上 下
20 / 45
後宮で侍女になった私は精霊に好かれている

三、封じ込めと魔法陣

しおりを挟む
私は魔獣に封じ込めの技を何度も試したが、なぜかいつもより技が弱々しく見える。

それに、この人に噛まれた首元が痛い。悔しいけど、今は我慢するか。

「あの…!この魔獣には封じ込めは効かないんですか?」

「それが一番最適な倒し方だが。」

「首元が痛んで力が出ないんですけど!」

「…知らん。お前も封じ込めの技を使えるのなら、二人で技を出そう。そうすれば、強力な封じ込めが出来るはず。」

「……分かりました。」

言い返したいところだが、今はそんな余裕はない。

それに、この人も後宮の人なので宦官なのかそれとも偉い位の人なのか。それも分からない。

誰だったとしてもこの人もあまり歳は変わらないように見えるがな。


「お前、時間を止める事ができるな?それをやってくれ。そして、合図を出したらお前も封じ込めの技を出すんだ。それじゃ、行くぞ。」

私は言われるがままに時間を止めた。魔獣の動きは止まり、辺りはしーんと静まり返った。

彼は杖のような棒を取り出し、魔法陣のようなものを書き始めた。

その動きは異常に速く、本当に人間なのかと思うくらいだった。

「よし、終わった。じゃあ、魔法陣の真ん中に立つんだ。」

「分かりました。」

ただ呆然と眺めていたが、いざ魔法陣の上に立ってみると、何やら不思議と力が蘇ってくる。
そんな感じがした。

私達は背中を合わせ、二体いる敵を一体ずつ倒す形にした。

「準備はいいか?」

「はい!」

「時間を動かし、魔獣が襲ってくる前に一撃で仕留めるんだ。仕留め損なったらまた厄介なことになるぞ。」

「分かっています。」

「じゃ、時間を動かして。魔獣が動いたと思ったら技を撃つんだ。」

「はい!」

私は時間を動かした。魔獣がピクッと動いた瞬間に私達は技を放った。



目を覚ますと、私はいつも寝ている布団の上だった。
頭が痛む。首元も痛いが。

「雪蘭!」

そう言うと、急に抱きつかれた。

「もう!心配したんだから!でも、あの技かっこよかったなぁ~。」

鈴鈴だった。
どうやら看病してくれていたらしい。

「三日も寝たきりだったんだから。お水は何度か飲ませて、飲んでくれた感じだったけど、意識は全く無かったんだから!徳妃様もお見舞いに来てくださったんだよ?」

「そうなんだ。あ!あの人は…私と一緒に戦った男の人」

「?……分からない…一人で倒したんじゃないの?」

「違うわ。もう一人、男の人がいた。魔法陣を書いて………ん?あれっ……」

「どうしたの?」

「魔法陣…?書いて……どうしたっけ。」

「え?」

「記憶が曖昧に……ちょっと思い出せない…」

「大丈夫?とにかく、もう一人、いたのね?」

「うん……」

なぜか思い出せない。
もしかして記憶を消されたのだろうか。
だが、完全には消えていない…どうして……?
しおりを挟む

処理中です...