『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~

紅城真琴

文字の大きさ
11 / 34
予期せぬ再会

しおりを挟む
side 真理愛

「30万なんて、無理よ」

これ以上のお金が高校生に私に用意できるわけない。
そうすると方法は、ママかおじさんにお願いするか、どこかで盗むか・・・イヤ、さすがにそれはないか。
だからと言ってパパの様子は気になるから、無視することもできない。
どうしよう・・・

「はあー」

「どうしたの?家に帰らないの?」

店を出て、それでもうちに帰る気にはなれず、1人考え込んでいるところに声をかけられて振り返った。

あっ。
そこにいたのはさっき救急外来で会った杉原先生。
白衣を脱いだせいかな、その辺にいる若者に同化していて黙っていればお医者さんには見えない。

「何か、困っているの?」
心配そうに私を見た後、視線がチラッと携帯に移った。

マズイ。
ちょうど今、出会い系サイトを検索していたところだった。
さすがに援助交際でお金を稼ごうなんて考えているわけではないけれど、高校生の私がこっそりとお金を用意する方法は他にはない。
とりあえず覗いてみよう。そんな軽い気持ちで見ていた。

「大丈夫です」
「大丈夫には見えないけれど?」

ムッ。
私にだって事情があるのよ。
そう叫びたくて唇を噛む。

「何か手助けできることがあれば」

ほとんど初対面人間に『手助けできることがあれば』なんて言ってしまえることに驚いたけれど、せめてもの救いは彼が本物のお医者様で名前もわかっていること。訳の分からない出会い系サイトで知り合ったおじさんとは比べ物にならないくらい安全だと思える。

「お金が、必要なんです」

「え?」
一瞬、表情が固まった後、
「いくら?」
真っすぐに目を見て聞かれた。

「さ、30万」
さすがに声が震える。

「ずいぶん高額だね」
「ええ」
だからこそ困っている。

30万円なんて普通の高校生に用意できる金額ではないし、何かしなければ手に入るお金でもない。
じゃなければ、

「貸そうか?」
「はあ?」

からわれているのか、本気で私を買おうとしているのか、本心はわからない。
でも、本当にお金をくれるのなら、杉原先生なら、いいかもしれないと思う自分がいる。

「援交よりましだろ?」

うぅー。痛いところをついてくる。
だから医者って人種は嫌いなのよ。

「どうする?」
挑発的な口調。

「・・・いいですよ」
今の私にはほかに選択肢がない。


いくらママやおじさんがやかましくないからと言って、普段から遊び歩いているわけではない。
もちろん知らない人について行ったことも初めて。
それでも今は非常時で、贅沢言っていられる立場じゃない。

「うちに来る?消毒とシップくらいならできるよ」

私にとっては先生のお家でもその辺のホテルでも条件は変わらない。
30万円なんて大金を用立ててもらうからには文句は言わない。

「じゃあ、行こう」
私が肩にかけていたカバンをとり、腕を引き上げて立ち上がらせてくれる。

「あの、1人で」
歩けますからって言いたいのに、
「いいからおいで」
しっかりと腕をとられたまま歩き出した。

これは私が子供扱いさえているのか、それとも逃げ出さないように牽制されているのかはわからない。けれど、誰かに腕を引かれて歩いたことなんてなくてすごくはずかしいい。

「どうした?やめる?」
「いいえ、行きます」

もう、どうにでもなれ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...