことだ。
幾久が居ると知って飛び出してきたのだろう。
宮部は全く想定通り、という表情でにこにこして御堀に言った。
「ふっくんらには仕込み頼んであるから、すぐ来るよ!」
なるほど、と御堀は感心した。
あの面倒くさそうな先輩達を扱うだけあって、なかなかに強引な人だったが、やり方は見習えるところがある。
「勉強になります」
御堀が言うと、宮部はにこにこと微笑んで言った。
「大学出たあとでも、うちへの就職考えておいてね!いっくんとセットで!」
「考えておきます」
「本気でね!」
宮部がにこにこと頷いたところで、幾久の着替えが終わり、出てきた。
「着替え終わったけど」
「おー、似合う似合う!かっこいい!」
宮部がほめると御堀も頷いた。
「かっこいいし、似合ってるよ、幾」
「えー、本当?なんかかっこよすぎて照れるなあ」
こんなにデザインの派手なジャージは持っていないので、ちょっと照れてしまうが、御堀がほめるなら悪くないのだろう。
話をしていると、遠くから一台の車がこちらへ向かって走ってきていた。
「あー、じゃあ到着したな。さて、いっくん。お仕事お願いします!」
「ウス!」
もうこうなったら仕方がない。
バイト代も出るし、御堀も宮部とグルだったわけだし。
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幾久はふう、と息を吐いた。
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