【R18】会社シリーズ

いびつなきのこ

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営業部編

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 この春から俺、西村にしむらサトシは会社員になった。入社して研修が終わると、新入社員は基本的に営業部に配属される。

 それは俺も例外では無かった。

「知っての通り、本日より先輩に付いて挨拶周りをしてもらう。基本的な事は研修で習った事をしっかりとすれば問題はない!」

 うちの会社は業者を相手にしたいわゆるBtoBと呼ばれる営業形態だ。仕事の内容は業務管理用のタブレットの点検と状況に合わせて交換や新しいシステムを提案する事。業者を相手にしている分、担当者との関係性が重要になってくる仕事だ。

 その為、初めの数ヶ月は挨拶回りと担当となる企業の引き継ぎをする先輩と回る事になっていた。

「西村くん。ちゃんと名刺は持ってきている?」
「はい。もちろん持ってます」

 俺のOJTをしてくれる事になったのは成山なるやまという入社3年目の女の先輩だった。彼女は美人な方ではあるとおもうのだが、出世を狙っているキャリアウーマンといった雰囲気で、何処かしっかりしなければいけないと張り詰めた様な感じがする。

「初めに私が挨拶をしたあと、紹介するからその時にスムーズに出せる様にしておきなさい」
「わかりました」
「まだ、社会人になって間もないから仕方ないのかもしれないけれど返事は"かしこまりました"か、"承知しました"と言う様にした方がいいわよ」
「はい。あ、いや、畏まりました」

 そう言うと、彼女は少し微笑ほほえんだあと仕事モードに切り替えたのが分かる。彼女は取引先のオフィスに着くと「最初は流れだけ見ておきなさい」と俺の紹介を済ませると状況確認と、今後のプランを雑談を交えながら担当者と話していく。

 学生の時にしていた飲食業のアルバイトとは違い、やけにビジネスという言葉がしっくり来る様に感じた。

「さっきの取引先は、システムの移行には前向きに検討しているの」
「移行プランの話をしてましたね」
「ただ、彼自身が前向きでも上に提案出来る様にメリットやリスクをしっかり伝えておかないと移行の許可は降りないわね」
「なるほど。リスクもですか」
「そう、それくらいのリスクなら移行した方がいいと思わせる事が重要よ!」

 成山さんは商談のあと、こうして状況や進め方を丁寧に教えてくれる。シビアな所はあるものの、納得するまで説明する姿勢は俺自身、意識していくべきだと思っていた。

 研修から一ヵ月位経つと、担当予定の取引先は俺自身が商談をする様に徐々に移行し始めた。初めは確認して成山さんにその場で報告する。慣れてくると担当者のヒヤリングを行いプラン作りを相談するという形で一人立ちを促している。

 そうしていくうちに、彼女のイメージが少し変わった様に感じる。何というか、個人的な感情も話してくれる様になってきたのだ。

「あの担当、絶対切り替えとかめんどくさいと思っているよね」
「間違いないですね」
「提案を上手くできないから、仕事が大変になってるのわかっているのかなぁー」

 俺自身も仕事を覚えてきた事もあり、共感する事も多くそれはそれで仕事なのだと思う。つまりは戦友みたいな感覚で、話せる様になっていた。

「ねぇ、西村くん。仕事の後何か予定ある?」
「今日は特に無いですけど」
「飲みに行くとか嫌いな人?」
「いや、時々学生時代の友人と行ったりしてますよ」

 それは成山さんからの飲みの誘いだった。同期入社の奴らは先輩とよく飲みに行っていると聞いていた。だけど彼女は女性という事もあり、サシ飲みはしないのだと思っていただけに意外だった。

「それじゃ、ちょっと付き合ってもらおうかな!」
「全然いいですよ!」

 理由はなんとなくわかる。今日行った取引先の切り替えの話がなかなか進まない事に不満があるのだろう。取引先自体というよりはその事を詰めてくる上司の方かもしれない。

 案の定、居酒屋に着くとしばらくは彼女の愚痴を聞く事になっていた。

「説得や資料でどうにかなる事と、ならない事があると思うの!」
「間違いないです、あれは担当者さんやる気ないですからねぇ」
「だから、私はあそこにあんまり時間かけたくないんだよね」
「それでいいと思いますけどねぇ」

 俺たちは二人でおっさんの様な社会人トークを繰り広げていた。見た目が若い男女というのが唯一の救いなのだろう。

「私、頑張ってるのになぁ……」

 ハイボールをかき混ぜながら彼女はテーブルに溶ける様に崩れていく。普段の雰囲気とは違い女の子らしいギャップを可愛いと思ってしまった。

「成山さんは頑張ってますよ」
「ありがと。西村くんは優しいね」
「いえいえ、普通にそう思っただけです」

 少し飲み過ぎだのだろう。彼女のプライベートでの性格が少しだけ見えた様な気がした。

「ハイボール追加で!」
「まだ飲むんですかっ!?」
「飲まなきゃやってらんないよ……」

(すみません、水二つもらっていいですか?)

 俺はそっと水を頼み、彼女が潰れてしまわない様にする。

「えー、西村くんは飲まないの?」
「あと一杯だけですからね、ほら水も飲んどいてください!」

 ふと時計を見ると23時を回っている。もうそろそろ締める事を考えておかなければと考えた。

「成山さん、そろそろお開きにしますか」
「えーっ」
「そろそろ終電とかもヤバいと思うんで」
「それなら仕方ないよね」

 俺は店員さんを呼び会計を頼む。伝票が来ると俺は半額を伝えた。

「一人2,700円です、結構飲み食いした割には安く済んでますね」
「え? いいよ私が出すから」
「いやいや、悪いですよ」
「先輩なんだから、別に普通でしょ?」
「でも成山さん、女性……ですし」

 そう言うと、彼女は少しはにかんだ様な笑顔で伝票を取り上げ支払いを済ませた。

「自分の分出しますって!」
「そこは、"ご馳走様でした"って言うの!」

 何度かそのやり取りを繰り返したあと、彼女が折れない事を悟った俺は渋々言う事になる。

「ご馳走様でした」
「よろしい!」
「まだ全力で酔ってますよね?」
「全然、酔ってないよー」
「酔っている人は大体そう言うんですよ。コンビニで水買ってきましょうか?」

 明らかに酔っ払ってフラフラと歩く成山さんが少し心配になり、返事を待たずに水を買いに走る。

「はい、ちゃんと一人で帰れますか?」
「うーん、帰れないかも?」
「もう、ふざけないでくださいよ。電車何線です? そこまでついて行きますから」
「そうじゃなくて、終電終わってた……」
「はい?」

 聞き返すと、彼女はにへらと笑う。だが、正直笑っている場合では無い、俺自身もそろそろ行かなくては終電が過ぎてしまう。

「どうするんですか!?」
「えっと……どうしよう」
「今の時間で終電ないなら、タクシーだと結構かかるんじゃないですか?」
「うん、その辺のビジネスホテル泊まった方が安く済むんだよねぇ」

 そう言って、彼女はスマートフォンを取り出すとビジネスホテルを探し始めた。俺は時間を見ながらとりあえずは成山さんが無事泊まれる所までは見届けておこうと思った。

「これから出張もあるから、このアプリいれとくといいかもよ?」
「それより、早く探して下さい! 俺も終電無くなっちゃいます」
「いいよ、先に行って」
「まだ数分あるので、とりあえず見届けてから行きます」

 だが、酔っているからなのか中々ホテルが見つからないらしい。

「高い所しか残ってないんだよね……自腹で1万超えるのは辛いなぁ……」
「でも仕方ないですよね?」
「あっ!」

 何かを見つけたのか、急に歩き始める。とりあえず見失わない様に着いていくと彼女は足を止めた。

「ここ二人で7,500円だよ」
「いやいや、これって……」

 成山さんの視線の先にあったのはモーテル。つまりはラブホと呼ばれるホテルだ。

「そもそもなんで俺まで泊まる事になっているんですか!」
「割り勘に出来た方が安いかなって」
「そりゃそうですけど……俺、ラブホとか入った事ないんで」

 先輩とラブホに泊まったというのが、会社にバレたら下手すれば懲戒物の案件だ。社内恋愛という話もあるが同じ部署、それも入社一ヵ月でというのは二人ともよろしくは無いだろう。

「うーん。残念!」
「残念って、成山さんはいいんですか?」
「あれ? 何かする気だったのかな?」

 確かに彼女はあくまで節約の為に提案した。それでもラブホに泊まるというのはどう考えても誘っている様にしか見えない。

「それは狡いです……」

 そう言うと一瞬作り笑いをした様にみえた。この一ヵ月、営業で何度も見たような相手を気遣って出す笑顔。その表情に俺は言ってしまった。

「今日だけですよ」
「あれ? どうして入る気になったの?」
「俺も終電間に合わなさそうだし、別々でビジネスホテルに泊まるのもコスパ悪いですからね」
「そっか。じゃあ、入ろっか!」

 彼女はそう言うと、何の躊躇いも無く中に入って行った。まるで今から取引先にでも行くような雰囲気に俺も慌てて付いて行く。

 中に入ると薄暗いフロントで人の気配は無い。煌々と光るパネルはいくつかの部屋が埋まっているのが分かった。

 案外先客がいるものなんだなと驚いていると、成山さんは迷う事なく一番安い部屋のボタンを押す。するとエレベーターが光り、まるで片道切符を手にした様に部屋へと誘導されたのが分かった。

 ドアを開けると、思っていたより普通の綺麗な部屋だった。

「なんか旅行にでも来た様な部屋ですね」
「安い方のホテルだからね。でもコスパはいいと思わない?」
「確かに……」

 強いて言うなら、大きなダブルベッドがある位だろうか。丁寧にティシュと隣に置いてある物は見なかった事にする。

「先にシャワー浴びていい?」
「あ、どうぞ。俺は全然後で構わないんでゆっくり入って下さい」

 そう言うと成山さんは、ジャケットを脱ぎ小さなポーチだけを持って洗面所の方に歩いて行った。

 ふぅ……それにしても何を考えているのか分からない。美人だとは思っていたものの、会社の先輩と後輩。時々いい香りがしていた事も意識したから思い出したくらいだ。

 俺はジャケットを脱ぎ、ネクタイを外す。ポケットに入れていた名刺入れと合わせてビジネスバックに入れて無くさない様にした。ベッドに座ると、かすかに聞こえるシャワーの音が気になりテレビを点けるか考えた。

 これって、AVとかが流れる奴だよな。いや、直ぐに変えれば普通のテレビも見れるはずだ。

 そう考え点けたテレビは、意外にも普通のバラエティ番組が流れた。少しホッとしてぼんやりとそれを眺めている。暗い部屋で光るテレビの光りは余計に成山さんの事を考えさせた。

 どんな格好で出てくる気なんだ。風呂上がりだしすっぴんなのだろうか、でも目鼻立ちのはっきりとした彼女はあんまり変化する様には思えない。

 それよりも、これから寝るという時に着替えが無い状況ではそのままの服で出てくるのかと思う。いや、春先であまり汗はかいていないとは言えそれは俺も言える事だ。

 すると、洗面所の方でドアを開ける音がした。タオルで頭を拭きながら現れた彼女はTシャツに短パン。もしかしてもって来ていたのだろうか。

「お待たせ。結構綺麗だよ?」
「着替え、持ってたんですか?」
「仕事で汗かいた時の為に用意してるの。一応営業職だからね」

 確かに、トラブルとかがあると背中にびっしょりと汗をかく事がある。俺も今後は一応入れておいた方がいいなと思った。

「西村くん。下着とかなら多分売ってるよ?」
「そうなんですか?」
「タブレットで注文できるみたいだから頼んでおこうか?」
「あ、はい。自分でやってみます」

 少し高いが、俺は無地のTシャツとボクサーパンツを注文する。するとすぐに部屋のランプが点きドアを開けると頼んだ物がすぐに届いた。

「便利ですね」
「まぁ、いきなり来る人も多いだろうからね。キミみたいに!」

 ふと、その言葉にドキッとした。これまでの様子からも、彼女はラブホに来る事に慣れているのだろうか。仕事での彼女しか知らない俺は少しだけモヤモヤとした感情が湧いた。

 風呂場に入ると、床が濡れているのが分かる。直前まで成山さんが入っていたのだ。出来るだけ意識はしない様にしても風呂場にあるそれぞれの痕跡が気にならずにはいられなかった。

 とりあえず、下着で出る?
 いや、シャツは……いいとしてスラックスは履いた方がいいよな。

 身体や頭を念入りに洗いながら、俺は色々な事を考えてしまう。それ以上に同じベッドで寝るのか、椅子はあったから最悪それで寝ようか。とりあえずシャワーを浴びると購入したセットに着替え、スラックスだけ履いてベッドルームに向かう。

「なんでスラックス履いてるの? そのまま寝るとシワになるよ?」
「いや、でも……」
「別に見ないし、恥ずかしかったら脱いで布団に入ったら?」

 彼女はベッドの上に三角座りになり、バラエティ番組を見ていた。薄暗いせいか、化粧を落としていても普段通りに見える。俺は言われたままにスラックスを脱ぐとすぐに布団の中に入った。

「もうお酒は抜けたんですか?」
「うん。シャワー浴びたら大分抜けたと思う」
「それは良かったです」

 テレビの光りでシルエットの様になっている成山さんは普段より二回りほど小さく見えた。

 意外と小柄なんだよなぁ。

「はい、喉乾いたでしょ?」
「あ、ありがとうございます」

 ふと渡してきたそれは、ここに来る途中に買ったペットボトルの水だった。特に何も買わずに来ていた事もあり一口飲むと喉が乾いていた事に気づく。

「間接キスだね」
「ちょっと、なんて事いうんですか!」
「うそうそ、気にせず飲んで。そろそろ私も布団に入ろっかな。テレビ見てる?」
「いや、見てないです」

 彼女はテレビを消すと、布団の中に入って来た。身体半分位の隙間から彼女の体温が少しづつ伝わってくる。それと同時に静かになった部屋は呼吸音がうっすらと聞こえ、ドキドキと高鳴る心臓の音が聞こえないかと心配になった。

「ねぇ、西村くんは彼女いるの?」
「居たら流石に泊まれ無いですよ」
「そっか……」
「成山さんは? 彼氏とか居そうですけど」
「最近は仕事が忙しいからそんな余裕ないかな」

 つまりは居ないという事だろうか。

「まぁ、モテそうですよね」
「何? それって褒めてるの?」
「まぁ……褒めてはいると思います」

 彼女の返事は無く、沈黙が続く。
 その瞬間、手の甲に成山さんの肌が触れる感触があった。

 これって、わざとなのか。
 たまたま触れてしまった様に感じるそれは俺の心を掻き乱す様に体温だけを伝えている。

 手を握ってみようか。いやいや、それは流石に攻めすぎているだろう。しかし、何も反撃しないというのも俺の小さなプライドが許さない。

 少し動いただけを装い、触れている成山さんの手の上に重なるように位置を変える。すると触れていたのが彼女の手だった事に気づいた。

 それから、動いたのか動いていないのか分からない位の攻防戦をミリ単位で繰り返す。手を繋いだ方が、痺れを切らした方が負け。

 すると、成山さんは気づいたのか口を開く。

「ごめん、ちょっとベッドから落ちそう」

 そう言ってこちら側に身体を向けると、密着度は更に増しすぐ隣に目を瞑る彼女の顔があった。もちろん小さな呼吸の風は俺の頬に当たっている。

 少しだけ顔を向けると暗い部屋でもはっきりと成山さんの顔が見えた。

 可愛い……。

 20cmあるか無いかの距離。その先には少しだけ開いた柔らかそうな薄めの唇がある。いやいや、キスとか流石に殺されるぞ。あくまで彼女は俺を信用して泊まっているのだ。

 だが、今密着しているのは成山さんの左手だけじゃない。こちらに身体を起こした事で膝と太もももくっついている。

 意識をすればするほどに、股間が徐々に膨らんでいく。ダメだ、こんな物が当たってしまったらドン引きでは済まされない。体勢を変えながら触れている部分は離れ無い様に身体を捻る。だが、俺の愚息は止まる事を知らない。

 どうにかしてポジションを変えねば。

 慎重に、なるべく布団の擦れる音が立たないように左手を使いゆっくりと上向きに変える。これで腰を引けばとりあえずは安心出来る。

 だが、安心した途端に彼女は腕を前に出し空いた空間に手を置いた。見ていたのかと顔に視線を送るも目をつぶっており可愛い顔に少しだけ髪がかかっている。

 邪魔だろうと掛かった髪をそっと流すと、ゆっくりと彼女の目が開いたのがわかった。

「ん、何?」
「いや、ちょっと髪が掛かっていたから」
「そう……ありがと」

 寝ていたのか、寝ぼけているのか分からない様子。だがもう少しで寝そうだというのは分かった。

 だが、それ以上に深刻な事に気づく。彼女は寝ぼけていて気づいていないかも知れないのだが、一瞬起きたおかげで更に近づき手がポジションを変えたソレに触れてしまっている。

 膨らんだり縮んだりするのは操作不能だ。気づかれてしまう前になんとかしなくてはいけない。

 考えた末、俺は強行手段に出ることにした。

 それは空間に置かれた彼女の腕を掴み、ポジションを変える。なるべく元のポジションに収まる様に慎重かつ大胆に行う必要がある。

 俺は息を止め、彼女の腕を掴むとそのまま彼女の腰元に移動させる。肘さえ正中線を抜ければ位置は安定するはずだ。

 だが、膝が腰を超えた瞬間。腕の重さで掴んでいた俺の腕が引っ張られて行き離してしまう。すぐ後に位置が悪かったのか彼女は腕を動かして腰と手の間に俺の腕を挟んだ。

 いやいやいやいや。
 どうしてこうなった。これじゃまるで俺が抱きついているみたいじゃないか。いや、みたいではなくほぼほぼ抱きついている。余計に顔は近づきあと10cmほどしか無い。彼女の呼吸どころか、なるべくゆっくりと心掛けている俺の呼吸も届いてしまう。

 すると再び彼女の目がゆっくりと開く。あわや逃れられ無い状況に冷や汗が背中から吹き出して行くのを感じた。

「ん? んん……ギュッ」

 彼女は寝ぼけながら、少しおどけた様子で可愛い声を出して俺を抱きしめた。もしかして俺が抱きついたのだと思っているのか?

 だが、抱きついた彼女はそれまでとは次元が違う位に感触がある。髪の毛、胸、腕……足も絡んで唇まではもう5cmもない。だけどこれは、受け入れてくれているのだろうか?

 少し動けば誤差の範囲でキスしてしまう。だけど俺はもう彼女とキスしてしまいたいという衝動が抑えられ無くなっていた。

 ギュッと抱きしめ返す様に彼女の頭を引き寄せる。すると耐えない限りは重力でキスしてしまう事になる。だが慎重にしなくては勢いよく当たり事故になってしまう。ゆっくり、優しく触れる様に引き寄せる事が大切だ。

 そう、ゆっくりゆっくり……。

 彼女の柔らかい唇がゆっくりと触れる。徐々に柔らかさが伝わりその力は歯のある芯に達する。しかし少し開いていた口が塞がりしっとりとした彼女の粘膜を感じた。

「んん……んっ」

 息が出来なかったのか少し苦しそうにすると成山さんは目を覚ました。しかし、彼女は何も言わずに口を開くとゆっくりと舌を絡ませた。

 こうなると理性やブレーキなんて物はない。夢中で舌を絡ませるとそのまま胸を触る。声が漏れる度に口を塞ぎ抱き寄せた。

 そのままお腹を伝いショートパンツの入り口に着く。緩いゴムのそれには遮る物は無いのと同じだ。だが、手を入れた瞬間彼女はその下に何も履いていなかった。

「えっ……」

 しっとりと瑞々しい感触。入り口以外は暖かい水に包まれている様だ。すると彼女の手が俺のボクサーパンツの中に入ってくる。そのまま扱かれ硬くなった俺は彼女のショートパンツを脱がし中に挿れた。

「はっ、はっ、はっ……」
「あっ、あっ、あっ……」

 イキそうになり、動きを止める。視線のさきには普段とは違い甘い顔をした成山さんが見える。

「ねぇ、どうしてしようと思ったの? 性欲が抑えられなくなっちゃった?」
「成山さんが、可愛くて……」
「それって好きって事でいいのかな?」
「……はい」
「それならいいよ。おいで?」

 その言葉に、俺は止まらなくなりそれから何回もした。それまでのイメージをまるで初恋の女の子にでも塗り替えていく様に何度も、何度も。


 そして、夜明けを迎え始めると俺は一つだけ気になっていた事があった。

「あの……」
「どうしたの?」
「俺、成山さんと付き合ったって事でいいんですかね?」
「今それをいう?」
「だって、ちゃんと言って無かったので」
「西村くんが付き合いたいなら付き合ってもいいよ?」
「それじゃあ……お願いします」
「はい。これからもよろしくね」

 この日、俺に彼女が出来た。それも同じ部署で教育係の会社の先輩だ。明日からの仕事が楽しみな反面、研修が終わってしまうのを少し寂しく感じた。

「あのさ……」
「成山さん、どうしたんですか?」
「二人でいる時はチカって名前で呼んでほしいな。私もサトシって呼ぶから」

 俺はその言葉に元気よく返事を返した、

「畏まりました!」
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