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次の日の朝。
昨日よりは良くなっている気がするけれど捻挫が少し痛む。
午前十時からは一週間後の舞踏会に向けて練習もしなければならない。王子の足を引っ張らないようにしなければ…
そして、明日はノール王国で交流会。
不自然な歩き方がバレてしまわないように包帯で固定しなければならないわ。
「はぁ……とてもではないけれど、歩くのも辛いのに…」
動くのすら面倒に思える。
コンコン……
午前七時になったので朝食の為、メイドが呼びに来た。
「はい。どうぞ。」
私はベッドに座りながら返事をした。
「失礼します。」
ドアが空いて、入ってきたのは私よりも少し小さいメイド。
私よりも小さいメイドがいたのね。可愛らしいわ。
「おはようございます。新しくお城の使用人になりました、カリーナと申します。歳はマナ王女様と同じ十八でございます。」
カリーナ……ね…
「あら、そうなのね。どうぞ中へ入ってきて。同い年同士仲良くしましょう!ところで……間違っていたら申し訳ないのだけれど、カリーナって、あの……私と以前会ったことがあるかしら…」
「!!」
メイドは少し驚いたような表情を浮かべた。
そして、話し始めた。
「……あります。…覚えていらっしゃるでしょうか、私達が七つの時、毎日のように城の門を挟んで中と外とで話をしていたこと…」
「覚えているわ!忘れるわけがないじゃない…!」
「……私、マナ王女様に会うためにここのメイドを希望し、修行と勉強を重ねてきました…」
私に会うために……あの時も言っていた……
昔、私は自分自身を表現するのが苦手で、自分で何かを決めることも出来なかった。
誰かと話をする事すら出来なかった。
だから、いつも一人、部屋で本を読んだり、字を書いて勉強をしたりしていた。
そんな日々が続き、夏が近づいた頃、ふと窓から外を見てみると、表の庭に綺麗な花が沢山咲いていた。
赤、青、黄、桃色の花が美しく咲き誇っていた。
外に出たくなった。その美しく咲いている花を実際に見てみたくなった。
いつもはそんなの思わないのに。
言われたことをやって生活してきたのに。
初めて何かに対して好奇心が湧いた。
私はすぐ部屋を飛び出し、走って、城の重いドアを開け、表の庭に出た。
あの時浴びた陽の光は凄く眩しくて目が痛かったのを覚えている。
庭の花畑に向かうと、花の良い香りが広がっていて、その花達はキラキラと光っていた。
「お花………凄く綺麗…」
自分の感情が口に出たことに少し驚いた。
花を見て回っているうちに、花の近くには蝶が沢山いる事に気がついた。
花に夢中で気が付かなかったが、蝶達もとても綺麗だった。
「綺麗な花の蜜を吸っているから綺麗なのかな。」
あの時はそんな事を思っていた。
庭に通い続けてから数日、門の外から声がした。
「こんにちは……!」
「えっ………?」
自分と同じくらいの背丈の子が話しかけてきて、なんて言えばいいか戸惑った。
取り敢えず近づいてみると、
「こんにちは。ここのお庭のお花綺麗だね。あなたは王女様なの?」
「うん……マナ……って言うの。」
勇気を振り絞って話をしようと口を動かした。
「マナ王女様かぁ。私はね、カリーナよ。」
「カリーナ…?」
「そう。お昼ご飯の前にね、いつもここの花を見に来てるの。」
「そう…なの……」
「明日…も来るから、お話できるかな?」
「えっ……と……うん。大丈夫……」
「ありがとう!じゃあ、私帰るね!バイバイ!」
「あっ…うん…!」
私は手を振り返した。少しぎこちなかった気がした。
けれど、誰かと話せたことが嬉しかった。
こんなに嬉しかったことはなかった。
そう思った。
昨日よりは良くなっている気がするけれど捻挫が少し痛む。
午前十時からは一週間後の舞踏会に向けて練習もしなければならない。王子の足を引っ張らないようにしなければ…
そして、明日はノール王国で交流会。
不自然な歩き方がバレてしまわないように包帯で固定しなければならないわ。
「はぁ……とてもではないけれど、歩くのも辛いのに…」
動くのすら面倒に思える。
コンコン……
午前七時になったので朝食の為、メイドが呼びに来た。
「はい。どうぞ。」
私はベッドに座りながら返事をした。
「失礼します。」
ドアが空いて、入ってきたのは私よりも少し小さいメイド。
私よりも小さいメイドがいたのね。可愛らしいわ。
「おはようございます。新しくお城の使用人になりました、カリーナと申します。歳はマナ王女様と同じ十八でございます。」
カリーナ……ね…
「あら、そうなのね。どうぞ中へ入ってきて。同い年同士仲良くしましょう!ところで……間違っていたら申し訳ないのだけれど、カリーナって、あの……私と以前会ったことがあるかしら…」
「!!」
メイドは少し驚いたような表情を浮かべた。
そして、話し始めた。
「……あります。…覚えていらっしゃるでしょうか、私達が七つの時、毎日のように城の門を挟んで中と外とで話をしていたこと…」
「覚えているわ!忘れるわけがないじゃない…!」
「……私、マナ王女様に会うためにここのメイドを希望し、修行と勉強を重ねてきました…」
私に会うために……あの時も言っていた……
昔、私は自分自身を表現するのが苦手で、自分で何かを決めることも出来なかった。
誰かと話をする事すら出来なかった。
だから、いつも一人、部屋で本を読んだり、字を書いて勉強をしたりしていた。
そんな日々が続き、夏が近づいた頃、ふと窓から外を見てみると、表の庭に綺麗な花が沢山咲いていた。
赤、青、黄、桃色の花が美しく咲き誇っていた。
外に出たくなった。その美しく咲いている花を実際に見てみたくなった。
いつもはそんなの思わないのに。
言われたことをやって生活してきたのに。
初めて何かに対して好奇心が湧いた。
私はすぐ部屋を飛び出し、走って、城の重いドアを開け、表の庭に出た。
あの時浴びた陽の光は凄く眩しくて目が痛かったのを覚えている。
庭の花畑に向かうと、花の良い香りが広がっていて、その花達はキラキラと光っていた。
「お花………凄く綺麗…」
自分の感情が口に出たことに少し驚いた。
花を見て回っているうちに、花の近くには蝶が沢山いる事に気がついた。
花に夢中で気が付かなかったが、蝶達もとても綺麗だった。
「綺麗な花の蜜を吸っているから綺麗なのかな。」
あの時はそんな事を思っていた。
庭に通い続けてから数日、門の外から声がした。
「こんにちは……!」
「えっ………?」
自分と同じくらいの背丈の子が話しかけてきて、なんて言えばいいか戸惑った。
取り敢えず近づいてみると、
「こんにちは。ここのお庭のお花綺麗だね。あなたは王女様なの?」
「うん……マナ……って言うの。」
勇気を振り絞って話をしようと口を動かした。
「マナ王女様かぁ。私はね、カリーナよ。」
「カリーナ…?」
「そう。お昼ご飯の前にね、いつもここの花を見に来てるの。」
「そう…なの……」
「明日…も来るから、お話できるかな?」
「えっ……と……うん。大丈夫……」
「ありがとう!じゃあ、私帰るね!バイバイ!」
「あっ…うん…!」
私は手を振り返した。少しぎこちなかった気がした。
けれど、誰かと話せたことが嬉しかった。
こんなに嬉しかったことはなかった。
そう思った。
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